骨粗鬆症&関節リウマチセミナーに参加して

9月12日(火)加古川で開催されました「骨粗鬆症&関節リウマチセミナー」に参加しました。

骨粗鬆症の薬物治療に関する最新の話題

非椎体骨折の評価はしっかりとしたものではなくあてにならない。椎体骨折、大腿骨近位部骨折の予防効果として信頼できるのは上記表のAのみであり、Bは海外ではCにあたるものである。オールAであるのは、アレンドロン酸、リセドロン酸、デノスマブ、ゾレドロン酸の4剤のみである。テリパラチドは大腿骨近位部骨折に関してのデータがないためCである。閉経後女性の骨粗鬆症については、個々の大腿骨近位部骨折のリスク評価をして治療を選択することが勧められているが、日本ではFRAXのカットオフ値が設定されていないためできない。70才以上では、椎体骨折、大腿骨近位部骨折の両方の予防を考えるため、上記の4剤しか適応にならない。70才未満では、椎体骨折の予防を第一に考え、ビスフォスフォネート、SERM、エルデカルシトール、デノスマブ、高リスクであればテリパラチドを選択する。他剤に関しては併用以外では効果期待できない。男性の骨粗鬆症については、日本ではデータはなく、米国でのデータでは、フォルテオ>ゾレドロン酸>リセドロン酸>アレドロン酸の順で効果がある。

ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインでは、ステロイド7.5mg 、3ヶ月以上使用する場合は必ず一次予防が必要である。第一選択薬としては、アレドロン酸、リセドロン酸のみである。ステロイド性骨粗鬆症のデータがあるのがこの2剤である。代替薬として、テリパラチド、イバンドロネート、アルファカルシドール、カルシトリオールがあるが、第一選択としては使用できず、後2者は有効性に乏しい。

乳癌に対するアロマターゼ阻害薬、前立腺癌に対するホルモン療法においても骨粗鬆症が起こりやすいため一次予防が必要であり、ビスフォスフォネートとデノスマブがあげられるが、データがあるのはデノスマブのみ。薬剤の比較、特にデノスマブとテリパラチドの比較では、椎体骨折では、フォルテオ>プラリア>ゾレドロン酸>アレンドロン酸の順で有効であるが、大腿骨骨折では、フォルテオは4番目となる。フォルテオは海面骨に対する効果が高い。デノスマブは10年間骨密度があがりつづけ、2〜3年ではビスフォスフォネートとあまり差がなくても、長期使用するとデノスマブが優位である。骨吸収抑制剤は、骨吸収を抑制するが、骨形成も抑制する。テリパラチドは、骨形成をあげるが、骨吸収もあげるため、骨吸収が骨形成を上まるのが2年が限界。副作用としてあげられる、顎骨壊死と非定型大腿骨折があるが、新しく開発されているRomisozumabは骨形成をあげ、骨吸収を下げるため、1年で骨密度が著明に上がるが、1年で顎骨壊死も発生する。顎骨壊死は以前考えられていたような機序によるものではないと思われる。ビスフォスフォネートの使用については、リスクとベネフィットを天秤にかけて評価すべき。海外ではあまり顎骨壊死は問題とされておらず、骨折予防効果を高く評価している。歯科の抜歯に関しては、原則は予防休薬を行わずに実施し、抜歯前から抗菌薬を投与し、術後は骨膜を含む口腔粘膜で閉鎖する。オランダでは、この方法で顎骨壊死がほとんどなくなった。デノスマブは原則として休薬は行わず、半減期が1ヶ月であるため、注射後3ヶ月頃に抜歯するようにする。ゾレドロン酸では投与量が非常に多いため、20〜30%で顎骨壊死が発生する。口腔外科で抜歯すると顎骨壊死は10分の1に減少する。神戸大学調査では、ビスフォスフォネートを休薬しても、休薬しなくても顎骨壊死の発生率は変わらない。顎骨壊死の第一の原因は細菌感染であり、開放創にしないことが大切である。骨粗鬆症薬にて治療中に骨折した場合、治療薬が効果がないとは限らない。治療薬による骨折予防効果は50%程度であり、骨折は起こりえる。骨代謝マーカーをみて効果があれば、継続するかさらに強力な薬剤に変更すべきである。骨吸収薬を先に使用している場合は、その後フォルテオを使用しても効果は十分にはでない。フォルテオを使用すると、皮質骨の中に走る穴を大きくしてしまい、強度が低下して骨折しやすくなる。フォルテオは使用には注意が必要であり、高齢者に使用すると大腿骨頸部骨折のリスクをあげる可能性がある。大腿骨近位部骨折の予防としての第一選択薬はデノスマブである。デノスマブ使用後に、テリパラチドを使用すると骨密度だけでなく、骨強度も低下している。保健適応はないが、併用するのがよい。デノスマブが関節リウマチの骨びらん進行抑制に適応が追加となった騰、MTX等を使用しても骨びらんの進行がある症例が対象である。骨吸収抑制薬である、ゾレドロン酸や経口ビスフォスフォネートは効果認めなかった。骨粗鬆症においても、T2Tの考えに基づいてゴールを設定して治療方針を決定しないといけない。治療にて骨折リスクを上回る治療効果が出た場合には休薬を検討することができるが、ビスフォスフォネート以外の薬剤は、中止するとすぐに効果がなくなってしまうため休薬を検討するのはビスフォスフォネートのみである。デノスマブを急に中止すると、強力な骨吸収抑制がとれてオーバーシュートしてしまうため、急に中止するのはよくない。経口ビスフォスフォネート製剤をしばらく使用するのがいい?ビスフォスフォネートは中止してもしばらく骨にとどまっているため、すぐに骨折が増えることはないと思われていたが、中止後6ヶ月以内に骨折が増加するため、休薬については注意が必要。

