明けましておめでとうございます

1月4日から通常診療を開始しています。

昨年末からインフルエンザA型がかなり流行しています。発熱のある方は、インフルエンザの可能性があります。インフルエンザが重篤化するような基礎疾患(例えば肺気腫、心不全、腎不全など)のない方は、基本的には対症療法薬を使用し、自宅安静をしていただくことで自然に治癒します。インフルエンザ薬の効果としては対症療法薬よりも熱が1日程度早く下がることです。インフルエンザ薬を使用することで免疫ができず、毎年のようにインフルエンザにかかりやすくなる可能性があります。対症療法薬でしっかりと免疫をつけることも大切です。

発熱や咳嗽がある時に医療機関を受診したり、外出する時は必ずマスクを着用し、咳エチケットを守ってください。

シンポニー潰瘍性大腸炎効能追加1年講演会に参加して

10月13日神戸で開催された上記講演会に参加しました。

2018年3月に改訂された潰瘍性大腸炎治療指針もとづき、潰瘍性大腸炎の治療は、全例に5-ASA製剤を使用→ステロイドを使用→G-CAP、チオプリン製剤使用→TNFα製剤→手術

治療効果はMayoスコアにて判定する

TNFα製剤を使用するときには、単独では使用せずAZPの併用を原則とする。抗製剤抗体の産生を予防し、二次無効を防ぎ長期的な治療継続をするために併用が原則。3剤はどのように使い分けるか?
インフリキシマブ(レミケード)は投与2週目で効果が認められ、投与6週目で30%に効果あり、30%は全く効果なしとなり、投与2週でリスポンダーかノンリスポンダーかを判断できる。CyAやTAC使用歴があると効きにくい。寛解維持には、免疫調整薬の併用が必要であり、非併用では継続率が低下する。クローン病ではTNFα製剤を中止すると半数で再燃するが、潰瘍性大腸炎では寛解になると中止しても再燃しにくい。TNFα製剤を中止するとステロイド追加により改善する程度の軽度の再燃はあるが、2年以上継続していると中止しても再燃しにくい。内視鏡的Mayoスコアが0点であると中止しても86%は寛解維持できる。同じ寛解にあたる1点では再燃しやすい。6週での寛解率は59%、寛解症例での3年寛解維持率は59%、チオプリンを併用すると長期寛解が維持できる。
アダリムマブ(ヒュミラ)は4週での寛解は50%程度、CyAやTACの使用、PSL使用、インフリキシマブ一次無効は効かない。PSL非併用では寛解は70%、併用では36%。CyAとTACの使用歴があると、寛解率は14%、使用歴がないと67%。インフリキマブ一次無効では、寛解率0%であり、一次無効例の変更は無意味。クローン病では、TNFα製剤の変更で効果がある場合がみられるが、UCでは一次無効であればTNFα製剤間での変更は無意味。4年では寛解は約4人に1人。アダリムマブは活動性が高いと効果が不十分であり、増量が必要と考えられる。
ゴリムマブ(シンポニー)は寛解率は23%とやや低い。TNFα製剤の使用歴でも寛解率大きな差はなく、CyAとTACの使用歴による寛解率に差はみられない。抗ゴリムマブ抗体の発現率は2.9%と低く、抗原性制御のためチオプリンの併用が必要かどうかについては検討が必要。長期的に使用するのであればやはり必要と考えられるが、潰瘍性大腸炎ではクローン病ほど長期的な使用にならない可能性があり、併用の必要性についてはまだ確定していない。
トファチニブ(ゼルヤンツ)は寛解導入は56%、粘膜治癒率は30%と高く、TNFα製剤が無効な例でも有効性が高い。副作用として、悪性腫瘍、帯状疱疹が問題である。
ベドリズマブ(エンタイビオ)はMAd-CAM-1に対する抗体であり、腸管に浸潤するリンパ球の遊走をブロック、寛解率は早期では16.9%と低いが、1年では41.8%と徐々にあがってくる。高い長期の安全性があり、チオプリンの併用が困難、抗TNFα製剤の使用が困難などの症例には第一選択薬としての位置づけも考えられる。

抗不安薬・睡眠薬の処方について

4月からの診療報酬改定についての発表によりますと、12ヶ月以上ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬を長期にわたって継続して処方している場合に処方料が減額されることが決まりました

睡眠薬の処方頻度が高まる中、 一部の患者でみられる長期服時依存(耐性、離脱、高容量 、多剤併用 )や乱用 (加療服用など)が社会問題化しています。睡眠薬や抗不安薬が、薬物依存等の原因薬物となっており、ベンゾジアゼピン受容体作動薬が原因薬物の上位を占めていることから、厚生労働省は平成 24 年度及び 26 年度の診療報酬改定において、3 剤以上 投与時の診療報酬の減算等を導入し、睡眠薬や抗不安薬の処方の適正化を 図っているほか、向精神薬には診療報酬上の投薬期間の上限が定められて いるが、それらに加え、平成 28 年 9 月にはエチゾラム及びゾピクロンを向 精神薬(第三種向精神薬)に指定するとともに、投薬期間の上限を 30 日としています。

国の方針として、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は、薬物依存の問題、事件や事故などのトラブルの原因となったり、多数の医療機関で処方してもらい転売したりする問題が起きていることなどを受けてと思われますが、長期に使用するものではなく、短期で減量、中止していくべきものであり、新しいメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などの鎮静作用によらない睡眠薬を使用することが勧められることになると思われます。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬、睡眠薬としては、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、エバミール/ロラメット(ロルメタゼパム)、リスミー(リルマザホン)、デパス(エチゾラム)、サイレース/ロヒプノール(フルニトラゼパム)、ユーロジン(エスタゾラム)、ベンザリン/ネルボン(ニトラゼパム)、ドラール(クアゼパム)、グランダキシン(トフィソパム)、リーゼ(クロチアゼパム)、デパス(エチゾラム)、ソラナックス/コンスタン(アルプラゾラム)、レキソタン(ブロマゼパム)、セルシン/ホリゾン(ジアゼパム)、リボトリール/ランドセン(クロナゼパム)、セパゾン(クロキサゾラム)、メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)、レスタス(フルトプラゼパム)、ゾルピデム(マイスリー)、ゾピクロン(アモバン)などが挙げられます。このうち、マイスリーとアモバンは非ベゾジアゼピン系ではありますが、ベンゾジアゼピン受容体を介して作用するためにベンゾジアゼピン系に含まれます。

日本睡眠学会から睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインが作成されています。

常用量の睡眠薬を服用しても効果が 十分にない場合に、睡眠薬の多剤併 がより有効であるというエビデンスは無く、副作用リスクを低減するためにも、多剤併用はできるだけ避けるべきである。 特に、三種類以上のベンゾジアゼピン系ないし 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の併用は避けなくては いけない。

