東播磨 高齢者の肺炎予防勉強会に参加して

9月13日加古川で行われました『東播磨 高齢者の肺炎予防勉強会』に参加しました。

現在日本人の死因の第3位が肺炎である。ほとんどが65才以上の高齢者であり、高齢者が肺炎を起こすとADLが低下し、廃用症候群となる。肺炎は1週間で治癒するがADLの低下は改善せず、寝たきりとなり嚥下機能の低下につながり誤嚥性肺炎を繰り返す負のスパイラルに入る。一時は胃瘻などの経管栄養を積極的に行っていたが、経管栄養では誤嚥性肺炎は防げない。繰り返す肺炎を起こす状態はすなわち老衰であり、肺炎を治療しても肺炎を起こしやすい老衰状態を直すことはできない。ターミナルケア肺炎とよばれ予防する手立てがない状態である。ターミナルケア肺炎では、何をしても助けることはできないため、抗菌薬を繰り返し使用することによる耐性菌の出現も問題となっており、抗菌薬を使用しないという選択肢も考慮すべきである。高齢者が一旦肺炎を起こすと、負のスパイラルに入ってしまうため、肺炎を予防することが大切である。健康寿命を伸ばすためには、健康寿命を縮める病気を予防すること大切である。高齢者の肺炎の起因菌の第一は肺炎球菌であり、64歳未満と65歳以上ではその罹患率は5倍以上、75才以上では10倍以上に増加する。肺炎予防のため65才以上の方に肺炎球菌ワクチンを接種が定期接種として開始されている。日本で使用可能な肺炎球菌ワクチンは2種類あり、現在公費負担の対象となっているニューモバックスと対象となっていないプレベナーがある。ニューモバックスは多糖体ワクチンであり、免疫原性が低くB細胞を直接活性化して抗体産生を誘導するが、免疫記憶ができないため5年ごとの接種が必要である。ただ、血清型は23価あり、多くの血清型に効果が期待できる。プレベナーはキャリア蛋白をつけた結合型ワクチンであり、樹状細胞を活性化し、T細胞活性化を介してB細胞の活性化を誘導し、抗体産生を誘導さらにメモリーB細胞を誘導し免疫記憶が確立されるため、1回の接種で効果が持続する。プレベナーは小児の定期接種となり、その後肺炎球菌による髄膜炎が劇的に減少した。また、子供は保育園などの集団生活を始めると肺炎球菌、インフルエンザ菌の保菌が見られるようになるが、子供の肺炎球菌の保菌を減らす効果もある。高齢者の肺炎の起因菌の第一は肺炎球菌であり、64歳未満と65歳以上ではその罹患率は5倍以上、75才以上では10倍以上に増加する。なぜ高齢者で肺炎球菌肺炎が多くなるのか?原因菌の肺炎球菌はどこから運ばれてくるのか?菌を保菌している孫と接触することにより、孫の保菌している肺炎球菌が感染して肺炎をきたしている。子供の肺炎球菌ワクチンが定期接種となり、肺炎球菌による髄膜炎が減ったが、それに伴い高齢者の侵襲性肺炎球菌肺炎も間接的に減っている。これは、プレベナーにより、子供の肺炎球菌の保菌数が減ることにより、高齢者への感染を減らした間接効果である。

ニューモバックスとプレベナーはどのように使用すればいいか?どちらが効果がいいか?日本において、65才以上の健康な方にニューモバックスを接種して肺炎球菌肺炎が予防できるかを調査すると、効果がある人もいるが効果がない人の方が多いため全体としてみると効果がない。海外の研究ではあるが、プレベナーを65才以上の方に接種すると、市中肺炎が46%減少し、侵襲性肺炎球菌肺炎は75%減少した。アメリカでは、それまでニューモバックスが定期接種のワクチンとして推奨されていたが、このデータをもとに65才以上の方でワクチン接種歴のない方はプレベナーを接種し、1年以上あけてからニューモバックスを接種、ニューモバックスを接種したことがある方は、1年以上開けてからプレベナーを接種することを勧めている。どちらを先にうつ方が効果があるかを見ると、プレベナーを先に接種し、あとでニューモバックスを接種した方が、反対の順番で接種するよりも予防効果が高まる。プレベナーを接種して、強い抗体産生を誘導して、その後23価のニューモバックスを接種して多くの血清型に反応するようにすることが高い効果が期待できると考えられる。肺炎の入院費は約70万円かかる、医療経済的にもワクチン接種にて肺炎を予防することが大切であり、特にリスクの高い気管支喘息、糖尿病、慢性腎不全、COPD、心不全などの方は積極的に肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを接種することが必要である。患者さんが肺炎球菌ワクチンを摂取したきっかけは、医師の勧めが第一の理由であるため、我々臨床医が患者さんに積極的に肺炎予防のため、健康寿命を延ばすために肺炎球菌ワクチンをストップ肺炎をめざして勧めるようにすべきである。