日常診療で診る静脈血栓症の診断と治療に参加して

9月9日(土)に行われました日常診療で診る静脈血栓症の診断と治療に参加しました。

DOACの登場により静脈血栓症の治療が向上し、注目を浴びるようになってきた。静脈血栓症(VTE)は、肺塞栓症(PTE)と深部静脈血栓症(DVT)をあわせたものである。DVTの80%は無症候性で、50%にPTEを合併するため早期発見が必要である。近年死亡原因としてPTEが増加しているが、高齢化にも伴うものもあるが、診断能の向上によると思われる。DVTが発生部位により、腸骨型、大腿型、下腿型に分けられる。下腿型は主に血流うっ滞である。特に下腿のヒラメ筋のヒラメ静脈が最も血栓ができやすい。血栓には閉塞性血栓とフリーフロート血栓があり、閉塞性血栓は浮腫、痛みが出現し早期発見しやすいが、フリーフロート血栓は症状ができにくく発見が遅れ、PTEを発症しやすく危険である。VTEのリスクファクターとして、肥満、ねたきり、手術、がんなどが挙げられる。誘発因子としては、血流障害、凝固能亢進、血管内皮障害がある。 VTEを診断するためには、まず疑うことが大切である。DVTは、下腿浮腫、疼痛などがあり片側性であれば可能性が高く、Dダイマーが高値であればさらに可能性が高い。PTEにみられる症状は、呼吸苦、胸痛などであるが、20%に失神があり、失神患者を診たらPTEも鑑別診断としてあげなければいけない。PTEの診断には、以前から胸部レントゲンや心電図などが挙げられているが、感度が低く、Dダイマーは血栓の存在を示唆する検査であり、感度は非常に高いが、特異度が低い。したがって、呼吸苦があり、Dダイマーが高いからPTEであるとは言えないが、Dダイマーが正常であれば、PTEは否定できる。

 

静脈疾患をエコーで診る

静脈圧は体位により容易に変動するため、観察する体位が大切である。浮腫をきたす機序には静脈圧の上昇による侵出とアルブミン低下などによる浸透圧低下による漏出がある。逆流を診るためには、座位か立位にして観察する必要がある。下腿で静脈を観察する場合、主幹血管や神経は筋膜間を走行するため、まず筋膜を探すと血管を見つけることができる。下腿では、後脛骨静脈、腓骨静脈、前脛骨静脈、ヒラメ静脈を観察する。DVTの緊急観察では、prximal CUS(大腿静脈、膝窩静脈を観察)を実施し、陽性であれば治療開始。proximal CUSが有用でないのは、下腿腫脹がなくDダイマーが高値、下腿の疼痛があり肺塞栓症を疑う場合などであり、この場合は、ヒラメ静脈に注意して下腿も観察する。PTEでは、83.3%にヒラメ静脈に血栓が診られる。

