第1回加古川リウマチカンファレンスに参加して

11月24日第1回加古川リウマチカンファレンスに参加しました

関節リウマチの診断と治療〜抗CCP抗体の意義とMTXの効果を中心に〜

Larsen GradeIII以上の関節破壊が進行した荷重関節では治療が奏功していても関節破壊が進行するため、早期発見早期治療が大切である。

抗CCP抗体は、アルギニンがシトルリンに変換した自己蛋白に対する自己抗体であり健常なほ乳類にはシトルリン化蛋白はほとんど存在せずRAに特異的である。早期RAで出現し発症を予測できる。抗CCP抗体陽性例は関節破壊が進行しやすい。

抗CCP抗体の陽性群を低値と高値に分けて関節破壊の進行度をΔTSSで比較したところ、高値群と低値群で関節破壊の進行に差はなくtiterには相関しない。ACPA、RFの陽性陰性にて骨びらんの進行を比較すると、ACPA陽性ではRFの陽性陰性に関係なくACPA陰性よりも骨びらんが進み、ACPA陰性例では、RF陽性の方が陰性よりも骨びらんが進行した。

献血ドナーでRAを発症した患者の保存血で発症前の抗CCP抗体の有無を調べると、発症5年以上前に25%、1.5年前に52%が陽性であり、抗CCP抗体は発症前から陽性となり、titerも高くなり発症予測ができる。

ACPAをマウスの脛骨に作用させると破骨細胞が誘導され骨吸収が亢進して骨粗鬆症をきたす。ACPA抗体が高値であると、骨密度が低下する。

RAでは抗CCP抗体の他に抗カルバミル化抗体がみられ、RAの45%に陽性である。抗カルバミル化蛋白抗体は発症前から陽性となりRA発症を予測できるが、陽性例では関節破壊が進みにくい傾向がある。

MMP-3は滑膜細胞に豊富に発現し、関節炎での滑膜増殖と破壊された軟骨成分を測定し、関節破壊の予知マーカーとなる。MMP-3を正常化することを目標に治療を強化すると、構造的寛解を達成しやすい。血清MMP-3が103.7以下であると関節破壊が進行しにくい。MTX開始前に、MMP-3が103.7以上の例は、3〜6ヶ月後に前値より低下しなければ、CRRP以上の関節破壊をきたす可能性が高い。

RAの治療はMTXがアンカードラッグであり、第一選択薬として開始し、約40〜50%が構造的寛解を達成する。関節リウマチの患者の腸内細菌をみた報告では、RAにのみPrevotella属の細菌がみられ、健常者では全くみられず、Provotella copriが大半を占めていた。

平成28年度新型インフルエンザの診療と対策に関する研修に参加して

平成28年11月6日東京で開催されました上記研修会に参加しました

  1. 新型インフルエンザワクチンの現状と課題について

2009年パンデミックウイルスは、  1977年からのソ連型のH1N1と共通抗原。日本では、入院率、死亡率ともに世界的に低かった。高齢者65才以上では、患者が少なく残存免疫の可能性が考えられた。 国産ワクチン1回接種と2回接種であまり抗体価の上昇に変化なしパンデミックワクチンは13才以上では1回接種で抗体価上昇あり。過去の季節性A/H1N1ウイルスの感染により免疫記憶あり。

インフルエンザワクチンの効果発現

不活化ワクチンでは粘膜免疫はできない。プライミングされているとワクチンは1回でよい

新型インフルエンザ等対策ガイドライン

パンデミックワクチン備蓄。平成18年度から、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス株のプレパンデミックワクチンを、毎年約1000万人分製造し、平成24年度から54万人分を備蓄。現在、チンハイ株(約1000万人分)、ベトナム株・インドネシア株(約1000万人分)、アンフィ株(約1000万人分)。 全国民分のワクチン製造に鶏卵培養法では1年半から2年かかるため、細胞培養法により約半年で製造できるように生産体制の整備を実施

  1. 診断と治療:重症(肺炎合併)例を中心とした新型インフルエンザ診療

合併症のハイリスク群

65才以上、慢性呼吸器疾患、心血管疾患、慢性肝・腎・血液・代謝疾患、神経筋疾患、免疫抑制状態、長期療養施設入所者、著しい肥満、アスピリン長期服用、担癌患者、妊婦

タミフルは48時間以内の下気道合併症を44%減少。タミルフルは入院リスクを63%減少

インフルエンザ治療の原則

発症後48時間以内に開始すると治療効果が最大となる。ハイリスク群では可能な限り抗ウイルス治療を開始することが推奨。肺炎を合併した新型インフルエンザには、原発性インフルエンザウイルス肺炎(急速に進行し呼吸不全となることが多い)、ウイルス細菌混合性肺炎( 肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌感染が多い)。 治療は『成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン』に基づいて実施。ノイラミニダーゼ阻害薬の使用アルゴリズムにもとづき薬剤選択