睡眠 薬を徐々に減量することで不快な症状を避けることが可能です。1 種類の睡眠薬を 4 分の 1 錠ずつ減らし、1 〜2 週間経過をみて問題がなければさらに 4 分の 1 錠減 するなど時間をかけて減量します。特に、2 錠以上服用している、2 種類以上服用している、 長期間服用している方は、 緩やかな減量が必要です。減量する睡眠薬の順番も決まっています。不眠症が治っていれば睡眠薬は減量、中止できます。睡眠薬を減量した直後は睡眠の質が悪く感 じることもありますが、多くは数日で回復します。

上記のベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬を長期間(12ヶ月以上)継続処方されている患者さんについてはメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などの鎮静作用によらない睡眠薬を積極的に使用し、徐々に減量中止していくことが求められますのでよろしくお願いいたします。

 

神戸・免疫膠原病懇話会に参加して

平成30年1月27日神戸で開催されました神戸・免疫膠原病懇話会に参加しました。

特別講演『キャッスルマン病に埋もれていた新規疾患単位〜IgG4関連疾患とTAFRO症候群〜』

キャッスルマン病は病型により形質細胞型、硝子血管型に分けられ、それぞれに単中心性、多中心性があり4つの病型に分けられる。このうち形質細胞型、多中心性の中にIgG4関連疾患が含まれていた。IgG4関連疾患は、涙腺、唾液腺、甲状腺、膵臓、胆管、後腹膜など全身至る所にIgG4産生形質細胞が浸潤する疾患である。IgG4には補体活性化能はなく、IgEのantagonistであり、IgEが増加する喘息でも上昇する。IgG4の上昇、組織への浸潤はIgG4関連疾患に特異的なものではない。唾液腺のIgG4関連疾患とシェーグレン症候群との違いは、IgG4関連疾患では上皮内への浸潤はなく、導管の閉塞をきたすことは診られないため、それぞれの組織の機能が破壊されない。血清IgG4高値と組織のIgG4免疫染色だけで診断はできない。多の疾患でもIgG4関連疾患の診断基準を満たすものが多数あり、キャッスルマン病、関節リウマチ、SLE、喘息、血管炎などがあり鑑別診断が必要である。CRP上昇、IgA高値、IgM高値、血小板増加、IL-6高値、以上のどれか一つでも満たせばIgG4関連疾患の可能性は低い。病理像のみでは診断することが難しく,臨床像をあわせて診断することが大切である。形質細胞型のキャッスルマン病では、成熟した形質細胞、ヘモジデリンの沈着が見られ、IgG4関連疾患では未熟な形質細胞が増生している。IL-6の免疫染色することで鑑別が可能である。IgG4関連疾患がまだ確立していない時代では、IgG4関連疾患がキャッスルマン病と分類され、IgG4関連疾患が確立し注目されるようになるとキャッスルマン病がIgG4関連疾患と間違って診断されていることある。5つの臨床増の中では、CRP、IgAの2項目が鑑別に重要である。好中球浸潤がIgG4関連疾患で見られることはない。

硝子血管型多中心性の中にTAFRO症候群が分類されていた。TAFRO症候群は、2010 年高井らにより Thrombocytopenia(血小板減少症), Anasarca(全身浮腫、胸腹水), Fever(発熱、全身炎症), Reticulin fibrosis(骨髄の細網線維化、骨髄巨核球増多), Organomegaly(臓器腫大; 肝脾腫、リンパ節腫大)をきたし、リンパ節生検ではキャッスルマン病様の像を呈する疾患である。濾胞周囲に血管増生が渦を巻いたようにあり、血管増生をきたす硝子血管型キャッスルマン病ににているが、キャッスルマン病では中央の血管内に硝子化が見られるが、TAFRP症候群では核のある血管が見られる。25例のTAFRO症候群の検討を行うと、骨髄は過形成髄で、巨核球集まり増加しているが重症感染症でも見られる変化であり、TAFRO症候群に特異的ではない。男女比に差はなく、急速進行性で中高年に多く、腹痛が30%にみられ、リンパ節腫大は小さい。血小板減少、胆道系酵素の上昇を伴わないALP上昇、γグロブリン正常である。iMCDではγグロブリンは上昇する。IL-6はTAFRO症候群、iMCDでも上昇するが、TAFRO症候群では病態に関与しているものではなく、反応性の上昇と考えられる。

【診断基準】
・必須項目3項目+小項目2項目以上を満たす場合TAFRO症候群と診断する。
・ただし、悪性リンパ腫などの悪性疾患を除外する必要があり、生検可能なリンパ節がある場合は、生検するべきである。

1.必須項目
①体液貯留(胸・腹水、全身性浮腫)
②血小板減少(10万/μl 未満)…治療開始前の最低値
③原因不明の発熱(37.5℃以上)または 炎症反応陽性(CRP 2 mg/dl 以上)
2.小項目
①リンパ節生検でCastleman病様(Castleman-like)の所見
②骨髄線維化(細網線維化) または 骨髄巨核球増多
③軽度の臓器腫大(肝・脾腫、リンパ節腫大)
④進行性の腎障害

病理組織は必須であり、HHV-8陰性であること。SLEでも診断基準を満たすため、臨床像だけで診断することはできない。HHV-8陰性のキャッスルマン病の中にTAFRO症候群が含まれている。

3.除外すべき疾患
①悪性腫瘍:悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、中皮腫など
②自己免疫性疾患:全身性エリテマトーデス(SLE)、ANCA関連血管炎など
③感染症:抗酸菌感染、リケッチア感染、ライム病、重症熱性血小板減少症
候群(SFTS)など
④POEMS症候群
⑤IgG4関連疾患
⑥肝硬変
⑦血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS)

病院へのアプローチで血清サイトカイン測定を行うと、IP-10のみがTAFRO症候群で上昇していた。IFN-γにより誘導されるサイトカインであるが、TAFRO症候群ではIFN-γの上昇は見られない。細菌感染ではIFN-γの上昇がなくIP-10の上昇をきたすことから、細菌感染の可能性が考えられた。75%に胆道系酵素上昇なくALP上昇をきたすことから肝臓の病理組織を見るとグリソン鞘に細胞浸潤があり、感染症に類似したパターンを示していた。30%に腹痛を認め、胆嚢炎と診断され胆嚢摘出述を受けた症例のもあることから、胆道感染症を契機に発症している可能性あるのではないかと考え、胆道組織のシークエンスを行うとCampylobacter jejuniが3例全例で確認されたが、組織内には菌体は見られなかった。Campylobacter jejuniは鶏肉にいる菌であるが、健常人の便にもたまに存在することがあり、人の胆汁中にも存在し胆嚢炎の原因菌となることがある。

