アクテムラ学術講演会に参加して

6月25日に品川で行われましたアクテムラ学術講演会に参加しました。

妊娠とアクテムラ

妊娠中に関節リウマチの活動性が低下し改善すると言われているが、DAS寛解に入るのせいぜい25%程度である。妊娠中、授乳中は積極的に薬物療法を行い活動性をコントロールする必要がある。薬剤により胎盤通過性に違いがある。sDMARDは分子量が小さく濃度勾配的に胎盤を通過するため一定量は胎児移行する。bDMARDは分子量大きく妊娠中期から胎盤移行性が出てくる。MTXは催奇形性があるため妊娠前に中止すべき。アザルフィジン、プログラフは継続可能。TNF阻害薬は妊娠前期はOKである。エンブレル、シムジアは全期間通して使用可能、授乳中は使用可能。アクテムラの妊娠に関するデータは乏しいが、明らかな催奇形性や流産などを増加させるデータはない。アクテムラを使用しないとコントロールできない患者さんが挙児希望、妊娠した場合には、妊娠判明後中止し、PSLの内服、妊娠11週以降ではエンブレルやシムジアを使用。TNF阻害薬にてコントロール不良患者さんにアクテムラを使用して活動性を押さえ込み、妊娠にいたって症例で妊娠中にアクテムラを中止しても活動性が低下したままであった症例がある。

アクテムラ市販後調査

感染症は10%、重篤感染症は3.6%、消化管穿孔は0.1%。重症感染症は他の生物学的製剤とほぼ同等であり、危険因子としては、65歳以上、罹病期間が10年以上、呼吸器疾患の合併、PDL5mg以上使用。

SURPRISE STUDYから見たアクテムラ使用の最適化

エンブレルでは、単独使用では有効性はMTXとほぼ同等であるが、ASTORI STUDYでは、アクテムラはMTX単独よりも有効性が高い。SURPRISE STUDYでは、MTX併用がアクテムラ単独よりもDAS28-ESRでの有効性は高い。Switch群とAdd-on群では、Add-on群の方が有効性が4週目から高くなっている。しかし、52週になるとその差はなくなってくる。52週で差がなくなるのであれば、52週以降はMTXは不要であるか?関節破壊は、CRRPがSwitch群で高い。24週でDAS28で寛解になっていない症例ではCRRPが高い。早期に炎症が抑制できると関節破壊を抑制できる。

DREAM STUDYではIL-6低下、MMP-3低下していると中止可能である。ACT-RAY STUDYでは、DMARD併用していてもアクテムラの中止は難しい。中止した症例で、1年後中止できているのは10〜40%程度。KEIO-TCZ STUDYでは、有害事象はMTX併用群で多いため、1年経過して寛解状態であれば、MTXは中止した方がよい。

第16回日本実地医家消化器内視鏡研究会に参加して

6月19日京都で行われました日本実地医家消化器内視鏡研究会に参加しました。

胃癌ABC検診が全国的に行われているが、ピロリ菌陽性判定の血清ピロリ抗体キットがEプレートからラテックス法に変更となり、陰性高値の設定がなく不一致がみられる。本年3月に和光からラッテクス法による新しいキットが発売となり、陰性高値の設定は不要であり従来よりも短時間での測定が可能となり、感度特異度も極めて高いため今後のABC検診に有効となる可能性あり。

胃癌リスクを評価するための分類とスコア化および内視鏡的胃炎の記載方法について胃炎の京都分類が策定された。RAC、胃底腺ポリープ、稜線上発赤、ヘマチン付着、びまん性発赤、鳥肌、襞腫大、地図状発赤などの所見により、現感染(慢性活動性胃炎)、既感染(慢性非活動性胃炎)、未感染(正常胃)に分類記載する。

ピロリ菌が胃癌のリスクであり、除菌により胃癌が1/3に予防できる。最近のメタアナリシスではNNTは124であり、1人の胃癌を予防するためには124人の除菌が必要である。除菌だけでは完全に予防できず、定期的な胃内視鏡検査による胃癌検診が必要である。胃X線でも慢性胃炎の評価を行い、胃癌疑いのチェックだけでなく、胃癌のリスクとしての慢性胃炎を拾い上げることが必要である。

