第16回関西膠原病フォーラムに参加して

平成29年3月25日 京都で開催されました第16回関西膠原病フォーラムに参加しました。

免疫状態における肝炎ウイルス対策

免疫抑制状態により、ウイルスは増殖、肝炎は抑制されるためこのバランスで病態が決まる。様々な免疫抑制剤に注意書きがあるが、リツキシマブ、ステロイド、フラタラビンの3つが明らかにHBV再活性化を起こしやすい。

ポイント① スクリーニングでHBc抗体を測定する。HCV抗体陽性であれば、HCV-RNAを測定し陰性であれば既感染。HBVでは、HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体どれかが陽性であれば、キャリアか既感染であり、HBV-DNA(リルタイムPCR)を測定する。

ポイント② C型肝炎は単純であり根治可能。肝線維化が一定速度で慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌と進み、線維化の程度が血小板数で推測できるため癌の発生率も推測できる。HCV感染者の約30%はウイルスが完全に排除され治癒にいたる。HCV抗体陽性、HCV-RNA陰性であれば治癒と判断し放置可。基本的にRNAウイルスは根治できるが、DNAウイルス(HBV、CMV、EBV、HSV、HPV)は根治できず、生涯潜伏感染になる。C型肝炎は、DAAの登場により,根治可能となった。SVR24が達成できれば根治したと判断。

ポイント③ C型肝炎は免疫抑制状態となってもほとんど何も起こらない。HCV陽性例にRA治療などの免疫抑制治療をしても悪化はほとんどなく、MTX長期使用しても肝硬変への進展はむしろ少なくなる。腎移植でも予後に変化なし。HCV陽性でも、免疫抑制剤の減量は不要である。

ポイント④ HCV陽性例は、DAA治療により2剤耐性ウイルスがでており、併用禁忌薬(アミオダロン、Ca拮抗薬など)も多いため専門医を紹介することを勧める

ポイント⑤ B型肝炎は複雑で根治できない。一過性感染は約90%で治癒する。1〜2%死亡。5才未満に感染すると持続感染となり、ほとんどが非活動性キャリアとなる。一部は慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌となるが、どの段階からでも急速に肝硬変になったり、肝細胞癌が発生する。最近はジェノタイプAにより、成人感染でも10%程度慢性化する。HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体の有無により未感染、既感染、持続感染の3つに分けられる。HBVはウイルス量と病勢が相関し、HBV-DNA 4.0未満であれば肝炎が発症することはなく、肝酵素が上昇していてもHBV-DNA<4.0であれば、HBV以外の原因を考える。

ポイント⑥ HBVキャリアの免疫抑制状態ではエンテカビルの予防投与を実施する。20〜50%が活性化し、再活性化の死亡率が急性肝炎の死亡率よりも高いため、予防投与が必要である。免疫抑制治療を開始し、徐々にHBVが増加し、治療中止による免疫回復時に肝炎が発症する。ウイスルが増加し、肝炎が発症するのに最短でも12週の余裕があるため、HBV-DNAを1〜3ヶ月毎にフォローし、2.1となればエンテカビルの予防投与を開始すれば間に合う。慌てて免疫抑制剤を中止しないように、中止すると急速に肝炎が発症する。

ポイント⑦ HBV既感染は肝内ウイスル潜伏状態である。肝移植時に初めて確認された。HBc抗体陽性のドナーから肝移植を行うと、レシピエントは100%B型肝炎発症した。それまでは、術前のHBs抗原陰性を確認しており、術者や輸血からの感染も疑われたが、HBc抗体陽性者の肝細胞内にはウイスルが残っており、複製もしている。自己の免疫により、ウイスルを押さえ込んでいるが、レシピエントはHBVに対する免疫をもっていないため100%発症する。

ポイント⑧ HBV既感染では、HBV-DNAを定期的にフォローする。ウイルスの再活性化は2〜5%程度、免疫抑制治療開始すると、まずHBV-DNAが陽性となり、その後HBs抗原陽性となる。肝炎発症までには最短でも12週間の余裕があり、フォローの期間としては1〜3ヶ月となっている。免疫治療開始後ほとんどが6ヶ月以内に再活性化がおこっているため、治療開始6ヶ月以内は1ヶ月毎に、6ヶ月以降は3ヶ月毎にフォローするのがよい。HBV-DNA2.1未満であれば1ヶ月後に再検、2.1となればエンテカビル予防投与開始、4.0以上となればすぐに専門医紹介。エンテカビルの予防投与は、一度でもHBV-DNAが陽性となっていれば保健適応となる。

