日常診療で診る静脈血栓症の診断と治療に参加して

9月9日(土)に行われました日常診療で診る静脈血栓症の診断と治療に参加しました。

DOACの登場により静脈血栓症の治療が向上し、注目を浴びるようになってきた。静脈血栓症(VTE)は、肺塞栓症(PTE)と深部静脈血栓症(DVT)をあわせたものである。DVTの80%は無症候性で、50%にPTEを合併するため早期発見が必要である。近年死亡原因としてPTEが増加しているが、高齢化にも伴うものもあるが、診断能の向上によると思われる。DVTが発生部位により、腸骨型、大腿型、下腿型に分けられる。下腿型は主に血流うっ滞である。特に下腿のヒラメ筋のヒラメ静脈が最も血栓ができやすい。血栓には閉塞性血栓とフリーフロート血栓があり、閉塞性血栓は浮腫、痛みが出現し早期発見しやすいが、フリーフロート血栓は症状ができにくく発見が遅れ、PTEを発症しやすく危険である。VTEのリスクファクターとして、肥満、ねたきり、手術、がんなどが挙げられる。誘発因子としては、血流障害、凝固能亢進、血管内皮障害がある。 VTEを診断するためには、まず疑うことが大切である。DVTは、下腿浮腫、疼痛などがあり片側性であれば可能性が高く、Dダイマーが高値であればさらに可能性が高い。PTEにみられる症状は、呼吸苦、胸痛などであるが、20%に失神があり、失神患者を診たらPTEも鑑別診断としてあげなければいけない。PTEの診断には、以前から胸部レントゲンや心電図などが挙げられているが、感度が低く、Dダイマーは血栓の存在を示唆する検査であり、感度は非常に高いが、特異度が低い。したがって、呼吸苦があり、Dダイマーが高いからPTEであるとは言えないが、Dダイマーが正常であれば、PTEは否定できる。

 

静脈疾患をエコーで診る

静脈圧は体位により容易に変動するため、観察する体位が大切である。浮腫をきたす機序には静脈圧の上昇による侵出とアルブミン低下などによる浸透圧低下による漏出がある。逆流を診るためには、座位か立位にして観察する必要がある。下腿で静脈を観察する場合、主幹血管や神経は筋膜間を走行するため、まず筋膜を探すと血管を見つけることができる。下腿では、後脛骨静脈、腓骨静脈、前脛骨静脈、ヒラメ静脈を観察する。DVTの緊急観察では、prximal CUS(大腿静脈、膝窩静脈を観察)を実施し、陽性であれば治療開始。proximal CUSが有用でないのは、下腿腫脹がなくDダイマーが高値、下腿の疼痛があり肺塞栓症を疑う場合などであり、この場合は、ヒラメ静脈に注意して下腿も観察する。PTEでは、83.3%にヒラメ静脈に血栓が診られる。