京都府では、胃癌撲滅のため高校1年生全例にピロリ菌除菌を無料で行うことに取り組んでいる。尿中抗体、便中抗原にて確認すると、約4〜6%でピロリ菌陽性。除菌は除菌率の高い二次除菌製剤にて実施している。

2015年胃がん検診ガイドラインが改定となり、対象年齢が40歳から50歳に引き上げられ、検診間隔は2年間が基本、X線検査に加えて胃内視鏡検査での検診も可能となった。2年に1回でも胃がんによる死亡率の上昇がないことから2年間隔となっている。検診マニュアルでは、胃内視鏡検査は日本内視鏡学会専門医の資格を持った医師が実施、鎮静剤の使用は不可、ダブルチェックが必要等の規定あり

Biologics User’s Forumに参加して

6月18日東京で行われたBiologics User’s Forumに参加しました。

シンポニー(ゴリムマブ)のメーカー主催の講演です。

3名の先生の講演がありましたが、全体的な内容としてはまとめると、

シンポニーは5年間の長期間有効性が低下せず、継続率が高いことが示された。トランスジェニックテクノロジーによる完全ヒト型抗体であるため、免疫原性が低くMTX非併用下でも抗製剤抗体がほとんどできないためと考えられる。4週間に1回の皮下注製剤で自己注射はできないため医療機関での確実な実施ができアドヒアランスが高い。50mg、100mgの2剤形があり用量選択が可能である。シンポニーの有効血中濃度はトラフで0.6μであるが、50mgでは一部の症例で有効血中濃度を下回るが、100mgではほとんどの症例が有効血中濃度を上回る。高疾患活動性であれば最初から100mgを選択することにより、効果不十分となる可能性が低くなる。50mgでスタートしてある程度の効果があるが不十分なパーシャルレスポンダーであれば、100mgに増量することにより深い寛解が得られるようになる。

GO-AFTER試験においてTNF製剤抵抗症例でシンポニーに変更し、効果不十分であれば100mgに増量すると寛解率が高く、他のTNF無効例にも有効である。

シンポニーはMTX非併用での使用が可能であり、寛解を得られた場合に、シンポニーの減量中止、MTXの減量中止の選択が可能である。

 

2016世界禁煙ウィーク兵庫県民フォーラムに参加して

6月4日

シンポジウム 県受動喫煙防止条例施行後3年を経過して

平成25年4月から全国都道府県では2番目に受動喫煙防止条例が施行された。

不特定又は多数のものが利用又は出入りする施設の、全面的な禁煙(第9条別表第1)

幼稚園、小・中・高校、保育園:敷地内・建物内全てを禁煙

病院・診療所、官公庁の庁舎、児童福祉施設など:建物内を全て禁煙

大学、専修学校、薬局:建物内の公共的空間を禁煙

宿泊施設、飲食店、金融機関、公共交通機関、物品販売店、運動施設、図書館・博物館・美術館、公園、社会福祉施設:建物内の公共的空間を禁煙又は厳格な禁煙

フロントロビー100m2以下の宿泊施設、客室面積100m2以下の飲食店は例外規定あり

 

今後の方向性としては、子供や妊産婦の受動喫煙防止、子供や妊産婦の喫煙防止、喫煙者の健康回復に向けた取り組み

健康日本21の目標値

平成22年喫煙率 19.5%を平成34年に12%に減らす

兵庫県喫煙率

H13:28.5% H16:26.5% H19:23.3%:H22 19.0% H25:19.2%

平成22年までは順調に減少していたが、全国的に再上昇傾向

県健康づくり推進実施計画 平成29年度 10%以下(男性19%以下 女性4%以下) 目標達成は困難

 

