神戸西・明石エリア関節リウマチセミナーに参加して

7月21日に開催されました上記セミナーに参加しました

生物学的製剤にて寛解に至った症例をアバタセプトに切り替えた場合の有用性を検討。

関節リウマチ患者さんの高齢化、高齢発症の関節リウマチが増加していることから、全体的な副作用の少ないアバタセプトに切り替えて継続することが有用ではないかと考えて検討されている。アバタセプト以外の生物学的製剤にてDAS28CRPで3ヶ月以上寛解を維持している症例を本人の希望を聞いてアバタセプトに切り替える群と継続する群とに分けてその後の経過を検討され、アバタセプトに切り替えた群の方が寛解維持率が高く、感染症の発症も増加せず有効である可能性があるとの発表であったが。アバタセプトがT細胞活性化の防止効果であること、関節リウマチと分類できない関節炎の状態の患者にアバタセプトを6ヶ月使用するとその後の関節リウマチへの進展が防止できるとの文献から、発症初期と寛解導入された状態に有効ではないかと推察されている。ただ今回の検討では、継続群においてMTX減量、PSL減量、バイオの減量などを行っておられ観察開始2ヶ月目で中疾患活動性になっている症例もありかなりのファクターが入り組んでいるため両群を比較することは無理があると思われる。

特別講演では、テーラーメイド治療の可能性について、propensity score matchingを用いた新たな視点からの講演。現在関節リウマチに対して有効なバイオが多数がある、TNF、IL-6、T細胞活性化に関わるものしかない状態であるため、この3つ因子がRAに重要であるが、そのうちどれが最も重要であるか?直接比較をしてどれが最も臨床的に有用であるかを見ることにより判断できるが、head to headのRCTは3つしかない。この3つの試験では、トシリズマブvsアダリムマブ、アバタセプトvsアダリムマブにおいて効果に差はなかった。だだRCTは実臨床の患者間には差があるため、RCTのデーターをそのまま実臨床に持ち込むことはできない。産業医大の実際のバイオの効果も同じ結果であるかどうかを年齢、MTXの併用率、ベースの感染症リスクなどいろいろな差をなくすための手段として score matchingを用いて検討された。それによれば、アダリムマブ、トシリズマブ、アバタセプトの有効性にはどれも差がなかく、RCTと同じ結果であった。テーラーメイド治療をめざすため、それぞれの製剤における予後予測因子があるかどうかを検討。TNF、IL-6、T細胞活性化のどれかにしか効かない症例を見つけ出し検討している。マーケッティングで用いるdecision tree analysis(決定木分析)を用いて何でも効く症例を除外しバイオナイーブ症例で予後予測因子を検討。半分はどのバイオでも効果があり、RFとSDAIが予後予測因子として抽出された。アバタセプトは、RFが高いほど、SDAIが低いほど寛解率が高い、トシリズマブはRFが低いほど、SDAIが高いほど寛解率が高い。アダリムマブでは、RF、SDAIとも関係なし。RFでテーラーメイド治療が可能か?アバタセプトでは、RF50をカットオフとして、50以上ではSDAIが改善しやすい。

兵庫県整形外科医会リウマチフォーラムに参加して

平成28年7月9日、兵庫県整形外科医会リウマチフォーラムに参加しました。

予定より40分ほど開始が遅くなり、特別講演I終了後に予定になかった15分の休憩が組み込まれたため、特別講演IIは聴講することができませんでした。

関節エコー技術習得のため留学された、三崎先生より講演

関節エコーは、安価で、可動性があり、放射線被曝もない非常に便利な検査機器である。関節エコーで、グレースケールにより関節液貯留、骨不整、滑膜増殖を、パルスドプラにて活動性滑膜炎の検出ができる。また、関節リウマチの早期診断に役立つ腱鞘滑膜炎の診断も可能。

骨びらんと骨棘の違い、びらんは平面に穴、骨棘はとげ、上に凸不連続な像として描出。エコーを使うと関節リウマチの診断感度は診察のみよりもあがる。診察所見だけであれば、感度58.5%、エコーGS≧Gr1を基準とすると感度78%、GS≧Grade2かつPD≧Grade1とすると特異度93.7%になる。触診にて関節腫脹、圧痛なしと判断した関節にエコーを実施すると、25.6%で滑膜増殖像があり、13.7%で活動性滑膜炎の所見が見られた。臨床的寛解では真の寛解とはいえず、厳しいBoolean基準で寛解と診断されたうち20%で関節破壊が進行する。関節エコーによる画像的寛解を目標とすべきである。骨に近い血流像が関節破壊の原因であり、エコーでの画像的寛解のチェックし、画像滴寛解が得られるまで治療を強化することが必要である。

このあと症例呈示

① 痛風関節炎:軟骨の表面が尿酸ナトリウムにより白くなり、ダブルコンツールサインが見られる。

② 強直性脊椎炎:アキレス腱の付着部炎、MRIにて頸椎の四隅が白くなる

③ 巨細胞腫

HUMIRA RA Forumに参加して

7月2日行われましたHUMIRA RA Forumに参加しました

HOPEFUL試験において、MTX単独、MTX+ADAにて治療開始し、6ヶ月後に両群ともMTX+ADAにて治療を実施し、12ヶ月後の評価。6ヶ月ではMTX+ADA群の方が治療成績がよいが、12ヶ月後には、両群ともDAS28の寛解率は同じになり、MTX単独群でもADAを追加併用することにより、寛解率はキャッチアップできる。しかし、関節破壊においてはMTX単独群では、関節破壊が進行した症例が多く、関節破壊は6ヶ月間のバイオの遅れにより進行してしまう。HOUPEFUL−2試験にて、MTX+ADA治療1年後に、ADAを継続した群と、ADAを中止した群を比較すると、関節破壊には差はなかった。関節破壊が進行する症例では、早期にバイオを開始する必要があり、治療開始が遅れると関節破壊が進行し、バイオを追加しても関節破壊をしっかりと防止することはできない。

ADAの休薬はDAS28-CRP<2.6と寛解に入っていれば、86%が寛解維持できる。発症早期であれば1/3は休薬可能である。一般的に、発症2年以内であれば半数は休薬できる。2年以上経過すると、ステロイドが中止できないと休薬はできない。休薬できるのは、csDMARDを併用していることが必要。

以上より、発症半年は強力に治療して寛解導入し、以後は安全に寛解維持を図ること大切である。MTX単独でも6割の患者さんは、寛解導入でき関節破壊の進行もない、2割の患者さんでは、MTXだけでは寛解に導入できず、関節破壊の進行を防止できないため早期にバイオを開始する必要があるが、治療前にバイオが必要である患者さんを見極める手段がまだないのが現状である。

EULRAにおいて、JAK阻害薬がMTX効果不十分例においてbDMARDと同等に扱われる勧告がプレリミナリーではあるが発表された。JAKは30を超える免疫に関わるサイトカインやケモカインの発現制御に関わっており、非常に有効性が高い可能性がある。RAの滑膜では、JAK3の発現が亢進しており、トファチニブの投与によりIL-17、MMP-3の発現が減少、トファチニブの作用は、Th1、Th17、樹状細胞、B細胞もターゲットとなっている。現在、いくつかのJAK阻害薬が臨床治験に入っている。