平成30年1月27日神戸で開催されました神戸・免疫膠原病懇話会に参加しました。
特別講演『キャッスルマン病に埋もれていた新規疾患単位〜IgG4関連疾患とTAFRO症候群〜』
キャッスルマン病は病型により形質細胞型、硝子血管型に分けられ、それぞれに単中心性、多中心性があり4つの病型に分けられる。このうち形質細胞型、多中心性の中にIgG4関連疾患が含まれていた。IgG4関連疾患は、涙腺、唾液腺、甲状腺、膵臓、胆管、後腹膜など全身至る所にIgG4産生形質細胞が浸潤する疾患である。IgG4には補体活性化能はなく、IgEのantagonistであり、IgEが増加する喘息でも上昇する。IgG4の上昇、組織への浸潤はIgG4関連疾患に特異的なものではない。唾液腺のIgG4関連疾患とシェーグレン症候群との違いは、IgG4関連疾患では上皮内への浸潤はなく、導管の閉塞をきたすことは診られないため、それぞれの組織の機能が破壊されない。血清IgG4高値と組織のIgG4免疫染色だけで診断はできない。多の疾患でもIgG4関連疾患の診断基準を満たすものが多数あり、キャッスルマン病、関節リウマチ、SLE、喘息、血管炎などがあり鑑別診断が必要である。CRP上昇、IgA高値、IgM高値、血小板増加、IL-6高値、以上のどれか一つでも満たせばIgG4関連疾患の可能性は低い。病理像のみでは診断することが難しく,臨床像をあわせて診断することが大切である。形質細胞型のキャッスルマン病では、成熟した形質細胞、ヘモジデリンの沈着が見られ、IgG4関連疾患では未熟な形質細胞が増生している。IL-6の免疫染色することで鑑別が可能である。IgG4関連疾患がまだ確立していない時代では、IgG4関連疾患がキャッスルマン病と分類され、IgG4関連疾患が確立し注目されるようになるとキャッスルマン病がIgG4関連疾患と間違って診断されていることある。5つの臨床増の中では、CRP、IgAの2項目が鑑別に重要である。好中球浸潤がIgG4関連疾患で見られることはない。
硝子血管型多中心性の中にTAFRO症候群が分類されていた。TAFRO症候群は、2010 年高井らにより Thrombocytopenia(血小板減少症), Anasarca(全身浮腫、胸腹水), Fever(発熱、全身炎症), Reticulin fibrosis(骨髄の細網線維化、骨髄巨核球増多), Organomegaly(臓器腫大; 肝脾腫、リンパ節腫大)をきたし、リンパ節生検ではキャッスルマン病様の像を呈する疾患である。濾胞周囲に血管増生が渦を巻いたようにあり、血管増生をきたす硝子血管型キャッスルマン病ににているが、キャッスルマン病では中央の血管内に硝子化が見られるが、TAFRP症候群では核のある血管が見られる。25例のTAFRO症候群の検討を行うと、骨髄は過形成髄で、巨核球集まり増加しているが重症感染症でも見られる変化であり、TAFRO症候群に特異的ではない。男女比に差はなく、急速進行性で中高年に多く、腹痛が30%にみられ、リンパ節腫大は小さい。血小板減少、胆道系酵素の上昇を伴わないALP上昇、γグロブリン正常である。iMCDではγグロブリンは上昇する。IL-6はTAFRO症候群、iMCDでも上昇するが、TAFRO症候群では病態に関与しているものではなく、反応性の上昇と考えられる。
【診断基準】
・必須項目3項目+小項目2項目以上を満たす場合TAFRO症候群と診断する。
・ただし、悪性リンパ腫などの悪性疾患を除外する必要があり、生検可能なリンパ節がある場合は、生検するべきである。
1.必須項目
①体液貯留(胸・腹水、全身性浮腫)
②血小板減少(10万/μl 未満)…治療開始前の最低値
③原因不明の発熱(37.5℃以上)または 炎症反応陽性(CRP 2 mg/dl 以上)
2.小項目
①リンパ節生検でCastleman病様(Castleman-like)の所見
②骨髄線維化(細網線維化) または 骨髄巨核球増多
③軽度の臓器腫大(肝・脾腫、リンパ節腫大)
④進行性の腎障害
病理組織は必須であり、HHV-8陰性であること。SLEでも診断基準を満たすため、臨床像だけで診断することはできない。HHV-8陰性のキャッスルマン病の中にTAFRO症候群が含まれている。
3.除外すべき疾患
①悪性腫瘍:悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、中皮腫など
②自己免疫性疾患:全身性エリテマトーデス(SLE)、ANCA関連血管炎など
③感染症:抗酸菌感染、リケッチア感染、ライム病、重症熱性血小板減少症
候群(SFTS)など
④POEMS症候群
⑤IgG4関連疾患
⑥肝硬変
⑦血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS)
病院へのアプローチで血清サイトカイン測定を行うと、IP-10のみがTAFRO症候群で上昇していた。IFN-γにより誘導されるサイトカインであるが、TAFRO症候群ではIFN-γの上昇は見られない。細菌感染ではIFN-γの上昇がなくIP-10の上昇をきたすことから、細菌感染の可能性が考えられた。75%に胆道系酵素上昇なくALP上昇をきたすことから肝臓の病理組織を見るとグリソン鞘に細胞浸潤があり、感染症に類似したパターンを示していた。30%に腹痛を認め、胆嚢炎と診断され胆嚢摘出述を受けた症例のもあることから、胆道感染症を契機に発症している可能性あるのではないかと考え、胆道組織のシークエンスを行うとCampylobacter jejuniが3例全例で確認されたが、組織内には菌体は見られなかった。Campylobacter jejuniは鶏肉にいる菌であるが、健常人の便にもたまに存在することがあり、人の胆汁中にも存在し胆嚢炎の原因菌となることがある。
キャッスルマン病はヘテロな疾患であり、新たな疾患単位IgG4関連疾患、TAFRO症候群が含まれていたが、まだまだ分かっていない疾患群が隠れ射ている可能性がある。