5月27日に大阪で開催されました阪神RA研究会に参加しました。
『関節リウマチの最新治療戦略とPrecision medicine』
Precision medicineとは、オバマ氏が提唱したもので、個別化医療とことなり、遺伝子、環境、ライススタイルなどの特徴を考慮し革新的な手法により個別化医療を実現するための医療である。日本語訳としては精密医療であり、癌の領域で活発に進められている。標準的関節リウマチ治療の指針としては、昨年EULRAが改訂版を発表。2010年との違いは、MTXの禁忌がなければ、MTX単独で治療開始、ステロイドの短期併用を積極的に考慮する。DMARD他剤併用は必ずしも効果が高くなく、継続率も高くなかった。COBRA試験でMTX+ステロイド併用と他剤併用にステロイドを併用しても差がなかったことが証明。6ヶ月後のphase2では、JAK 阻害薬が、bDMARDと同等に格上げされたが、現時点としては、まずはバイオを勧め、JAK阻害薬その次に考慮されている。活動性の評価方法としては、エコー、MRI、サーモグラフィーなどがあげられるが、エコー評価とconventional tight control 群で比較したARCTEC studyでは2群間に差はなく、まだエコーでモニターするのは時期尚早である。MTXは内服しても腸内細菌の状態により吸収が個々に異なっている。MTXの皮下注製剤であれば安定した細胞内濃度を保つことができる。MAGIK studyで、MTX-PG濃度測定を評価すると<20では治療効果期待できないレベル、20〜60中間域、>60治療域であることが判明。日本人は少量のMTXで効果があるが、実際にMTX-PGを測定すると、欧米人よりもMTX-PG濃度が60%程高いことがわかった。体重よりも、BMIがMTX-PG濃度に影響する。BMI<18.5、18.5〜25、>25と分けると、>25は欧米人とほぼ同じ、BMIが低いと50%程度MTX濃度が上昇する。MTXの肝障害が観られる場合は、MTX-PG濃度が高い、BMIが低いと肝障害が多い。ただ、MTX-PG濃度が高くても肝障害が起こらない人もいる。発症後4週までにバイオで治療を開始すると1年後の寛解率は85%に達する。日本の発症後0.3年の治療開始では寛解はせいぜい30%止まり。では、どのバイオが治療反応性がよいかを予測できるか?今までのバイオマーカーでは予想できない。ADACTAstudyでは、有効な予測因子としてリンパ球系<顆粒球系であればアダリムマブが有効、リンパ球系>顆粒球系であればアクテムラが有効。ただ、有効性が予測できるのはたかだか25%である。遺伝子チップだけでは予測できず、ゲノムを調べても、mRNAを調べてもだめである。バイオの選択には役立たないが、治療量を決定することは、投与前のTNF濃度を測定することにより、治療量を考えることはできる。RF、抗CCP抗体ダブルポジティブであればTNF血中の度は高いことが多い。レミケードのトラフ値1μg以上であれば有効であり、レミケード血中濃度が1μ以上かを判定できるレミチェックQがまもなく使用できるようになる。アクテムラにおいては、投与間隔を延ばせる人が18%、3週間隔に縮めると効果がある人が7%ある。IL-6とsIL-6Rを測定し、IL-6/sIL-6Rレベルが重要である。ともに、高値となるGr2が最も治療に手強く、Gr1とGr3はレミッションに入りやすい。TNF、IL-6、sIL-6Rは現在測定可能であり、1年後の関節破壊マーカーとなっている。