10月13日神戸で開催された上記講演会に参加しました。
2018年3月に改訂された潰瘍性大腸炎治療指針もとづき、潰瘍性大腸炎の治療は、全例に5-ASA製剤を使用→ステロイドを使用→G-CAP、チオプリン製剤使用→TNFα製剤→手術
治療効果はMayoスコアにて判定する
TNFα製剤を使用するときには、単独では使用せずAZPの併用を原則とする。抗製剤抗体の産生を予防し、二次無効を防ぎ長期的な治療継続をするために併用が原則。3剤はどのように使い分けるか?
インフリキシマブ(レミケード)は投与2週目で効果が認められ、投与6週目で30%に効果あり、30%は全く効果なしとなり、投与2週でリスポンダーかノンリスポンダーかを判断できる。CyAやTAC使用歴があると効きにくい。寛解維持には、免疫調整薬の併用が必要であり、非併用では継続率が低下する。クローン病ではTNFα製剤を中止すると半数で再燃するが、潰瘍性大腸炎では寛解になると中止しても再燃しにくい。TNFα製剤を中止するとステロイド追加により改善する程度の軽度の再燃はあるが、2年以上継続していると中止しても再燃しにくい。内視鏡的Mayoスコアが0点であると中止しても86%は寛解維持できる。同じ寛解にあたる1点では再燃しやすい。6週での寛解率は59%、寛解症例での3年寛解維持率は59%、チオプリンを併用すると長期寛解が維持できる。
アダリムマブ(ヒュミラ)は4週での寛解は50%程度、CyAやTACの使用、PSL使用、インフリキシマブ一次無効は効かない。PSL非併用では寛解は70%、併用では36%。CyAとTACの使用歴があると、寛解率は14%、使用歴がないと67%。インフリキマブ一次無効では、寛解率0%であり、一次無効例の変更は無意味。クローン病では、TNFα製剤の変更で効果がある場合がみられるが、UCでは一次無効であればTNFα製剤間での変更は無意味。4年では寛解は約4人に1人。アダリムマブは活動性が高いと効果が不十分であり、増量が必要と考えられる。
ゴリムマブ(シンポニー)は寛解率は23%とやや低い。TNFα製剤の使用歴でも寛解率大きな差はなく、CyAとTACの使用歴による寛解率に差はみられない。抗ゴリムマブ抗体の発現率は2.9%と低く、抗原性制御のためチオプリンの併用が必要かどうかについては検討が必要。長期的に使用するのであればやはり必要と考えられるが、潰瘍性大腸炎ではクローン病ほど長期的な使用にならない可能性があり、併用の必要性についてはまだ確定していない。
トファチニブ(ゼルヤンツ)は寛解導入は56%、粘膜治癒率は30%と高く、TNFα製剤が無効な例でも有効性が高い。副作用として、悪性腫瘍、帯状疱疹が問題である。
ベドリズマブ(エンタイビオ)はMAd-CAM-1に対する抗体であり、腸管に浸潤するリンパ球の遊走をブロック、寛解率は早期では16.9%と低いが、1年では41.8%と徐々にあがってくる。高い長期の安全性があり、チオプリンの併用が困難、抗TNFα製剤の使用が困難などの症例には第一選択薬としての位置づけも考えられる。