ステロイドは、0.5mg/kgを2週間以上継続する場合は免疫抑制治療と考えスクリーニングが必要

 

皮膚筋炎〜自己抗体からの新しい診かた〜

抗ARS抗体、抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1抗体の4つの抗体により診断に活用する。ADM、CADMは例外ではなく、DMの約30%は初診時にはCADMであり、そのうち1/3がclassic DMに移行する。皮膚筋炎は、筋炎の軸と間質性肺炎の軸により考えるとよい。PMは抗SRP抗体、抗HMGCK抗体、DMは抗Mi2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1抗体、抗ARS抗体、抗NXP2抗体、抗SAE抗体、ILDの合併に抗ARS抗体、Overlapは抗U1RNP抗体、抗Ku抗体、抗Pm-Scl抗体。皮疹はヘリオトロープ疹とゴットロン丘疹が有名。ヘリオトロープ疹は、鼻根部、鼻翼のまわりにもでる。ゴットロン丘疹は、爪周紅斑、爪上皮出血点、手指の側面や屈側にも出現、角化性変化主体、炎症性変化主体、血管障害主体の変化あり。逆ゴットロンは手指屈側に鉄棒まめ様とよばれる皮疹で、抗MDA5抗体陽性と関連。メカニックハンドは手指側面がかさかさになり抗ARS抗体と関連。派手なゴットロン丘疹は抗TIF1抗体と関連。皮膚筋炎の抗体は疾患特異性の高い抗体である。約75%で自己抗体が陽性となり、抗体による診断が有用である。抗ARS抗体19%、抗Mi2抗体8%、抗MDA5抗体18%、抗TIF1抗体31%、核抗体は、特徴的な臨床像と強く相関している。

抗ARS抗体は、Jo-1、PL-7、PL-12、EJ、KSを併せて測定している。抗ARS抗体症候群と呼ばれ、間質性肺炎はほぼ必発、慢性が多く再燃しやすい。ただし2〜3%は急速進行する。筋炎は再燃を繰り返す(Jo1、EJ、PL-7)。皮疹は非定型的で、レイノー現象、手指腫脹、メカニックハンドなど。特発性間質性肺炎と診断された6.6%に抗ARS抗体陽性例が見つかっており、皮疹がなくても関節性肺炎で抗ARS抗体症候群を疑う必要あり

抗Mi2抗体は、定型的DM、CK高値となることが多い。抗核抗体高力価で4桁となることが多い。皮疹は軽い。間質性肺炎も少ない。

抗MDA5抗体は、急速進行性間質性肺炎と強い相関がある。CADMが77%と多く、23%がclassic DM。逆ゴットロン疹、血管損傷性の皮疹、滲出性紅斑などの皮疹で、関節炎がしばしばある。間質性肺炎は93%に合併し、以前は48%が6ヶ月以内に死亡していた。抗MDA5抗体、フェリチンが病勢と相関する。

抗TIF1抗体は、悪性腫瘍合併と小児筋炎。成人では、悪性腫瘍合併が約70%、間質性肺炎はなく、広範囲の浮腫性の皮疹、ゴットロン丘疹、水疱性皮疹など皮疹が派手。嚥下障害と関連がある。40才以上では70%に悪性腫瘍の合併があり、CKは正常から1000程度と低いことが多い。CK高値となると悪性腫瘍の合併が多い。1年間は悪性腫瘍のフォローアップが必要。抗Mi2抗体陽性の場合、TIF1との相同性の関係で、抗TIF1抗体も陽性となることがあるため、抗TIF1抗体陽性であれば、抗Mi2抗体が陰性であることを確認する必要あり。