キャッスルマン病はヘテロな疾患であり、新たな疾患単位IgG4関連疾患、TAFRO症候群が含まれていたが、まだまだ分かっていない疾患群が隠れ射ている可能性がある。

TAISHOTOYAMA Medical symposiumに参加して

平成30年1月6日東京で開かれましたシンポジウムに参加しました。

2017/2018のインフルエンザは、A/H1 pandemic 09、A/H3、Bヴィクトリア系、B山形系すべてが分離されている。昨年夏に、香港、台湾、オーストラリアではインフルエンザが猛威をふるい多数の死者も出ている。A/H3がほとんどで香港では238人、台湾でも135人死亡している。ウイルスのvaliantではなく、通常のH3であった。現在、ワクチンの製造は鶏卵法であるが、今回のワクチンは鶏卵内での増殖が弱く、十分なウイルスが回収できないため下部の変更がなされ、製造が遅くなってしまった。また卵の中で増殖中に抗原性に変化が見られることが指摘されている。特にH3N2型にみられる。鶏卵内で増殖したウイルスを回収して不活化しワクチンとして製造するが、予測と流行が一致していても抗原性に変化が見られるとワクチンの効果は弱まってしまう。季節性とプレパンデミックワクチンは鶏卵法で製造され、パンデミックワクチンは細胞培養法により製造される。インフルエンザおよび抗インフルエンザ薬による異常行動は、4才から19才までの男性に多く、発熱から48時間までに2/3以上が発症している。新しい抗インフルエンザ薬として、現在のウイルスの放出を止める薬剤ではなく、ウイルスの増殖を抑制する薬剤の改発が進んでいる。ファビビラビルは、ウイルスの増殖を抑える校があり、エボラ出血熱やSFTDにも効果が期待されている。催奇形性があるため妊婦には使用できず、新型インフルエンザ、再興型インフルエンザに退しての使用に制限されている。

インフルエンザの重症化の機序がほぼ解明されてきている。インフルエンザーサイトカインートリプシン/MMP-9サイクルが関与している。このサイクルは通常のインフルエンザ感染でも作動するが、重症化するとエネルギー代謝の破綻をきたしている。インフルエンザが感染すると、TNFα、IL-6、IL-1βなどのサイトカインが早期に誘導され、このサイトカインによりトリプシン/MMP-9の産生が誘導される。この中でもIL-1βが最も重要であり、IL-1βの抗体を投与するとトリプシンの産生が抑制され、炎症反応も抑制される。重症化は、サイトカインーメタボリックdisorderであり、ミトコンドリア内のエネルギー代謝に破綻をきたす。サイトカインが誘導されると、PDK4が急速に増加し、PDK4増加によりPDH活性が低下しミトコンドリア内のATP低下をきたす。PDK4阻害薬がインフルエンザの重症化予防薬のターゲットとして注目される。肝臓保護薬であるDADAがPDK4阻害活性を有し、マウスの実験では、致死率40%程度までであればATPレベルを改善し生存率100%にまで回復させている。糖代謝不全が起こると、脂質代謝を活性化してATPcrisisを回避しようとする。脂質代謝に弱点をもつ遺伝的背景のある小児の場合、重症化が急速に進みその典型がインフルエンザ脳症である。脂肪酸が細胞膜を通過するときにCTP2酵素が必要であるが、CTP2には熱不安定性遺伝子多型がみられ、高熱時に誘発される後天性CPT2欠損状態が脳浮腫を誘発するとこが証明された。血管内皮細胞はエネルギー源が100%ブドウ糖である神経組織と異なり70%を死亡に依存している。高熱時に後天性CPT2欠損状態になると血管内皮症をきたし、血管透過性亢進により脳浮腫、脳圧亢進を発症する。BezafibrateがCPT2の転写促進作用があることが見いだされ、CPT2を増やし、熱による失活を避ける解熱による治療法が有望となる。CAMは、多彩な効果を持ち合わせていて、アジュバント作用、抗炎症作用をもっている。アジュバント作用としては、一般に抗原量が減少すると抗体産生は減少するが、CAMを投与すると抗原量が減っても抗体産産生量は減少しない。インフルエンザでタミフルを投与するとIgA抗体の産生が減少し粘膜免疫の誘導が不十分となるが、CAMを予防的もしくは同時投与するとIgA産生量は減少しない。また、タミフルを使用すると免疫メモリーがつかず、翌年のインフルエンザ感染率が9%から34%に上昇するが、CAMを併用すると乾癬リンの上昇は見られない。CAMには抗炎症作用があり、単球の産生するMCP-1産生抑制を介して、MMP-9産生が低下する。血管透過性亢進による浮腫が抑制される。生体内に存在する成分の中で肺サーファクタント由来のSF-10は強いアジュバント作用を有しており、SF-10を用いた経鼻インフルエンザワクチンが開発されている。サーファクテンは新生児呼吸窮迫症候群の治療に用いられる薬剤であり、副作用の心配がなく有効性が高い。HA-SF-10による経口ワクチンも開発されている。

マイコプラズマ肺炎では、最近マクロライド耐性率が減少している。P1遺伝子型により、1型、2型、2c型があるが、1型に耐性菌が多く、最近1型が減少し、耐性菌の割合も2014年の73%をピークに34%まで低下している。マイコプラズマが感染すると気道の繊毛細胞が減少し、マイコプラズマの産生する過酸化水素により繊毛が切断され短くなる。繊毛の短縮、繊毛細胞の減少により易感染性となり肺炎球菌の混合感染を起こしやすくなる。CAMを投与すると繊毛が切断されにくくなり、混合感染の予防につながる。繊毛上皮の切断により表面に咳受容体が露出し、気道平滑筋の収縮が起こり、回復期に気管支壁の肥厚が起こり咳喘息の発症につながる。診断には現在迅速キットが使用しされ、クイックナビマイコプラズマ、リボテストマイコプラズマが多く使用されている。これにより60〜70%が診断可能である。マイコプラズマ感染で肺炎像を呈するのは20%程度であり、80%は気管支壁の肥厚きたしレントゲンでは肺血管陰影がぼやけた状態になる程度である。最近はマクロライド耐性菌が減っているが、PCRによる迅速キットが近々発売され、一般の開業医レベルでも、PCRによりマクロライド耐性があるかどうかを含めた判定ができるようになり、自信を持ってマクロライドをファーストチョイスとして使用できるようになる。マクロライド感染は咳喘息のきっかけとなる。最近咳喘息の診断が曖昧となっているが、咳嗽の発症時刻が重要であり、気管支喘息と咳喘息は早朝3〜4時頃に咳嗽で目が覚めることが多く、就寝時や起床後の咳嗽は副鼻腔由来の可能性が高い。