Psoriatic Arthritis & IL17A Forumに参加して

6月10日(土)大阪で開催されましたPsoriatic Arthritis & IL17A Forumに参加しました

乾癬は日本で約42万人、その内関節症性乾癬(PsA)はリウマチ医では14.3%、皮膚科医では10%と報告されており、日本で約5〜6万人と推定される。このうち体軸性病変を有するのは約30%。PsAの発症パターンとして、皮膚先行84%、関節症状先行3.1%、同時発症12.7%。PsAの診断は2006年に提唱されたCASPAR分類基準に基づいて実施する

乾癬性関節炎の分類基準(CASPAR) (2006年)

(感度98.7%、特異度91.4%)

炎症性の関節疾患(関節炎、脊椎炎、もしくは付着部炎)を有する方で、下記の各項目を1点として3点以上の場合に乾癬性関節炎と分類(診断)します:

  1. 現在乾癬にかかっている*、または過去に乾癬があった、
    または兄弟姉妹や両親、祖父母に乾癬の方がいる
  2. 典型的な乾癬の爪病変(爪剥離症、陥凹、過角化)がある
  3. リウマトイド因子という血液検査が陰性
  4. 指全体が腫れる指炎がある(あった)
  5. 手、足のX線検査で特徴的な所見(関節近傍の新骨形成)がある

*現在乾癬にかかっている場合は2点とします。

乾癬の既往、家族歴、典型的な爪病変(点状陥凹、爪剥離、過角化)、リウマトイド因子陰性、指炎、レントゲンでの関節近傍の骨新生像にて評価する。皮疹については、頭部、臀部などが診断しやすく、脂漏性湿疹との違いは、生え際を超えるかどうかである。鑑別診断としては、RA、OA、AS等があげられ、PsAは関節付着部に炎症があることが特徴である。死因では、心血管疾患が一般の1.6〜1.8倍と効率であり、メタボリックシンドロームを呈することがあり、Psoriatic marchと呼ばれている。抗CCP抗体が陽性となることがある。

IL-17Aが乾癬に関与しており、阻害するセクキヌマブが有効。IL-17Aは自閉症でも上昇している。IL-17の産生細胞はTh17だけではなく、γδTcell、NKTcell、Mastcellなどもあり、感染制御、腸管のバリアなどに関与している。特にブドウ球菌や大腸菌に関係している。IL-17阻害薬は結核菌感染増加には影響せず、潜在性感染の再活性化もきたさない。メリットとしては、皮膚病変に効果が高く、関節病変にも効果あり、MTXの併用は必要ない。デメリットしては、IBDの悪化、カンジダ感染、自殺企図、注射部位反応などがある。

感染は皮膚の炎症性角化症であり、アトピーは瘢痕を残すが、感染の皮診はリモデリングを起こさず治癒し、皮膚病変は可逆的である。QOLも可逆的である。皮膚病変の治療として、MTXが現在未承認であるが公知申請中。TNF阻害薬、IL-12/23阻害薬、IL17A阻害薬、IL-17受容体抗体、ステロイド/ビタミンD3合剤外用薬、PDE4阻害薬、シクロスポリンなどが使用可能である。短期的にはシクロスポリンはかゆみには効果があり、150mg/日で投与、チガソン10mg/日を投与して、効果がなければPDE4阻害薬(アプレミラスト)に変更。bioを使用する前に、PDE4阻害薬を使用していることが多い。