保健医療における禁煙治療

28年度診療報酬改定による変更

ニコチン依存症管理料の対象患者の拡大

いままではブリンクマン指数(一日の本数x年数)が200以上の条件があり若年者対象者から除外され保険で禁煙治療を受けることができなかった

35才以上のものはBI200以上、35歳未満ではブリンクマン指数の条件が廃止されたため若年者でも保険適応対象者となった

たばこは有害であり、たばこにより多数の死亡者が出ているのに販売が継続されていることが問題、他のものでは有害なものが売られていることはなく、食べ物などでは異物が少し混入しただけで自主回収となっているのに有害なたばこが平然と売られていることは大きな問題

日本では受動喫煙が原因で年間1万5千人が死亡していることが厚労省より発表された

 

5月31日はWHOが世界各国に『たばこのない社会を目指そう』と呼びかける『世界禁煙デー』、今年のテーマは『プレーンパッケージを推進しよう』。たばこの包装に健康被害の写真を全面的に表示し警告しようという呼びかけで、豪州などで実施され効果は実証済み。厚生労働省も『2020年、受動喫煙のない社会を目指して~たばこの煙から子供達をまもろう』をテーマにイベント開催予定

 

たばこ規制枠組み条約(FCTC)という国際条約が定めている受動喫煙防止の国際基準では、すべての公共施設、職場、公共交通機関は全面的に終日完全禁煙でなければならないとなっている。喫煙室設置の許容や例外事項、喫煙を特別に許可する人物の設定なども禁じられている。兵庫県の条例は、完全禁煙ではなく、JTが押し進めている分煙を認めているため世界基準から大きく遅れている。また、必ず罰則をつけて徹底する必要があるが、日本ではまだ喫煙を罰則付きで規制する法律はない。カナダ、オーストラリア、韓国など世界では、すでに法律により規制され罰則も定められているのに、日本は世界に大きく遅れている。

厳格に受動喫煙防止対策を実施した地域では、心筋梗塞が20%前後減少し、スコットランドでは飲食店従業員の血中ニコチンが減少、受動喫煙による疾患が30%減少した。その結果、医療費が下がり、生産性が上がり、メンテナンス費用がさがり、雇用者の責務も軽くなったといいことずくめである。日本では、盛んな分煙キャンペーンの悪影響で、分煙が解決策のように受けとめられている。禁煙推進側にも分煙は禁煙へのステップであるかのような認識を広める研究者がいたことも足かせとなっていた。分煙は禁煙へのステップどころか遅延策であるというのが世界の常識である。国際基準の分煙なし、例外なし、罰則ありの禁煙規制を国のレベルで実現すべきである。

 

PM2.5の発生源としてのたばこ

粒子状物質の中で粒径2.5μm以下のものをPM2.5

呼吸器系の深部まで到達しやすいことから健康影響が懸念されている

大気中に浮遊する粒子でPM2.5となるのは、液体燃料の燃焼時のばいじん、ディーゼル排気粒子、たばこの煙がある

1993年、PM2.5の大気中濃度と死亡比をみると、PM2.5濃度が高い都市ほど死亡比が高くなることが報告され、PM2.5が注目されるようになった

たばこを室内で1本吸うと室内のPM2.5濃度は約800μg/m3、たばこ3本で1600μg/m3を超える

PM2.5濃度が上昇すると、短期暴露でも当日または数日以内に死亡する人が増加するという報告が多数されている。PM2.5の日中平均濃度が12.8μg/m3以上で観察されている

大気汚染、粒子状物質に発がん性がある(Group1)であると国際がん研究機関が認定している。PM2.5はアスベストと同じ発がん性のある物質に分類されている。

日本におけるPM2.5環境基準は、1日平均35μg/m3、年平均15μg/m3

日本のPM2.5年平均値は高度成長期より徐々に低下し基準値程度になっている

一日平均70μg/m3を超えると不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らすことが推奨

喫煙者がいると屋内のPM2.5 濃度は上昇する

スコットランドの調査では、喫煙者がいない家庭では8μg/m3、喫煙者が一人でもいると71μg/m3

PM2.5は大気中だけでなく屋内でも発生し、タバコが大きな要因であり健康に影響をおよぼす

喫煙によって生活環境中のPM2.5 濃度は大気中よりも遙かに高い濃度となることから、禁煙はPM2.5対策としても最も有効な手段である