明けましておめでとうございます

年始は1月4日から診療を開始しています。

インフルエンザが流行しています。今年度は、最初からA型とB型が流行しています。

人混みへの外出はできるだけ控え、風邪症状がみられた場合は咳エチケットを励行してください。

医療機関を受診するときは必ずマスク着用をお願いします。

骨粗鬆症&関節リウマチセミナーに参加して

9月12日(火)加古川で開催されました「骨粗鬆症&関節リウマチセミナー」に参加しました。

骨粗鬆症の薬物治療に関する最新の話題

非椎体骨折の評価はしっかりとしたものではなくあてにならない。椎体骨折、大腿骨近位部骨折の予防効果として信頼できるのは上記表のAのみであり、Bは海外ではCにあたるものである。オールAであるのは、アレンドロン酸、リセドロン酸、デノスマブ、ゾレドロン酸の4剤のみである。テリパラチドは大腿骨近位部骨折に関してのデータがないためCである。閉経後女性の骨粗鬆症については、個々の大腿骨近位部骨折のリスク評価をして治療を選択することが勧められているが、日本ではFRAXのカットオフ値が設定されていないためできない。70才以上では、椎体骨折、大腿骨近位部骨折の両方の予防を考えるため、上記の4剤しか適応にならない。70才未満では、椎体骨折の予防を第一に考え、ビスフォスフォネート、SERM、エルデカルシトール、デノスマブ、高リスクであればテリパラチドを選択する。他剤に関しては併用以外では効果期待できない。男性の骨粗鬆症については、日本ではデータはなく、米国でのデータでは、フォルテオ>ゾレドロン酸>リセドロン酸>アレドロン酸の順で効果がある。

ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインでは、ステロイド7.5mg 、3ヶ月以上使用する場合は必ず一次予防が必要である。第一選択薬としては、アレドロン酸、リセドロン酸のみである。ステロイド性骨粗鬆症のデータがあるのがこの2剤である。代替薬として、テリパラチド、イバンドロネート、アルファカルシドール、カルシトリオールがあるが、第一選択としては使用できず、後2者は有効性に乏しい。

乳癌に対するアロマターゼ阻害薬、前立腺癌に対するホルモン療法においても骨粗鬆症が起こりやすいため一次予防が必要であり、ビスフォスフォネートとデノスマブがあげられるが、データがあるのはデノスマブのみ。薬剤の比較、特にデノスマブとテリパラチドの比較では、椎体骨折では、フォルテオ>プラリア>ゾレドロン酸>アレンドロン酸の順で有効であるが、大腿骨骨折では、フォルテオは4番目となる。フォルテオは海面骨に対する効果が高い。デノスマブは10年間骨密度があがりつづけ、2〜3年ではビスフォスフォネートとあまり差がなくても、長期使用するとデノスマブが優位である。骨吸収抑制剤は、骨吸収を抑制するが、骨形成も抑制する。テリパラチドは、骨形成をあげるが、骨吸収もあげるため、骨吸収が骨形成を上まるのが2年が限界。副作用としてあげられる、顎骨壊死と非定型大腿骨折があるが、新しく開発されているRomisozumabは骨形成をあげ、骨吸収を下げるため、1年で骨密度が著明に上がるが、1年で顎骨壊死も発生する。顎骨壊死は以前考えられていたような機序によるものではないと思われる。ビスフォスフォネートの使用については、リスクとベネフィットを天秤にかけて評価すべき。海外ではあまり顎骨壊死は問題とされておらず、骨折予防効果を高く評価している。歯科の抜歯に関しては、原則は予防休薬を行わずに実施し、抜歯前から抗菌薬を投与し、術後は骨膜を含む口腔粘膜で閉鎖する。オランダでは、この方法で顎骨壊死がほとんどなくなった。デノスマブは原則として休薬は行わず、半減期が1ヶ月であるため、注射後3ヶ月頃に抜歯するようにする。ゾレドロン酸では投与量が非常に多いため、20〜30%で顎骨壊死が発生する。口腔外科で抜歯すると顎骨壊死は10分の1に減少する。神戸大学調査では、ビスフォスフォネートを休薬しても、休薬しなくても顎骨壊死の発生率は変わらない。顎骨壊死の第一の原因は細菌感染であり、開放創にしないことが大切である。骨粗鬆症薬にて治療中に骨折した場合、治療薬が効果がないとは限らない。治療薬による骨折予防効果は50%程度であり、骨折は起こりえる。骨代謝マーカーをみて効果があれば、継続するかさらに強力な薬剤に変更すべきである。骨吸収薬を先に使用している場合は、その後フォルテオを使用しても効果は十分にはでない。フォルテオを使用すると、皮質骨の中に走る穴を大きくしてしまい、強度が低下して骨折しやすくなる。フォルテオは使用には注意が必要であり、高齢者に使用すると大腿骨頸部骨折のリスクをあげる可能性がある。大腿骨近位部骨折の予防としての第一選択薬はデノスマブである。デノスマブ使用後に、テリパラチドを使用すると骨密度だけでなく、骨強度も低下している。保健適応はないが、併用するのがよい。デノスマブが関節リウマチの骨びらん進行抑制に適応が追加となった騰、MTX等を使用しても骨びらんの進行がある症例が対象である。骨吸収抑制薬である、ゾレドロン酸や経口ビスフォスフォネートは効果認めなかった。骨粗鬆症においても、T2Tの考えに基づいてゴールを設定して治療方針を決定しないといけない。治療にて骨折リスクを上回る治療効果が出た場合には休薬を検討することができるが、ビスフォスフォネート以外の薬剤は、中止するとすぐに効果がなくなってしまうため休薬を検討するのはビスフォスフォネートのみである。デノスマブを急に中止すると、強力な骨吸収抑制がとれてオーバーシュートしてしまうため、急に中止するのはよくない。経口ビスフォスフォネート製剤をしばらく使用するのがいい?ビスフォスフォネートは中止してもしばらく骨にとどまっているため、すぐに骨折が増えることはないと思われていたが、中止後6ヶ月以内に骨折が増加するため、休薬については注意が必要。