ルミセフは関節炎には効果なく、ステラーラも関節炎にはあまり効果ない。コセンティクス、トルツは関節炎にも効果あり。

第14回阪神RA研究会に参加して

5月27日に大阪で開催されました阪神RA研究会に参加しました。

『関節リウマチの最新治療戦略とPrecision medicine』

Precision medicineとは、オバマ氏が提唱したもので、個別化医療とことなり、遺伝子、環境、ライススタイルなどの特徴を考慮し革新的な手法により個別化医療を実現するための医療である。日本語訳としては精密医療であり、癌の領域で活発に進められている。標準的関節リウマチ治療の指針としては、昨年EULRAが改訂版を発表。2010年との違いは、MTXの禁忌がなければ、MTX単独で治療開始、ステロイドの短期併用を積極的に考慮する。DMARD他剤併用は必ずしも効果が高くなく、継続率も高くなかった。COBRA試験でMTX+ステロイド併用と他剤併用にステロイドを併用しても差がなかったことが証明。6ヶ月後のphase2では、JAK 阻害薬が、bDMARDと同等に格上げされたが、現時点としては、まずはバイオを勧め、JAK阻害薬その次に考慮されている。活動性の評価方法としては、エコー、MRI、サーモグラフィーなどがあげられるが、エコー評価とconventional tight control 群で比較したARCTEC studyでは2群間に差はなく、まだエコーでモニターするのは時期尚早である。MTXは内服しても腸内細菌の状態により吸収が個々に異なっている。MTXの皮下注製剤であれば安定した細胞内濃度を保つことができる。MAGIK studyで、MTX-PG濃度測定を評価すると<20では治療効果期待できないレベル、20〜60中間域、>60治療域であることが判明。日本人は少量のMTXで効果があるが、実際にMTX-PGを測定すると、欧米人よりもMTX-PG濃度が60%程高いことがわかった。体重よりも、BMIがMTX-PG濃度に影響する。BMI<18.5、18.5〜25、>25と分けると、>25は欧米人とほぼ同じ、BMIが低いと50%程度MTX濃度が上昇する。MTXの肝障害が観られる場合は、MTX-PG濃度が高い、BMIが低いと肝障害が多い。ただ、MTX-PG濃度が高くても肝障害が起こらない人もいる。発症後4週までにバイオで治療を開始すると1年後の寛解率は85%に達する。日本の発症後0.3年の治療開始では寛解はせいぜい30%止まり。では、どのバイオが治療反応性がよいかを予測できるか?今までのバイオマーカーでは予想できない。ADACTAstudyでは、有効な予測因子としてリンパ球系<顆粒球系であればアダリムマブが有効、リンパ球系>顆粒球系であればアクテムラが有効。ただ、有効性が予測できるのはたかだか25%である。遺伝子チップだけでは予測できず、ゲノムを調べても、mRNAを調べてもだめである。バイオの選択には役立たないが、治療量を決定することは、投与前のTNF濃度を測定することにより、治療量を考えることはできる。RF、抗CCP抗体ダブルポジティブであればTNF血中の度は高いことが多い。レミケードのトラフ値1μg以上であれば有効であり、レミケード血中濃度が1μ以上かを判定できるレミチェックQがまもなく使用できるようになる。アクテムラにおいては、投与間隔を延ばせる人が18%、3週間隔に縮めると効果がある人が7%ある。IL-6とsIL-6Rを測定し、IL-6/sIL-6Rレベルが重要である。ともに、高値となるGr2が最も治療に手強く、Gr1とGr3はレミッションに入りやすい。TNF、IL-6、sIL-6Rは現在測定可能であり、1年後の関節破壊マーカーとなっている。

第16回関西膠原病フォーラムに参加して

平成29年3月25日 京都で開催されました第16回関西膠原病フォーラムに参加しました。

免疫状態における肝炎ウイルス対策

免疫抑制状態により、ウイルスは増殖、肝炎は抑制されるためこのバランスで病態が決まる。様々な免疫抑制剤に注意書きがあるが、リツキシマブ、ステロイド、フラタラビンの3つが明らかにHBV再活性化を起こしやすい。

ポイント① スクリーニングでHBc抗体を測定する。HCV抗体陽性であれば、HCV-RNAを測定し陰性であれば既感染。HBVでは、HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体どれかが陽性であれば、キャリアか既感染であり、HBV-DNA(リルタイムPCR)を測定する。

ポイント② C型肝炎は単純であり根治可能。肝線維化が一定速度で慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌と進み、線維化の程度が血小板数で推測できるため癌の発生率も推測できる。HCV感染者の約30%はウイルスが完全に排除され治癒にいたる。HCV抗体陽性、HCV-RNA陰性であれば治癒と判断し放置可。基本的にRNAウイルスは根治できるが、DNAウイルス(HBV、CMV、EBV、HSV、HPV)は根治できず、生涯潜伏感染になる。C型肝炎は、DAAの登場により,根治可能となった。SVR24が達成できれば根治したと判断。

