TAISHOTOYAMA Medical symposiumに参加して

平成30年1月6日東京で開かれましたシンポジウムに参加しました。

2017/2018のインフルエンザは、A/H1 pandemic 09、A/H3、Bヴィクトリア系、B山形系すべてが分離されている。昨年夏に、香港、台湾、オーストラリアではインフルエンザが猛威をふるい多数の死者も出ている。A/H3がほとんどで香港では238人、台湾でも135人死亡している。ウイルスのvaliantではなく、通常のH3であった。現在、ワクチンの製造は鶏卵法であるが、今回のワクチンは鶏卵内での増殖が弱く、十分なウイルスが回収できないため下部の変更がなされ、製造が遅くなってしまった。また卵の中で増殖中に抗原性に変化が見られることが指摘されている。特にH3N2型にみられる。鶏卵内で増殖したウイルスを回収して不活化しワクチンとして製造するが、予測と流行が一致していても抗原性に変化が見られるとワクチンの効果は弱まってしまう。季節性とプレパンデミックワクチンは鶏卵法で製造され、パンデミックワクチンは細胞培養法により製造される。インフルエンザおよび抗インフルエンザ薬による異常行動は、4才から19才までの男性に多く、発熱から48時間までに2/3以上が発症している。新しい抗インフルエンザ薬として、現在のウイルスの放出を止める薬剤ではなく、ウイルスの増殖を抑制する薬剤の改発が進んでいる。ファビビラビルは、ウイルスの増殖を抑える校があり、エボラ出血熱やSFTDにも効果が期待されている。催奇形性があるため妊婦には使用できず、新型インフルエンザ、再興型インフルエンザに退しての使用に制限されている。

インフルエンザの重症化の機序がほぼ解明されてきている。インフルエンザーサイトカインートリプシン/MMP-9サイクルが関与している。このサイクルは通常のインフルエンザ感染でも作動するが、重症化するとエネルギー代謝の破綻をきたしている。インフルエンザが感染すると、TNFα、IL-6、IL-1βなどのサイトカインが早期に誘導され、このサイトカインによりトリプシン/MMP-9の産生が誘導される。この中でもIL-1βが最も重要であり、IL-1βの抗体を投与するとトリプシンの産生が抑制され、炎症反応も抑制される。重症化は、サイトカインーメタボリックdisorderであり、ミトコンドリア内のエネルギー代謝に破綻をきたす。サイトカインが誘導されると、PDK4が急速に増加し、PDK4増加によりPDH活性が低下しミトコンドリア内のATP低下をきたす。PDK4阻害薬がインフルエンザの重症化予防薬のターゲットとして注目される。肝臓保護薬であるDADAがPDK4阻害活性を有し、マウスの実験では、致死率40%程度までであればATPレベルを改善し生存率100%にまで回復させている。糖代謝不全が起こると、脂質代謝を活性化してATPcrisisを回避しようとする。脂質代謝に弱点をもつ遺伝的背景のある小児の場合、重症化が急速に進みその典型がインフルエンザ脳症である。脂肪酸が細胞膜を通過するときにCTP2酵素が必要であるが、CTP2には熱不安定性遺伝子多型がみられ、高熱時に誘発される後天性CPT2欠損状態が脳浮腫を誘発するとこが証明された。血管内皮細胞はエネルギー源が100%ブドウ糖である神経組織と異なり70%を死亡に依存している。高熱時に後天性CPT2欠損状態になると血管内皮症をきたし、血管透過性亢進により脳浮腫、脳圧亢進を発症する。BezafibrateがCPT2の転写促進作用があることが見いだされ、CPT2を増やし、熱による失活を避ける解熱による治療法が有望となる。CAMは、多彩な効果を持ち合わせていて、アジュバント作用、抗炎症作用をもっている。アジュバント作用としては、一般に抗原量が減少すると抗体産生は減少するが、CAMを投与すると抗原量が減っても抗体産産生量は減少しない。インフルエンザでタミフルを投与するとIgA抗体の産生が減少し粘膜免疫の誘導が不十分となるが、CAMを予防的もしくは同時投与するとIgA産生量は減少しない。また、タミフルを使用すると免疫メモリーがつかず、翌年のインフルエンザ感染率が9%から34%に上昇するが、CAMを併用すると乾癬リンの上昇は見られない。CAMには抗炎症作用があり、単球の産生するMCP-1産生抑制を介して、MMP-9産生が低下する。血管透過性亢進による浮腫が抑制される。生体内に存在する成分の中で肺サーファクタント由来のSF-10は強いアジュバント作用を有しており、SF-10を用いた経鼻インフルエンザワクチンが開発されている。サーファクテンは新生児呼吸窮迫症候群の治療に用いられる薬剤であり、副作用の心配がなく有効性が高い。HA-SF-10による経口ワクチンも開発されている。

マイコプラズマ肺炎では、最近マクロライド耐性率が減少している。P1遺伝子型により、1型、2型、2c型があるが、1型に耐性菌が多く、最近1型が減少し、耐性菌の割合も2014年の73%をピークに34%まで低下している。マイコプラズマが感染すると気道の繊毛細胞が減少し、マイコプラズマの産生する過酸化水素により繊毛が切断され短くなる。繊毛の短縮、繊毛細胞の減少により易感染性となり肺炎球菌の混合感染を起こしやすくなる。CAMを投与すると繊毛が切断されにくくなり、混合感染の予防につながる。繊毛上皮の切断により表面に咳受容体が露出し、気道平滑筋の収縮が起こり、回復期に気管支壁の肥厚が起こり咳喘息の発症につながる。診断には現在迅速キットが使用しされ、クイックナビマイコプラズマ、リボテストマイコプラズマが多く使用されている。これにより60〜70%が診断可能である。マイコプラズマ感染で肺炎像を呈するのは20%程度であり、80%は気管支壁の肥厚きたしレントゲンでは肺血管陰影がぼやけた状態になる程度である。最近はマクロライド耐性菌が減っているが、PCRによる迅速キットが近々発売され、一般の開業医レベルでも、PCRによりマクロライド耐性があるかどうかを含めた判定ができるようになり、自信を持ってマクロライドをファーストチョイスとして使用できるようになる。マクロライド感染は咳喘息のきっかけとなる。最近咳喘息の診断が曖昧となっているが、咳嗽の発症時刻が重要であり、気管支喘息と咳喘息は早朝3〜4時頃に咳嗽で目が覚めることが多く、就寝時や起床後の咳嗽は副鼻腔由来の可能性が高い。