抗体陰性例には、抗ARS抗体のうちOJに対する抗体は測定できていない。抗NXP2抗体は、2〜30%にみられ、特に小児のDMの20〜30%にみられる。切開沈着と関連し、成人で悪性腫瘍と関連がある。筋炎症状が強い。小児では、抗TIF1抗体、抗NXP2抗体が多い。抗SAE抗体は、2〜6%でみられ、嚥下障害と関連あり。抗TIF1β抗体単独陽性は、抗核抗体高力価陽性、等の例が含まれる。

 

第9回経鼻内視鏡研究会in兵庫に参加して

3月4日 神戸で開催されました経鼻内視鏡研究会in兵庫に参加しました

経鼻内視鏡による新しい胃観察法−早期胃癌発見を目指して−

胃内視鏡検査では、偽陰性を減らすこと大切であり、特に接線方向になる後壁、小弯が盲点になりやすい。経鼻内視鏡は先端硬性部が短いため小回りがききやすく、右ターン左アングル、左ターン右アングルをかけることにより、小弯や後壁を正面視することができるため、経口内視鏡よりも病変の見落としが少ない。空気量の調整をして、体下部後壁は見下ろしで空気を抜きながら観察すると正面視しやすくなる。LCI(Linled Color Imaging)は赤を色調により強調をかけ、濃い赤はより濃く、薄い赤はより薄くすることで炎症性の病変を観察しやすくなる。高分化腺癌は赤いことが多く、未分化癌は白色調であり、LCIを用いることで、高分化腺癌、未分化癌の広い上げがしやすくなる。

経口内視鏡観察困難例を数例提示されていました。経鼻内視鏡にて発見できたO-IIcの微小早期癌をESD治療目的にて紹介をすると、紹介先では発見できないためESDができないと言われた症例を呈示された。生検後に紹介されており、生検による正常粘膜の被覆により分からなくなる症例、最初陥凹型でも治療時には平坦型になっているため発見しにくい症例経口でも接近すると分かる症例はいままでにもいわれているため、必ずしも経鼻では分かるが経口では発見できないとまでは言い切れないと思われる。

東神戸リウマチ性疾患連携の会に参加して

3月4日 神戸で開催されました東神戸リウマチ性疾患連携の会に参加しました。

脊椎関節炎には、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ブドウ膜炎関連関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、分類不能の関節炎等が含まれ、HLA-B27と関連があり、診断後にもオー場ラップしたり、移動したりすることがあり脊椎関節炎としてまとめられている。

①体軸性関節炎 炎症性腰痛症 安静時に悪化し運動にて軽快する。全腰痛の約15%を占め脊椎関節炎に特徴的であるが、15%は別の疾患である。

②末梢性関節炎 下肢に優位な関節炎

③付着部炎(enthesis)アキレス腱や足底腱膜の付着部に後発

④指炎(dactylits)ソーセージ様の手指、足趾の腫脹、付着部炎によるもの

強直性脊椎炎は古くからあるNew York criteria用いられていたが、早期診断には感度が低い。レントゲンでの仙腸関節炎が含まれているが、レントゲンに変化があわれるのは10年近くかかるため、診断が遅れてしまう。1990年にAmor criteriaが作成され、ASに限らず脊椎関節炎として分類し、反応性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、HLA-B27も加えられている。点数化しているため簡便性に欠けており、炎症性腰痛症と末梢性滑膜炎をもとに、他の脊椎関節炎の有無を確認するESSG criteriaが作成された。その後、MRIが診断に有用であることが示され、2009年にASASにより体軸性関節炎、2011年に末梢性脊椎関節炎の分類基準が作成された。診分類基準では、感度83%、特異度84%とバランスがとれており早期診断ができるようになった。

治療では、ASにはNSAIDが有効であり、まず最初に処方されるべき薬剤である。CRPが高いと効果が高く、骨病変の進行を予防する効果があり、継続的に服用することにより骨化を遅らせることができる。末梢性病変にはアザルフィジンが有効。TNF阻害薬は40%程度有効であり、若く、早期なほど有効性が高い。TNF阻害薬の効果に関連性があるのは、CRP、HLA-B27である。non radiographic axial SpAでは60%以上有効である。ただし、安易な使用は避けるべきであり、骨化の進行しやすい症例に使用すべきである。活動性指標であるASDASが高いと骨病変が進行する。炎症反応、喫煙があると進行しやすい。