ポイント③ C型肝炎は免疫抑制状態となってもほとんど何も起こらない。HCV陽性例にRA治療などの免疫抑制治療をしても悪化はほとんどなく、MTX長期使用しても肝硬変への進展はむしろ少なくなる。腎移植でも予後に変化なし。HCV陽性でも、免疫抑制剤の減量は不要である。

ポイント④ HCV陽性例は、DAA治療により2剤耐性ウイルスがでており、併用禁忌薬(アミオダロン、Ca拮抗薬など)も多いため専門医を紹介することを勧める

ポイント⑤ B型肝炎は複雑で根治できない。一過性感染は約90%で治癒する。1〜2%死亡。5才未満に感染すると持続感染となり、ほとんどが非活動性キャリアとなる。一部は慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌となるが、どの段階からでも急速に肝硬変になったり、肝細胞癌が発生する。最近はジェノタイプAにより、成人感染でも10%程度慢性化する。HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体の有無により未感染、既感染、持続感染の3つに分けられる。HBVはウイルス量と病勢が相関し、HBV-DNA 4.0未満であれば肝炎が発症することはなく、肝酵素が上昇していてもHBV-DNA<4.0であれば、HBV以外の原因を考える。

ポイント⑥ HBVキャリアの免疫抑制状態ではエンテカビルの予防投与を実施する。20〜50%が活性化し、再活性化の死亡率が急性肝炎の死亡率よりも高いため、予防投与が必要である。免疫抑制治療を開始し、徐々にHBVが増加し、治療中止による免疫回復時に肝炎が発症する。ウイスルが増加し、肝炎が発症するのに最短でも12週の余裕があるため、HBV-DNAを1〜3ヶ月毎にフォローし、2.1となればエンテカビルの予防投与を開始すれば間に合う。慌てて免疫抑制剤を中止しないように、中止すると急速に肝炎が発症する。

ポイント⑦ HBV既感染は肝内ウイスル潜伏状態である。肝移植時に初めて確認された。HBc抗体陽性のドナーから肝移植を行うと、レシピエントは100%B型肝炎発症した。それまでは、術前のHBs抗原陰性を確認しており、術者や輸血からの感染も疑われたが、HBc抗体陽性者の肝細胞内にはウイスルが残っており、複製もしている。自己の免疫により、ウイスルを押さえ込んでいるが、レシピエントはHBVに対する免疫をもっていないため100%発症する。

ポイント⑧ HBV既感染では、HBV-DNAを定期的にフォローする。ウイルスの再活性化は2〜5%程度、免疫抑制治療開始すると、まずHBV-DNAが陽性となり、その後HBs抗原陽性となる。肝炎発症までには最短でも12週間の余裕があり、フォローの期間としては1〜3ヶ月となっている。免疫治療開始後ほとんどが6ヶ月以内に再活性化がおこっているため、治療開始6ヶ月以内は1ヶ月毎に、6ヶ月以降は3ヶ月毎にフォローするのがよい。HBV-DNA2.1未満であれば1ヶ月後に再検、2.1となればエンテカビル予防投与開始、4.0以上となればすぐに専門医紹介。エンテカビルの予防投与は、一度でもHBV-DNAが陽性となっていれば保健適応となる。

ステロイドは、0.5mg/kgを2週間以上継続する場合は免疫抑制治療と考えスクリーニングが必要

 

