兵庫肝疾患連携フォーラムに参加して

肝癌は以前はC型肝炎から発生するのがほとんどであったが、最近では40%近くが非B非Cによるものになっている。糖尿病患者さんの3人に一人は癌で亡くなり、肝癌がもっと多く、次いで膵臓癌、大腸癌である。

C型肝炎では空腹時のインスリン値が高く、これは他の肝疾患よりも高く、HCVウイルスがインスリンのシグナル伝達を阻害するためである。インスリン抵抗性が高いと肝癌の発生が高くなる。肝硬変患者では、膵臓のランゲルハンス島が増大し、インスリンの合成分泌も多くなっている。インスリンには血糖を下げる作用と細胞増殖作用があり、増殖ホルモンとしての作用を持っている。膵臓から分泌されたインスリンは門脈から肝臓をまず通るため、肝臓は高濃度のインスリンにさらされているため、インスリン分泌が多いと肝臓癌になりやすい。

肝癌患者では、インスリン抵抗性が強いと予後が悪く、肝癌の分化度が低くなる。NASHから発生する肝癌では、最初から中分化や低分化の癌が発生する。C型肝炎では、インスリン抵抗性が高いと、ウイルスを駆除した後の肝癌の発生が高くなる。

糖尿病があると脂肪肝からの肝癌発生頻度が高くなる。NAFLDの0.25%に肝癌が発生するが、糖尿病合併のない患者さんからは肝癌の発生がなく、糖尿病を合併していると注意が必要。

アルコール性脂肪肝以外の脂肪肝をNAFLDと分類され、最近では薬剤誘発性NAFLDが問題となっている。脂肪肝をきたす薬剤としては、アミオダロン、タモキシフェン、MTX、リュープレリン、カルマバゼピン、バルプロ酸など。

PNPLA3は唯一NAFLDに関与する遺伝子であり、リパーゼ活性を促進させて、脂肪を分解する蛋白をコードする遺伝子である。肥満もない方で高度の脂肪肝がある場合にみられるが、現在では測定できないため診断できない。

NAFLDの自然経過は、4-8%/yがNASHに移行し、その0.8-1.6%/yがNASH肝硬変に進展し、その0.1-0.2%/yに肝癌が発生する。HCVより癌の発生頻度は少ないが、ベースのNAFLDの患者数が非常に多いため、肝癌の発生数も多くなる。

NASHになっているかどうかは、最近では生検をしない非侵襲的な評価で判定する。

Fib-4 Index  (年齢xAST)/(血小板x(ALT)1/2)

Fib4が2を超えるとNASHの可能性あり。

血液検査で肝線維化の程度を表すM2BPGiが1を超えると線維化があると判断

Fibroscanで肝臓の高度を測定する

この3つの方法で1つでも陽性であれば、肝癌の発生頻度が高くなるため通常のC型肝炎に準じたフォローアップが必要である。

脂肪肝での肝臓の硬さが硬くなると予後不良となる、HbA1c<6.3であれば肝線維化はほとんどない。

有酸素運動とレジスタンス運度ではどちらも脂肪肝に効果がある。有酸素運動はぽっちゃりした男性で効果がある。できれば1回40分、週3回実施すると効果がある。体重減少がなくても運動をすると脂肪肝は改善する。筋肉量が増えなくても、インスリン抵抗性は改善する。運動すると筋肉でマイオカインと呼ばれるサイトカインが産生され、湖の変化がインスリン抵抗性に関与している。レジスタンス運動の方が、マイオカインが多く産生されるため、まずレジスタンス運動をしてから、有酸素運動をすると効果的である。

分枝鎖アミノ酸BCAAは、ロイシンが筋肉細胞を増殖させる作用があり、運動後の筋肉痛が起こりにくい。BCAAは発がん抑制効果がある。BCAAは筋肉内で作用し、肥満やインスリン抵抗性に関与する肝癌の発生を抑制する。カルニチンや亜鉛は肝臓内でアンモニア産生を抑制する。

インスリン分泌作用のあるSU剤は肝癌の発生を誘発する。メトホルミンは肝癌を抑制し、ピオグリタゾンは、BMI24以上の人で肝癌の発生を抑制する。

肝細胞癌ではDPP4の発現が亢進しており、糖尿病治療薬のDPP4阻害薬が機序は不明であるが、肝癌の発生を抑制する。

膵臓癌では、SGLT-2が高発現しており、がん細胞の糖の取込に関与しており、SGLT2阻害薬にて膵臓癌での糖の取込を抑制して癌を死滅させる。

 

C型肝炎の治療薬として、新しくでているソホスブビルは、現在インターフェロンフリー治療薬としていくつかある中で、他の蛋白阻害薬とは違い、唯一チェーンターミネーター薬である。蛋白阻害剤では、蛋白の鋳型にしっかりとはまる薬剤がつくりにくく、ジェノタイプI型とII型で蛋白も異なるため両方に効果があることはなく、遺伝子変異があると蛋白の立体構造が変化するため効果がなくなる。ソホスブビルはウイルスの塩基配列内に取り込まれ、ウイルスRNA伸長反応を停止させ鎖を断ち切ってしまう作用があり、ジェノタイプに関係なく効果があり、ジェノタイプI型ではSVR100%であり、II型でも98%程度ある。

ウイルスが消えても2.4%で肝癌の発生があり、AFP、ALP-L3が発がんの評価に有効である。ウイルスが消失すると、AFPは低下するが、AFPが低下しないものから発がんみられる。PIVKA-IIも同じような効果があるが、特異度が低い。腹部エコーにて肝再生結節があると肝癌が発生しやすい。