日常診療で診る静脈血栓症の診断と治療に参加して

9月9日(土)に行われました日常診療で診る静脈血栓症の診断と治療に参加しました。

DOACの登場により静脈血栓症の治療が向上し、注目を浴びるようになってきた。静脈血栓症(VTE)は、肺塞栓症(PTE)と深部静脈血栓症(DVT)をあわせたものである。DVTの80%は無症候性で、50%にPTEを合併するため早期発見が必要である。近年死亡原因としてPTEが増加しているが、高齢化にも伴うものもあるが、診断能の向上によると思われる。DVTが発生部位により、腸骨型、大腿型、下腿型に分けられる。下腿型は主に血流うっ滞である。特に下腿のヒラメ筋のヒラメ静脈が最も血栓ができやすい。血栓には閉塞性血栓とフリーフロート血栓があり、閉塞性血栓は浮腫、痛みが出現し早期発見しやすいが、フリーフロート血栓は症状ができにくく発見が遅れ、PTEを発症しやすく危険である。VTEのリスクファクターとして、肥満、ねたきり、手術、がんなどが挙げられる。誘発因子としては、血流障害、凝固能亢進、血管内皮障害がある。 VTEを診断するためには、まず疑うことが大切である。DVTは、下腿浮腫、疼痛などがあり片側性であれば可能性が高く、Dダイマーが高値であればさらに可能性が高い。PTEにみられる症状は、呼吸苦、胸痛などであるが、20%に失神があり、失神患者を診たらPTEも鑑別診断としてあげなければいけない。PTEの診断には、以前から胸部レントゲンや心電図などが挙げられているが、感度が低く、Dダイマーは血栓の存在を示唆する検査であり、感度は非常に高いが、特異度が低い。したがって、呼吸苦があり、Dダイマーが高いからPTEであるとは言えないが、Dダイマーが正常であれば、PTEは否定できる。

 

静脈疾患をエコーで診る

静脈圧は体位により容易に変動するため、観察する体位が大切である。浮腫をきたす機序には静脈圧の上昇による侵出とアルブミン低下などによる浸透圧低下による漏出がある。逆流を診るためには、座位か立位にして観察する必要がある。下腿で静脈を観察する場合、主幹血管や神経は筋膜間を走行するため、まず筋膜を探すと血管を見つけることができる。下腿では、後脛骨静脈、腓骨静脈、前脛骨静脈、ヒラメ静脈を観察する。DVTの緊急観察では、prximal CUS(大腿静脈、膝窩静脈を観察)を実施し、陽性であれば治療開始。proximal CUSが有用でないのは、下腿腫脹がなくDダイマーが高値、下腿の疼痛があり肺塞栓症を疑う場合などであり、この場合は、ヒラメ静脈に注意して下腿も観察する。PTEでは、83.3%にヒラメ静脈に血栓が診られる。

Psoriatic Arthritis & IL17A Forumに参加して

6月10日(土)大阪で開催されましたPsoriatic Arthritis & IL17A Forumに参加しました

乾癬は日本で約42万人、その内関節症性乾癬(PsA)はリウマチ医では14.3%、皮膚科医では10%と報告されており、日本で約5〜6万人と推定される。このうち体軸性病変を有するのは約30%。PsAの発症パターンとして、皮膚先行84%、関節症状先行3.1%、同時発症12.7%。PsAの診断は2006年に提唱されたCASPAR分類基準に基づいて実施する

乾癬性関節炎の分類基準(CASPAR) (2006年)

(感度98.7%、特異度91.4%)

炎症性の関節疾患(関節炎、脊椎炎、もしくは付着部炎)を有する方で、下記の各項目を1点として3点以上の場合に乾癬性関節炎と分類(診断)します:

  1. 現在乾癬にかかっている*、または過去に乾癬があった、
    または兄弟姉妹や両親、祖父母に乾癬の方がいる
  2. 典型的な乾癬の爪病変(爪剥離症、陥凹、過角化)がある
  3. リウマトイド因子という血液検査が陰性
  4. 指全体が腫れる指炎がある(あった)
  5. 手、足のX線検査で特徴的な所見(関節近傍の新骨形成)がある

*現在乾癬にかかっている場合は2点とします。

乾癬の既往、家族歴、典型的な爪病変(点状陥凹、爪剥離、過角化)、リウマトイド因子陰性、指炎、レントゲンでの関節近傍の骨新生像にて評価する。皮疹については、頭部、臀部などが診断しやすく、脂漏性湿疹との違いは、生え際を超えるかどうかである。鑑別診断としては、RA、OA、AS等があげられ、PsAは関節付着部に炎症があることが特徴である。死因では、心血管疾患が一般の1.6〜1.8倍と効率であり、メタボリックシンドロームを呈することがあり、Psoriatic marchと呼ばれている。抗CCP抗体が陽性となることがある。

IL-17Aが乾癬に関与しており、阻害するセクキヌマブが有効。IL-17Aは自閉症でも上昇している。IL-17の産生細胞はTh17だけではなく、γδTcell、NKTcell、Mastcellなどもあり、感染制御、腸管のバリアなどに関与している。特にブドウ球菌や大腸菌に関係している。IL-17阻害薬は結核菌感染増加には影響せず、潜在性感染の再活性化もきたさない。メリットとしては、皮膚病変に効果が高く、関節病変にも効果あり、MTXの併用は必要ない。デメリットしては、IBDの悪化、カンジダ感染、自殺企図、注射部位反応などがある。

感染は皮膚の炎症性角化症であり、アトピーは瘢痕を残すが、感染の皮診はリモデリングを起こさず治癒し、皮膚病変は可逆的である。QOLも可逆的である。皮膚病変の治療として、MTXが現在未承認であるが公知申請中。TNF阻害薬、IL-12/23阻害薬、IL17A阻害薬、IL-17受容体抗体、ステロイド/ビタミンD3合剤外用薬、PDE4阻害薬、シクロスポリンなどが使用可能である。短期的にはシクロスポリンはかゆみには効果があり、150mg/日で投与、チガソン10mg/日を投与して、効果がなければPDE4阻害薬(アプレミラスト)に変更。bioを使用する前に、PDE4阻害薬を使用していることが多い。