皮膚筋炎〜自己抗体からの新しい診かた〜

抗ARS抗体、抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1抗体の4つの抗体により診断に活用する。ADM、CADMは例外ではなく、DMの約30%は初診時にはCADMであり、そのうち1/3がclassic DMに移行する。皮膚筋炎は、筋炎の軸と間質性肺炎の軸により考えるとよい。PMは抗SRP抗体、抗HMGCK抗体、DMは抗Mi2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1抗体、抗ARS抗体、抗NXP2抗体、抗SAE抗体、ILDの合併に抗ARS抗体、Overlapは抗U1RNP抗体、抗Ku抗体、抗Pm-Scl抗体。皮疹はヘリオトロープ疹とゴットロン丘疹が有名。ヘリオトロープ疹は、鼻根部、鼻翼のまわりにもでる。ゴットロン丘疹は、爪周紅斑、爪上皮出血点、手指の側面や屈側にも出現、角化性変化主体、炎症性変化主体、血管障害主体の変化あり。逆ゴットロンは手指屈側に鉄棒まめ様とよばれる皮疹で、抗MDA5抗体陽性と関連。メカニックハンドは手指側面がかさかさになり抗ARS抗体と関連。派手なゴットロン丘疹は抗TIF1抗体と関連。皮膚筋炎の抗体は疾患特異性の高い抗体である。約75%で自己抗体が陽性となり、抗体による診断が有用である。抗ARS抗体19%、抗Mi2抗体8%、抗MDA5抗体18%、抗TIF1抗体31%、核抗体は、特徴的な臨床像と強く相関している。

抗ARS抗体は、Jo-1、PL-7、PL-12、EJ、KSを併せて測定している。抗ARS抗体症候群と呼ばれ、間質性肺炎はほぼ必発、慢性が多く再燃しやすい。ただし2〜3%は急速進行する。筋炎は再燃を繰り返す(Jo1、EJ、PL-7)。皮疹は非定型的で、レイノー現象、手指腫脹、メカニックハンドなど。特発性間質性肺炎と診断された6.6%に抗ARS抗体陽性例が見つかっており、皮疹がなくても関節性肺炎で抗ARS抗体症候群を疑う必要あり

抗Mi2抗体は、定型的DM、CK高値となることが多い。抗核抗体高力価で4桁となることが多い。皮疹は軽い。間質性肺炎も少ない。

抗MDA5抗体は、急速進行性間質性肺炎と強い相関がある。CADMが77%と多く、23%がclassic DM。逆ゴットロン疹、血管損傷性の皮疹、滲出性紅斑などの皮疹で、関節炎がしばしばある。間質性肺炎は93%に合併し、以前は48%が6ヶ月以内に死亡していた。抗MDA5抗体、フェリチンが病勢と相関する。

抗TIF1抗体は、悪性腫瘍合併と小児筋炎。成人では、悪性腫瘍合併が約70%、間質性肺炎はなく、広範囲の浮腫性の皮疹、ゴットロン丘疹、水疱性皮疹など皮疹が派手。嚥下障害と関連がある。40才以上では70%に悪性腫瘍の合併があり、CKは正常から1000程度と低いことが多い。CK高値となると悪性腫瘍の合併が多い。1年間は悪性腫瘍のフォローアップが必要。抗Mi2抗体陽性の場合、TIF1との相同性の関係で、抗TIF1抗体も陽性となることがあるため、抗TIF1抗体陽性であれば、抗Mi2抗体が陰性であることを確認する必要あり。

抗体陰性例には、抗ARS抗体のうちOJに対する抗体は測定できていない。抗NXP2抗体は、2〜30%にみられ、特に小児のDMの20〜30%にみられる。切開沈着と関連し、成人で悪性腫瘍と関連がある。筋炎症状が強い。小児では、抗TIF1抗体、抗NXP2抗体が多い。抗SAE抗体は、2〜6%でみられ、嚥下障害と関連あり。抗TIF1β抗体単独陽性は、抗核抗体高力価陽性、等の例が含まれる。

 

第9回経鼻内視鏡研究会in兵庫に参加して

3月4日 神戸で開催されました経鼻内視鏡研究会in兵庫に参加しました

経鼻内視鏡による新しい胃観察法−早期胃癌発見を目指して−

胃内視鏡検査では、偽陰性を減らすこと大切であり、特に接線方向になる後壁、小弯が盲点になりやすい。経鼻内視鏡は先端硬性部が短いため小回りがききやすく、右ターン左アングル、左ターン右アングルをかけることにより、小弯や後壁を正面視することができるため、経口内視鏡よりも病変の見落としが少ない。空気量の調整をして、体下部後壁は見下ろしで空気を抜きながら観察すると正面視しやすくなる。LCI(Linled Color Imaging)は赤を色調により強調をかけ、濃い赤はより濃く、薄い赤はより薄くすることで炎症性の病変を観察しやすくなる。高分化腺癌は赤いことが多く、未分化癌は白色調であり、LCIを用いることで、高分化腺癌、未分化癌の広い上げがしやすくなる。

