6月4日
シンポジウム 県受動喫煙防止条例施行後3年を経過して
平成25年4月から全国都道府県では2番目に受動喫煙防止条例が施行された。
不特定又は多数のものが利用又は出入りする施設の、全面的な禁煙(第9条別表第1)
幼稚園、小・中・高校、保育園:敷地内・建物内全てを禁煙
病院・診療所、官公庁の庁舎、児童福祉施設など:建物内を全て禁煙
大学、専修学校、薬局:建物内の公共的空間を禁煙
宿泊施設、飲食店、金融機関、公共交通機関、物品販売店、運動施設、図書館・博物館・美術館、公園、社会福祉施設:建物内の公共的空間を禁煙又は厳格な禁煙
フロントロビー100m2以下の宿泊施設、客室面積100m2以下の飲食店は例外規定あり
今後の方向性としては、子供や妊産婦の受動喫煙防止、子供や妊産婦の喫煙防止、喫煙者の健康回復に向けた取り組み
健康日本21の目標値
平成22年喫煙率 19.5%を平成34年に12%に減らす
兵庫県喫煙率
H13:28.5% H16:26.5% H19:23.3%:H22 19.0% H25:19.2%
平成22年までは順調に減少していたが、全国的に再上昇傾向
県健康づくり推進実施計画 平成29年度 10%以下(男性19%以下 女性4%以下) 目標達成は困難
保健医療における禁煙治療
28年度診療報酬改定による変更
ニコチン依存症管理料の対象患者の拡大
いままではブリンクマン指数(一日の本数x年数)が200以上の条件があり若年者対象者から除外され保険で禁煙治療を受けることができなかった
35才以上のものはBI200以上、35歳未満ではブリンクマン指数の条件が廃止されたため若年者でも保険適応対象者となった
たばこは有害であり、たばこにより多数の死亡者が出ているのに販売が継続されていることが問題、他のものでは有害なものが売られていることはなく、食べ物などでは異物が少し混入しただけで自主回収となっているのに有害なたばこが平然と売られていることは大きな問題
日本では受動喫煙が原因で年間1万5千人が死亡していることが厚労省より発表された
5月31日はWHOが世界各国に『たばこのない社会を目指そう』と呼びかける『世界禁煙デー』、今年のテーマは『プレーンパッケージを推進しよう』。たばこの包装に健康被害の写真を全面的に表示し警告しようという呼びかけで、豪州などで実施され効果は実証済み。厚生労働省も『2020年、受動喫煙のない社会を目指して~たばこの煙から子供達をまもろう』をテーマにイベント開催予定
たばこ規制枠組み条約(FCTC)という国際条約が定めている受動喫煙防止の国際基準では、すべての公共施設、職場、公共交通機関は全面的に終日完全禁煙でなければならないとなっている。喫煙室設置の許容や例外事項、喫煙を特別に許可する人物の設定なども禁じられている。兵庫県の条例は、完全禁煙ではなく、JTが押し進めている分煙を認めているため世界基準から大きく遅れている。また、必ず罰則をつけて徹底する必要があるが、日本ではまだ喫煙を罰則付きで規制する法律はない。カナダ、オーストラリア、韓国など世界では、すでに法律により規制され罰則も定められているのに、日本は世界に大きく遅れている。
厳格に受動喫煙防止対策を実施した地域では、心筋梗塞が20%前後減少し、スコットランドでは飲食店従業員の血中ニコチンが減少、受動喫煙による疾患が30%減少した。その結果、医療費が下がり、生産性が上がり、メンテナンス費用がさがり、雇用者の責務も軽くなったといいことずくめである。日本では、盛んな分煙キャンペーンの悪影響で、分煙が解決策のように受けとめられている。禁煙推進側にも分煙は禁煙へのステップであるかのような認識を広める研究者がいたことも足かせとなっていた。分煙は禁煙へのステップどころか遅延策であるというのが世界の常識である。国際基準の分煙なし、例外なし、罰則ありの禁煙規制を国のレベルで実現すべきである。
PM2.5の発生源としてのたばこ
粒子状物質の中で粒径2.5μm以下のものをPM2.5
呼吸器系の深部まで到達しやすいことから健康影響が懸念されている
大気中に浮遊する粒子でPM2.5となるのは、液体燃料の燃焼時のばいじん、ディーゼル排気粒子、たばこの煙がある
1993年、PM2.5の大気中濃度と死亡比をみると、PM2.5濃度が高い都市ほど死亡比が高くなることが報告され、PM2.5が注目されるようになった
たばこを室内で1本吸うと室内のPM2.5濃度は約800μg/m3、たばこ3本で1600μg/m3を超える
PM2.5濃度が上昇すると、短期暴露でも当日または数日以内に死亡する人が増加するという報告が多数されている。PM2.5の日中平均濃度が12.8μg/m3以上で観察されている
大気汚染、粒子状物質に発がん性がある(Group1)であると国際がん研究機関が認定している。PM2.5はアスベストと同じ発がん性のある物質に分類されている。
日本におけるPM2.5環境基準は、1日平均35μg/m3、年平均15μg/m3
日本のPM2.5年平均値は高度成長期より徐々に低下し基準値程度になっている
一日平均70μg/m3を超えると不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らすことが推奨
喫煙者がいると屋内のPM2.5 濃度は上昇する
スコットランドの調査では、喫煙者がいない家庭では8μg/m3、喫煙者が一人でもいると71μg/m3
PM2.5は大気中だけでなく屋内でも発生し、タバコが大きな要因であり健康に影響をおよぼす
喫煙によって生活環境中のPM2.5 濃度は大気中よりも遙かに高い濃度となることから、禁煙はPM2.5対策としても最も有効な手段である