抗不安薬・睡眠薬の処方について

4月からの診療報酬改定についての発表によりますと、12ヶ月以上ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬を長期にわたって継続して処方している場合に処方料が減額されることが決まりました

睡眠薬の処方頻度が高まる中、 一部の患者でみられる長期服時依存(耐性、離脱、高容量 、多剤併用 )や乱用 (加療服用など)が社会問題化しています。睡眠薬や抗不安薬が、薬物依存等の原因薬物となっており、ベンゾジアゼピン受容体作動薬が原因薬物の上位を占めていることから、厚生労働省は平成 24 年度及び 26 年度の診療報酬改定において、3 剤以上 投与時の診療報酬の減算等を導入し、睡眠薬や抗不安薬の処方の適正化を 図っているほか、向精神薬には診療報酬上の投薬期間の上限が定められて いるが、それらに加え、平成 28 年 9 月にはエチゾラム及びゾピクロンを向 精神薬(第三種向精神薬)に指定するとともに、投薬期間の上限を 30 日としています。

国の方針として、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は、薬物依存の問題、事件や事故などのトラブルの原因となったり、多数の医療機関で処方してもらい転売したりする問題が起きていることなどを受けてと思われますが、長期に使用するものではなく、短期で減量、中止していくべきものであり、新しいメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などの鎮静作用によらない睡眠薬を使用することが勧められることになると思われます。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬、睡眠薬としては、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、エバミール/ロラメット(ロルメタゼパム)、リスミー(リルマザホン)、デパス(エチゾラム)、サイレース/ロヒプノール(フルニトラゼパム)、ユーロジン(エスタゾラム)、ベンザリン/ネルボン(ニトラゼパム)、ドラール(クアゼパム)、グランダキシン(トフィソパム)、リーゼ(クロチアゼパム)、デパス(エチゾラム)、ソラナックス/コンスタン(アルプラゾラム)、レキソタン(ブロマゼパム)、セルシン/ホリゾン(ジアゼパム)、リボトリール/ランドセン(クロナゼパム)、セパゾン(クロキサゾラム)、メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)、レスタス(フルトプラゼパム)、ゾルピデム(マイスリー)、ゾピクロン(アモバン)などが挙げられます。このうち、マイスリーとアモバンは非ベゾジアゼピン系ではありますが、ベンゾジアゼピン受容体を介して作用するためにベンゾジアゼピン系に含まれます。

日本睡眠学会から睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインが作成されています。

常用量の睡眠薬を服用しても効果が 十分にない場合に、睡眠薬の多剤併 がより有効であるというエビデンスは無く、副作用リスクを低減するためにも、多剤併用はできるだけ避けるべきである。 特に、三種類以上のベンゾジアゼピン系ないし 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の併用は避けなくては いけない。

睡眠 薬を徐々に減量することで不快な症状を避けることが可能です。1 種類の睡眠薬を 4 分の 1 錠ずつ減らし、1 〜2 週間経過をみて問題がなければさらに 4 分の 1 錠減 するなど時間をかけて減量します。特に、2 錠以上服用している、2 種類以上服用している、 長期間服用している方は、 緩やかな減量が必要です。減量する睡眠薬の順番も決まっています。不眠症が治っていれば睡眠薬は減量、中止できます。睡眠薬を減量した直後は睡眠の質が悪く感 じることもありますが、多くは数日で回復します。

上記のベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬を長期間(12ヶ月以上)継続処方されている患者さんについてはメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などの鎮静作用によらない睡眠薬を積極的に使用し、徐々に減量中止していくことが求められますのでよろしくお願いいたします。