経口内視鏡観察困難例を数例提示されていました。経鼻内視鏡にて発見できたO-IIcの微小早期癌をESD治療目的にて紹介をすると、紹介先では発見できないためESDができないと言われた症例を呈示された。生検後に紹介されており、生検による正常粘膜の被覆により分からなくなる症例、最初陥凹型でも治療時には平坦型になっているため発見しにくい症例経口でも接近すると分かる症例はいままでにもいわれているため、必ずしも経鼻では分かるが経口では発見できないとまでは言い切れないと思われる。

東神戸リウマチ性疾患連携の会に参加して

3月4日 神戸で開催されました東神戸リウマチ性疾患連携の会に参加しました。

脊椎関節炎には、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ブドウ膜炎関連関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、分類不能の関節炎等が含まれ、HLA-B27と関連があり、診断後にもオー場ラップしたり、移動したりすることがあり脊椎関節炎としてまとめられている。

①体軸性関節炎 炎症性腰痛症 安静時に悪化し運動にて軽快する。全腰痛の約15%を占め脊椎関節炎に特徴的であるが、15%は別の疾患である。

②末梢性関節炎 下肢に優位な関節炎

③付着部炎(enthesis)アキレス腱や足底腱膜の付着部に後発

④指炎(dactylits)ソーセージ様の手指、足趾の腫脹、付着部炎によるもの

強直性脊椎炎は古くからあるNew York criteria用いられていたが、早期診断には感度が低い。レントゲンでの仙腸関節炎が含まれているが、レントゲンに変化があわれるのは10年近くかかるため、診断が遅れてしまう。1990年にAmor criteriaが作成され、ASに限らず脊椎関節炎として分類し、反応性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、HLA-B27も加えられている。点数化しているため簡便性に欠けており、炎症性腰痛症と末梢性滑膜炎をもとに、他の脊椎関節炎の有無を確認するESSG criteriaが作成された。その後、MRIが診断に有用であることが示され、2009年にASASにより体軸性関節炎、2011年に末梢性脊椎関節炎の分類基準が作成された。診分類基準では、感度83%、特異度84%とバランスがとれており早期診断ができるようになった。

治療では、ASにはNSAIDが有効であり、まず最初に処方されるべき薬剤である。CRPが高いと効果が高く、骨病変の進行を予防する効果があり、継続的に服用することにより骨化を遅らせることができる。末梢性病変にはアザルフィジンが有効。TNF阻害薬は40%程度有効であり、若く、早期なほど有効性が高い。TNF阻害薬の効果に関連性があるのは、CRP、HLA-B27である。non radiographic axial SpAでは60%以上有効である。ただし、安易な使用は避けるべきであり、骨化の進行しやすい症例に使用すべきである。活動性指標であるASDASが高いと骨病変が進行する。炎症反応、喫煙があると進行しやすい。

兵庫肝疾患連携フォーラムに参加して

肝癌は以前はC型肝炎から発生するのがほとんどであったが、最近では40%近くが非B非Cによるものになっている。糖尿病患者さんの3人に一人は癌で亡くなり、肝癌がもっと多く、次いで膵臓癌、大腸癌である。

C型肝炎では空腹時のインスリン値が高く、これは他の肝疾患よりも高く、HCVウイルスがインスリンのシグナル伝達を阻害するためである。インスリン抵抗性が高いと肝癌の発生が高くなる。肝硬変患者では、膵臓のランゲルハンス島が増大し、インスリンの合成分泌も多くなっている。インスリンには血糖を下げる作用と細胞増殖作用があり、増殖ホルモンとしての作用を持っている。膵臓から分泌されたインスリンは門脈から肝臓をまず通るため、肝臓は高濃度のインスリンにさらされているため、インスリン分泌が多いと肝臓癌になりやすい。

肝癌患者では、インスリン抵抗性が強いと予後が悪く、肝癌の分化度が低くなる。NASHから発生する肝癌では、最初から中分化や低分化の癌が発生する。C型肝炎では、インスリン抵抗性が高いと、ウイルスを駆除した後の肝癌の発生が高くなる。

糖尿病があると脂肪肝からの肝癌発生頻度が高くなる。NAFLDの0.25%に肝癌が発生するが、糖尿病合併のない患者さんからは肝癌の発生がなく、糖尿病を合併していると注意が必要。