ルミセフは関節炎には効果なく、ステラーラも関節炎にはあまり効果ない。コセンティクス、トルツは関節炎にも効果あり。

第14回阪神RA研究会に参加して

5月27日に大阪で開催されました阪神RA研究会に参加しました。

『関節リウマチの最新治療戦略とPrecision medicine』

Precision medicineとは、オバマ氏が提唱したもので、個別化医療とことなり、遺伝子、環境、ライススタイルなどの特徴を考慮し革新的な手法により個別化医療を実現するための医療である。日本語訳としては精密医療であり、癌の領域で活発に進められている。標準的関節リウマチ治療の指針としては、昨年EULRAが改訂版を発表。2010年との違いは、MTXの禁忌がなければ、MTX単独で治療開始、ステロイドの短期併用を積極的に考慮する。DMARD他剤併用は必ずしも効果が高くなく、継続率も高くなかった。COBRA試験でMTX+ステロイド併用と他剤併用にステロイドを併用しても差がなかったことが証明。6ヶ月後のphase2では、JAK 阻害薬が、bDMARDと同等に格上げされたが、現時点としては、まずはバイオを勧め、JAK阻害薬その次に考慮されている。活動性の評価方法としては、エコー、MRI、サーモグラフィーなどがあげられるが、エコー評価とconventional tight control 群で比較したARCTEC studyでは2群間に差はなく、まだエコーでモニターするのは時期尚早である。MTXは内服しても腸内細菌の状態により吸収が個々に異なっている。MTXの皮下注製剤であれば安定した細胞内濃度を保つことができる。MAGIK studyで、MTX-PG濃度測定を評価すると<20では治療効果期待できないレベル、20〜60中間域、>60治療域であることが判明。日本人は少量のMTXで効果があるが、実際にMTX-PGを測定すると、欧米人よりもMTX-PG濃度が60%程高いことがわかった。体重よりも、BMIがMTX-PG濃度に影響する。BMI<18.5、18.5〜25、>25と分けると、>25は欧米人とほぼ同じ、BMIが低いと50%程度MTX濃度が上昇する。MTXの肝障害が観られる場合は、MTX-PG濃度が高い、BMIが低いと肝障害が多い。ただ、MTX-PG濃度が高くても肝障害が起こらない人もいる。発症後4週までにバイオで治療を開始すると1年後の寛解率は85%に達する。日本の発症後0.3年の治療開始では寛解はせいぜい30%止まり。では、どのバイオが治療反応性がよいかを予測できるか?今までのバイオマーカーでは予想できない。ADACTAstudyでは、有効な予測因子としてリンパ球系<顆粒球系であればアダリムマブが有効、リンパ球系>顆粒球系であればアクテムラが有効。ただ、有効性が予測できるのはたかだか25%である。遺伝子チップだけでは予測できず、ゲノムを調べても、mRNAを調べてもだめである。バイオの選択には役立たないが、治療量を決定することは、投与前のTNF濃度を測定することにより、治療量を考えることはできる。RF、抗CCP抗体ダブルポジティブであればTNF血中の度は高いことが多い。レミケードのトラフ値1μg以上であれば有効であり、レミケード血中濃度が1μ以上かを判定できるレミチェックQがまもなく使用できるようになる。アクテムラにおいては、投与間隔を延ばせる人が18%、3週間隔に縮めると効果がある人が7%ある。IL-6とsIL-6Rを測定し、IL-6/sIL-6Rレベルが重要である。ともに、高値となるGr2が最も治療に手強く、Gr1とGr3はレミッションに入りやすい。TNF、IL-6、sIL-6Rは現在測定可能であり、1年後の関節破壊マーカーとなっている。

第16回関西膠原病フォーラムに参加して

平成29年3月25日 京都で開催されました第16回関西膠原病フォーラムに参加しました。

免疫状態における肝炎ウイルス対策

免疫抑制状態により、ウイルスは増殖、肝炎は抑制されるためこのバランスで病態が決まる。様々な免疫抑制剤に注意書きがあるが、リツキシマブ、ステロイド、フラタラビンの3つが明らかにHBV再活性化を起こしやすい。

ポイント① スクリーニングでHBc抗体を測定する。HCV抗体陽性であれば、HCV-RNAを測定し陰性であれば既感染。HBVでは、HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体どれかが陽性であれば、キャリアか既感染であり、HBV-DNA(リルタイムPCR)を測定する。

ポイント② C型肝炎は単純であり根治可能。肝線維化が一定速度で慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌と進み、線維化の程度が血小板数で推測できるため癌の発生率も推測できる。HCV感染者の約30%はウイルスが完全に排除され治癒にいたる。HCV抗体陽性、HCV-RNA陰性であれば治癒と判断し放置可。基本的にRNAウイルスは根治できるが、DNAウイルス(HBV、CMV、EBV、HSV、HPV)は根治できず、生涯潜伏感染になる。C型肝炎は、DAAの登場により,根治可能となった。SVR24が達成できれば根治したと判断。

ポイント③ C型肝炎は免疫抑制状態となってもほとんど何も起こらない。HCV陽性例にRA治療などの免疫抑制治療をしても悪化はほとんどなく、MTX長期使用しても肝硬変への進展はむしろ少なくなる。腎移植でも予後に変化なし。HCV陽性でも、免疫抑制剤の減量は不要である。

ポイント④ HCV陽性例は、DAA治療により2剤耐性ウイルスがでており、併用禁忌薬(アミオダロン、Ca拮抗薬など)も多いため専門医を紹介することを勧める

ポイント⑤ B型肝炎は複雑で根治できない。一過性感染は約90%で治癒する。1〜2%死亡。5才未満に感染すると持続感染となり、ほとんどが非活動性キャリアとなる。一部は慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌となるが、どの段階からでも急速に肝硬変になったり、肝細胞癌が発生する。最近はジェノタイプAにより、成人感染でも10%程度慢性化する。HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体の有無により未感染、既感染、持続感染の3つに分けられる。HBVはウイルス量と病勢が相関し、HBV-DNA 4.0未満であれば肝炎が発症することはなく、肝酵素が上昇していてもHBV-DNA<4.0であれば、HBV以外の原因を考える。

ポイント⑥ HBVキャリアの免疫抑制状態ではエンテカビルの予防投与を実施する。20〜50%が活性化し、再活性化の死亡率が急性肝炎の死亡率よりも高いため、予防投与が必要である。免疫抑制治療を開始し、徐々にHBVが増加し、治療中止による免疫回復時に肝炎が発症する。ウイスルが増加し、肝炎が発症するのに最短でも12週の余裕があるため、HBV-DNAを1〜3ヶ月毎にフォローし、2.1となればエンテカビルの予防投与を開始すれば間に合う。慌てて免疫抑制剤を中止しないように、中止すると急速に肝炎が発症する。

ポイント⑦ HBV既感染は肝内ウイスル潜伏状態である。肝移植時に初めて確認された。HBc抗体陽性のドナーから肝移植を行うと、レシピエントは100%B型肝炎発症した。それまでは、術前のHBs抗原陰性を確認しており、術者や輸血からの感染も疑われたが、HBc抗体陽性者の肝細胞内にはウイスルが残っており、複製もしている。自己の免疫により、ウイスルを押さえ込んでいるが、レシピエントはHBVに対する免疫をもっていないため100%発症する。

ポイント⑧ HBV既感染では、HBV-DNAを定期的にフォローする。ウイルスの再活性化は2〜5%程度、免疫抑制治療開始すると、まずHBV-DNAが陽性となり、その後HBs抗原陽性となる。肝炎発症までには最短でも12週間の余裕があり、フォローの期間としては1〜3ヶ月となっている。免疫治療開始後ほとんどが6ヶ月以内に再活性化がおこっているため、治療開始6ヶ月以内は1ヶ月毎に、6ヶ月以降は3ヶ月毎にフォローするのがよい。HBV-DNA2.1未満であれば1ヶ月後に再検、2.1となればエンテカビル予防投与開始、4.0以上となればすぐに専門医紹介。エンテカビルの予防投与は、一度でもHBV-DNAが陽性となっていれば保健適応となる。

