9月15日に神戸で開かれました『兵庫県感染症セミナー』に参加しました。
今回のテーマは、尿路・性感染症でした。
教育講演では、尿路・性感染症における抗菌薬の使い方についての講演でした。投与経路としては、経口と注射であり、軽症では外来での経口薬による治療。尿路感染症の治療を行う場合には、血中濃度、組織移行性、尿路から膀胱組織への移行性を考慮して使用する必要がある。経口薬の場合は、吸収に食事の影響が出るため、それぞれの薬剤が空腹時、食前、食後のどの時に最も血中濃度が上がりやすいかに注意が必要。単純性と基礎疾患のある複雑性、重症度により分類し抗菌薬選択をする。単純性はほとんどが大腸菌であるが、最近はESBLも含まれており注意が必要。複雑性になると、緑膿菌や腸球菌等いろいろな菌が増えてくるため、グラム染色、培養を実施し、エンピリック治療を開始し、培養結果と感受性結果を見てデエスカレーションを実施する。
特別講演は、アトラスで見るこれが性感染症だと題名通り、さまざまな実例のアトラスを提示しわかりやすく説明していただきました。
梅毒は、2011年以降増加しており、現在はアウトブレイク状態。2015年は2000人台であったが、2016年は8月ですでに昨年を上回っており3000人を超える勢いである。東京が全体の40%を占めており、次いで大阪、神奈川続いている。兵庫県は7位。男性は、20〜40才代、女性は20〜24才が多い。2011年までは、同性間接触による感染が多かったが、最近は異性間接触による感染が多くなり、同性間接触よりも多くなっている。20〜24才の女性が多いことから、先天梅毒の報告も多くなっている。最近梅毒が増えている原因は明確には分からないが、訪日する中国人の増加が一因となっている可能性もある。中国での梅毒患者は、43万人、死亡58人。中国は日本の人口の10倍であるが、梅毒患者は300倍である。初期症状としては、初期硬結、硬性下疳、無痛性横痃がある。硬性下疳は、周囲が軟骨のように硬いびらんおよび潰瘍が見られるが、疼痛は伴わないのが特徴、2〜3週で自然消失する。これらはトレポネーマの進入部位にみられ、性器外にも2〜3%にみられ口唇に見られることもある。第2期はバラ疹がみられ、鱗屑を伴わない紅斑であり、手のひらと足の裏に両方見られれば梅毒と診断できる。肛門に扁平コンジローマがみられ、これらにはトレポネーマが非常に多く感染源として注意が必要。こく腔粘膜にバタフライアピアランスとよばれる白斑が見られることがある。第3期には、結節性梅毒疹、ゴム種がみられる。HIVが基礎にあると悪性梅毒となり重篤になる。HIV感染が増加しているため神経梅毒も多くなっている。
クラミジア感染症は10〜20才、女性が男性の2倍。感染ご1〜3週後に、尿道より漿液性の浸出液がみられるが、約半分は無症状で、女性の場合は70〜80%は無症状。
淋菌感染症は、男性の方が多く、症状もきつい。20才代の多く排尿初期に痛みがあるのが特徴である。尿道より排膿がみられる。
これらはともに、女性では不妊、子宮外妊娠等の原因になる。
淋菌、クラミジアによる咽頭感染では、90%が症状が見られない。淋菌は咽頭感染が多く、クラミジアは咽頭は少なく性器感染が多い。
性器ヘルペスは、小傷より進入し神経に感染し再活性化時にパートナーに感染させることになる。初感染は左右対称性のびらんがあり、帯状疱疹との鑑別が問題となる。性器ヘルペスは症状が激しく、I型ヘルペスウイルスによるものが多い。