  1. 新型インフルエンザ対策について

鳥インフルエンザ(H5N1)はエジプト、インドネシアで発生が多い、鳥インフルエンザ(H7N9)は持続的にヒト−ヒト感染は認められない。 新型インフルエンザ等対策特別措置法を策定し対策している。対策の基本的な考え方は、水際対策、早期封じ込め、感染拡大の抑制、流行規模の平坦化、ワクチンの早期開発生産、医療への負担を下げる。抗インフルエンザ薬の備蓄は国民の45%相当量を目標としている。備蓄目標:5650万人分  流通備蓄:1000万人分。人口25%が罹患し全員が受診 3200万人分、重篤の場合倍量・倍期間投与 +750万人分、予防投与 300万人分、季節性インフルエンザ同時流行 1270万人分

現在の被害想定

全人口の最大25%が流行期間にピークをつくり順次罹患。医療機関受診者 約1300万〜2500万人。入院患者 約53万人〜200万人。死亡者  約17万人〜64万人。備蓄 タミフル 約3000万人分、リレンザとイナビル 約530万人分、ラピアクタ  95万人分

  1. 抗インフルエンザウイルス薬の薬剤耐性化とその対策について

ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスは増殖スピードが遅くなり、感染伝播効率が悪くなり、ヒト−ヒト感染して流行が拡大する可能性は少ない。2008年ノルウェーからタミフル耐性ウイルスが世界中に流行。 ノイラミニダーゼ遺伝子275番がヒスチジンからチロシンに変異。増殖スピードが遅くなることを代償する遺伝子変異を獲得した。ウイルスの消失には薬剤と同時に体内の免疫応答が重要。免疫不全患者では、5ヶ月間ウイルスを持続排泄した症例あり。8才では治癒にあたる5-7日でも40〜60%がウイルスを排出している。ウイルス排泄が長引くと、体内でのウイルス増殖が持続し変異ウイルスが一定頻度で出現し、薬剤耐性変異を持ったウイルスが増殖しやすくなる。4才の幼児の治療前は、薬剤感受性100%、耐性0%であるが、治療後5日では8%耐性出現し、7日目では75%耐性が出現する。タミフルよりもリレンザの方が耐性ができにくい、局所での薬剤濃度の違いによる 吸入薬の方が局所濃度高い。耐性ウイルスであっても、推定される血中濃度から効果が期待できる。タミフルとラピアクタ、リレンザとイナビルはノイラミニダーゼの結合部位が近いため交差耐性ができやすい

第6回播磨肺高血圧症セミナーに参加して

10月27日に加古川で行われました、播磨肺高血圧症セミナーに参加しました。

肺高血圧症の1/4は膠原病関連の肺高血圧症である。IPAHは100万人に12人と非常にまれであり、すべての方をスクリーニングすることは無理であるが、CTD-PAHは100人に12人と高頻度であり、全例をスクリーニングすることが可能である。膠原病の早期診断が大切であり、全身性硬化症では皮膚硬化が起こってからではなく、手指腫脹の状態で診断がしないといけない。レイノー現象をきたす人がすべて強皮症や混合性結合組織病ではなく、ごく一部の人が膠原病である。レイノー現象があり、抗核抗体陽性もしくは爪郭上皮毛細血管異常があれば強皮症の可能性が非常に高い。強皮症では、1/3の症例で肺、心臓、消化管のどれかに変化があるため,診断されれば全例スクリーニングし、症状が出る前に治療を開始することが大切である。全身性硬化症の診断は、2013年の分類基準にもとづき診断すると早期診断が可能

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全身性硬化症は、線維化、循環障害、免疫異常の3つの項目について評価し診断する。爪郭毛細血管異常があると膠原病である可能性が非常に高く、肺高血圧症と関連がある。セントロメア抗体陽性、U1RNP抗体陽性でじゃ肺高血圧症をきたしやすく、後者では免疫抑制剤が効果があり、前者では発症後10〜20年で肺高血圧症が発症し、免疫抑制剤の効果は期待できない。肺高血圧症の診断は、PA圧25以上となっているが、全く根拠がない。肺動脈圧は25未満の19〜24でも死亡率は圧の上昇とともに上昇しており、19〜24でも正常として放置していいとはいえない。将来は19以上が診断基準となる可能性もある。強皮症患者さんは28°で血管血流が低下する。喘息と同じように血管は通常状態でも血管壁が肥厚して内腔が狭くなっているため、少しの温度変化で大きな影響を受ける。血流低下が起こると繊維化も進行するため予防が大切であり、レイノー減少がみられたら全身を温めることが大切である。禁煙、保温に留意し、レイノーが起きればできるだけ短時間で改善するように対応しないといけない。生活習慣の改善が大切である。肺高血圧症を疑い、右心カテを行うかどうかの判断として、心エコーでは80%ルールがあり、80%の偽陽性、感度80%であり、心エコーで肺動脈圧上昇と判断されても正常のことがあり、心エコーで正常と判断されても肺高血圧症のことがあり、できれば全例右心カテをすることが望ましい。DETECT studyにて各種データを入力すると肺高血圧症があるかないか判断できる。肺高血圧症の治療において、膠原病では間質性肺炎、CTEPH、左心不全が合併してることがあり、しっかりと除外診断をしてから治療開始しないと肺水腫をきたし悪化することがある。治療薬としては、NO系、PGI2系、エンドセリン系の3種があり、内服薬は膠原病の他の症状にどのように効果があるかを考えて選択する必要がある。エンドセリンにより線維化が促進されることから、トラクリアでは線維化が押さえられる。