ステロイドは、0.5mg/kgを2週間以上継続する場合は免疫抑制治療と考えスクリーニングが必要

 

皮膚筋炎〜自己抗体からの新しい診かた〜

抗ARS抗体、抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1抗体の4つの抗体により診断に活用する。ADM、CADMは例外ではなく、DMの約30%は初診時にはCADMであり、そのうち1/3がclassic DMに移行する。皮膚筋炎は、筋炎の軸と間質性肺炎の軸により考えるとよい。PMは抗SRP抗体、抗HMGCK抗体、DMは抗Mi2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1抗体、抗ARS抗体、抗NXP2抗体、抗SAE抗体、ILDの合併に抗ARS抗体、Overlapは抗U1RNP抗体、抗Ku抗体、抗Pm-Scl抗体。皮疹はヘリオトロープ疹とゴットロン丘疹が有名。ヘリオトロープ疹は、鼻根部、鼻翼のまわりにもでる。ゴットロン丘疹は、爪周紅斑、爪上皮出血点、手指の側面や屈側にも出現、角化性変化主体、炎症性変化主体、血管障害主体の変化あり。逆ゴットロンは手指屈側に鉄棒まめ様とよばれる皮疹で、抗MDA5抗体陽性と関連。メカニックハンドは手指側面がかさかさになり抗ARS抗体と関連。派手なゴットロン丘疹は抗TIF1抗体と関連。皮膚筋炎の抗体は疾患特異性の高い抗体である。約75%で自己抗体が陽性となり、抗体による診断が有用である。抗ARS抗体19%、抗Mi2抗体8%、抗MDA5抗体18%、抗TIF1抗体31%、核抗体は、特徴的な臨床像と強く相関している。

抗ARS抗体は、Jo-1、PL-7、PL-12、EJ、KSを併せて測定している。抗ARS抗体症候群と呼ばれ、間質性肺炎はほぼ必発、慢性が多く再燃しやすい。ただし2〜3%は急速進行する。筋炎は再燃を繰り返す(Jo1、EJ、PL-7)。皮疹は非定型的で、レイノー現象、手指腫脹、メカニックハンドなど。特発性間質性肺炎と診断された6.6%に抗ARS抗体陽性例が見つかっており、皮疹がなくても関節性肺炎で抗ARS抗体症候群を疑う必要あり

抗Mi2抗体は、定型的DM、CK高値となることが多い。抗核抗体高力価で4桁となることが多い。皮疹は軽い。間質性肺炎も少ない。

抗MDA5抗体は、急速進行性間質性肺炎と強い相関がある。CADMが77%と多く、23%がclassic DM。逆ゴットロン疹、血管損傷性の皮疹、滲出性紅斑などの皮疹で、関節炎がしばしばある。間質性肺炎は93%に合併し、以前は48%が6ヶ月以内に死亡していた。抗MDA5抗体、フェリチンが病勢と相関する。

抗TIF1抗体は、悪性腫瘍合併と小児筋炎。成人では、悪性腫瘍合併が約70%、間質性肺炎はなく、広範囲の浮腫性の皮疹、ゴットロン丘疹、水疱性皮疹など皮疹が派手。嚥下障害と関連がある。40才以上では70%に悪性腫瘍の合併があり、CKは正常から1000程度と低いことが多い。CK高値となると悪性腫瘍の合併が多い。1年間は悪性腫瘍のフォローアップが必要。抗Mi2抗体陽性の場合、TIF1との相同性の関係で、抗TIF1抗体も陽性となることがあるため、抗TIF1抗体陽性であれば、抗Mi2抗体が陰性であることを確認する必要あり。

抗体陰性例には、抗ARS抗体のうちOJに対する抗体は測定できていない。抗NXP2抗体は、2〜30%にみられ、特に小児のDMの20〜30%にみられる。切開沈着と関連し、成人で悪性腫瘍と関連がある。筋炎症状が強い。小児では、抗TIF1抗体、抗NXP2抗体が多い。抗SAE抗体は、2〜6%でみられ、嚥下障害と関連あり。抗TIF1β抗体単独陽性は、抗核抗体高力価陽性、等の例が含まれる。

 

第9回経鼻内視鏡研究会in兵庫に参加して

3月4日 神戸で開催されました経鼻内視鏡研究会in兵庫に参加しました

経鼻内視鏡による新しい胃観察法−早期胃癌発見を目指して−

胃内視鏡検査では、偽陰性を減らすこと大切であり、特に接線方向になる後壁、小弯が盲点になりやすい。経鼻内視鏡は先端硬性部が短いため小回りがききやすく、右ターン左アングル、左ターン右アングルをかけることにより、小弯や後壁を正面視することができるため、経口内視鏡よりも病変の見落としが少ない。空気量の調整をして、体下部後壁は見下ろしで空気を抜きながら観察すると正面視しやすくなる。LCI(Linled Color Imaging)は赤を色調により強調をかけ、濃い赤はより濃く、薄い赤はより薄くすることで炎症性の病変を観察しやすくなる。高分化腺癌は赤いことが多く、未分化癌は白色調であり、LCIを用いることで、高分化腺癌、未分化癌の広い上げがしやすくなる。

経口内視鏡観察困難例を数例提示されていました。経鼻内視鏡にて発見できたO-IIcの微小早期癌をESD治療目的にて紹介をすると、紹介先では発見できないためESDができないと言われた症例を呈示された。生検後に紹介されており、生検による正常粘膜の被覆により分からなくなる症例、最初陥凹型でも治療時には平坦型になっているため発見しにくい症例経口でも接近すると分かる症例はいままでにもいわれているため、必ずしも経鼻では分かるが経口では発見できないとまでは言い切れないと思われる。

東神戸リウマチ性疾患連携の会に参加して

3月4日 神戸で開催されました東神戸リウマチ性疾患連携の会に参加しました。

脊椎関節炎には、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ブドウ膜炎関連関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、分類不能の関節炎等が含まれ、HLA-B27と関連があり、診断後にもオー場ラップしたり、移動したりすることがあり脊椎関節炎としてまとめられている。

①体軸性関節炎 炎症性腰痛症 安静時に悪化し運動にて軽快する。全腰痛の約15%を占め脊椎関節炎に特徴的であるが、15%は別の疾患である。

②末梢性関節炎 下肢に優位な関節炎

③付着部炎(enthesis)アキレス腱や足底腱膜の付着部に後発

④指炎(dactylits)ソーセージ様の手指、足趾の腫脹、付着部炎によるもの

強直性脊椎炎は古くからあるNew York criteria用いられていたが、早期診断には感度が低い。レントゲンでの仙腸関節炎が含まれているが、レントゲンに変化があわれるのは10年近くかかるため、診断が遅れてしまう。1990年にAmor criteriaが作成され、ASに限らず脊椎関節炎として分類し、反応性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、HLA-B27も加えられている。点数化しているため簡便性に欠けており、炎症性腰痛症と末梢性滑膜炎をもとに、他の脊椎関節炎の有無を確認するESSG criteriaが作成された。その後、MRIが診断に有用であることが示され、2009年にASASにより体軸性関節炎、2011年に末梢性脊椎関節炎の分類基準が作成された。診分類基準では、感度83%、特異度84%とバランスがとれており早期診断ができるようになった。

治療では、ASにはNSAIDが有効であり、まず最初に処方されるべき薬剤である。CRPが高いと効果が高く、骨病変の進行を予防する効果があり、継続的に服用することにより骨化を遅らせることができる。末梢性病変にはアザルフィジンが有効。TNF阻害薬は40%程度有効であり、若く、早期なほど有効性が高い。TNF阻害薬の効果に関連性があるのは、CRP、HLA-B27である。non radiographic axial SpAでは60%以上有効である。ただし、安易な使用は避けるべきであり、骨化の進行しやすい症例に使用すべきである。活動性指標であるASDASが高いと骨病変が進行する。炎症反応、喫煙があると進行しやすい。

兵庫肝疾患連携フォーラムに参加して

肝癌は以前はC型肝炎から発生するのがほとんどであったが、最近では40%近くが非B非Cによるものになっている。糖尿病患者さんの3人に一人は癌で亡くなり、肝癌がもっと多く、次いで膵臓癌、大腸癌である。

C型肝炎では空腹時のインスリン値が高く、これは他の肝疾患よりも高く、HCVウイルスがインスリンのシグナル伝達を阻害するためである。インスリン抵抗性が高いと肝癌の発生が高くなる。肝硬変患者では、膵臓のランゲルハンス島が増大し、インスリンの合成分泌も多くなっている。インスリンには血糖を下げる作用と細胞増殖作用があり、増殖ホルモンとしての作用を持っている。膵臓から分泌されたインスリンは門脈から肝臓をまず通るため、肝臓は高濃度のインスリンにさらされているため、インスリン分泌が多いと肝臓癌になりやすい。

肝癌患者では、インスリン抵抗性が強いと予後が悪く、肝癌の分化度が低くなる。NASHから発生する肝癌では、最初から中分化や低分化の癌が発生する。C型肝炎では、インスリン抵抗性が高いと、ウイルスを駆除した後の肝癌の発生が高くなる。

糖尿病があると脂肪肝からの肝癌発生頻度が高くなる。NAFLDの0.25%に肝癌が発生するが、糖尿病合併のない患者さんからは肝癌の発生がなく、糖尿病を合併していると注意が必要。

アルコール性脂肪肝以外の脂肪肝をNAFLDと分類され、最近では薬剤誘発性NAFLDが問題となっている。脂肪肝をきたす薬剤としては、アミオダロン、タモキシフェン、MTX、リュープレリン、カルマバゼピン、バルプロ酸など。

PNPLA3は唯一NAFLDに関与する遺伝子であり、リパーゼ活性を促進させて、脂肪を分解する蛋白をコードする遺伝子である。肥満もない方で高度の脂肪肝がある場合にみられるが、現在では測定できないため診断できない。

NAFLDの自然経過は、4-8%/yがNASHに移行し、その0.8-1.6%/yがNASH肝硬変に進展し、その0.1-0.2%/yに肝癌が発生する。HCVより癌の発生頻度は少ないが、ベースのNAFLDの患者数が非常に多いため、肝癌の発生数も多くなる。

NASHになっているかどうかは、最近では生検をしない非侵襲的な評価で判定する。

Fib-4 Index  (年齢xAST)/(血小板x(ALT)1/2)

Fib4が2を超えるとNASHの可能性あり。

血液検査で肝線維化の程度を表すM2BPGiが1を超えると線維化があると判断

Fibroscanで肝臓の高度を測定する

この3つの方法で1つでも陽性であれば、肝癌の発生頻度が高くなるため通常のC型肝炎に準じたフォローアップが必要である。

脂肪肝での肝臓の硬さが硬くなると予後不良となる、HbA1c<6.3であれば肝線維化はほとんどない。

有酸素運動とレジスタンス運度ではどちらも脂肪肝に効果がある。有酸素運動はぽっちゃりした男性で効果がある。できれば1回40分、週3回実施すると効果がある。体重減少がなくても運動をすると脂肪肝は改善する。筋肉量が増えなくても、インスリン抵抗性は改善する。運動すると筋肉でマイオカインと呼ばれるサイトカインが産生され、湖の変化がインスリン抵抗性に関与している。レジスタンス運動の方が、マイオカインが多く産生されるため、まずレジスタンス運動をしてから、有酸素運動をすると効果的である。

分枝鎖アミノ酸BCAAは、ロイシンが筋肉細胞を増殖させる作用があり、運動後の筋肉痛が起こりにくい。BCAAは発がん抑制効果がある。BCAAは筋肉内で作用し、肥満やインスリン抵抗性に関与する肝癌の発生を抑制する。カルニチンや亜鉛は肝臓内でアンモニア産生を抑制する。

インスリン分泌作用のあるSU剤は肝癌の発生を誘発する。メトホルミンは肝癌を抑制し、ピオグリタゾンは、BMI24以上の人で肝癌の発生を抑制する。

肝細胞癌ではDPP4の発現が亢進しており、糖尿病治療薬のDPP4阻害薬が機序は不明であるが、肝癌の発生を抑制する。

膵臓癌では、SGLT-2が高発現しており、がん細胞の糖の取込に関与しており、SGLT2阻害薬にて膵臓癌での糖の取込を抑制して癌を死滅させる。

 

C型肝炎の治療薬として、新しくでているソホスブビルは、現在インターフェロンフリー治療薬としていくつかある中で、他の蛋白阻害薬とは違い、唯一チェーンターミネーター薬である。蛋白阻害剤では、蛋白の鋳型にしっかりとはまる薬剤がつくりにくく、ジェノタイプI型とII型で蛋白も異なるため両方に効果があることはなく、遺伝子変異があると蛋白の立体構造が変化するため効果がなくなる。ソホスブビルはウイルスの塩基配列内に取り込まれ、ウイルスRNA伸長反応を停止させ鎖を断ち切ってしまう作用があり、ジェノタイプに関係なく効果があり、ジェノタイプI型ではSVR100%であり、II型でも98%程度ある。

ウイルスが消えても2.4%で肝癌の発生があり、AFP、ALP-L3が発がんの評価に有効である。ウイルスが消失すると、AFPは低下するが、AFPが低下しないものから発がんみられる。PIVKA-IIも同じような効果があるが、特異度が低い。腹部エコーにて肝再生結節があると肝癌が発生しやすい。