アルコール性脂肪肝以外の脂肪肝をNAFLDと分類され、最近では薬剤誘発性NAFLDが問題となっている。脂肪肝をきたす薬剤としては、アミオダロン、タモキシフェン、MTX、リュープレリン、カルマバゼピン、バルプロ酸など。

PNPLA3は唯一NAFLDに関与する遺伝子であり、リパーゼ活性を促進させて、脂肪を分解する蛋白をコードする遺伝子である。肥満もない方で高度の脂肪肝がある場合にみられるが、現在では測定できないため診断できない。

NAFLDの自然経過は、4-8%/yがNASHに移行し、その0.8-1.6%/yがNASH肝硬変に進展し、その0.1-0.2%/yに肝癌が発生する。HCVより癌の発生頻度は少ないが、ベースのNAFLDの患者数が非常に多いため、肝癌の発生数も多くなる。

NASHになっているかどうかは、最近では生検をしない非侵襲的な評価で判定する。

Fib-4 Index  (年齢xAST)/(血小板x(ALT)1/2)

Fib4が2を超えるとNASHの可能性あり。

血液検査で肝線維化の程度を表すM2BPGiが1を超えると線維化があると判断

Fibroscanで肝臓の高度を測定する

この3つの方法で1つでも陽性であれば、肝癌の発生頻度が高くなるため通常のC型肝炎に準じたフォローアップが必要である。

脂肪肝での肝臓の硬さが硬くなると予後不良となる、HbA1c<6.3であれば肝線維化はほとんどない。

有酸素運動とレジスタンス運度ではどちらも脂肪肝に効果がある。有酸素運動はぽっちゃりした男性で効果がある。できれば1回40分、週3回実施すると効果がある。体重減少がなくても運動をすると脂肪肝は改善する。筋肉量が増えなくても、インスリン抵抗性は改善する。運動すると筋肉でマイオカインと呼ばれるサイトカインが産生され、湖の変化がインスリン抵抗性に関与している。レジスタンス運動の方が、マイオカインが多く産生されるため、まずレジスタンス運動をしてから、有酸素運動をすると効果的である。

分枝鎖アミノ酸BCAAは、ロイシンが筋肉細胞を増殖させる作用があり、運動後の筋肉痛が起こりにくい。BCAAは発がん抑制効果がある。BCAAは筋肉内で作用し、肥満やインスリン抵抗性に関与する肝癌の発生を抑制する。カルニチンや亜鉛は肝臓内でアンモニア産生を抑制する。

インスリン分泌作用のあるSU剤は肝癌の発生を誘発する。メトホルミンは肝癌を抑制し、ピオグリタゾンは、BMI24以上の人で肝癌の発生を抑制する。

肝細胞癌ではDPP4の発現が亢進しており、糖尿病治療薬のDPP4阻害薬が機序は不明であるが、肝癌の発生を抑制する。

膵臓癌では、SGLT-2が高発現しており、がん細胞の糖の取込に関与しており、SGLT2阻害薬にて膵臓癌での糖の取込を抑制して癌を死滅させる。

 

C型肝炎の治療薬として、新しくでているソホスブビルは、現在インターフェロンフリー治療薬としていくつかある中で、他の蛋白阻害薬とは違い、唯一チェーンターミネーター薬である。蛋白阻害剤では、蛋白の鋳型にしっかりとはまる薬剤がつくりにくく、ジェノタイプI型とII型で蛋白も異なるため両方に効果があることはなく、遺伝子変異があると蛋白の立体構造が変化するため効果がなくなる。ソホスブビルはウイルスの塩基配列内に取り込まれ、ウイルスRNA伸長反応を停止させ鎖を断ち切ってしまう作用があり、ジェノタイプに関係なく効果があり、ジェノタイプI型ではSVR100%であり、II型でも98%程度ある。

ウイルスが消えても2.4%で肝癌の発生があり、AFP、ALP-L3が発がんの評価に有効である。ウイルスが消失すると、AFPは低下するが、AFPが低下しないものから発がんみられる。PIVKA-IIも同じような効果があるが、特異度が低い。腹部エコーにて肝再生結節があると肝癌が発生しやすい。

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。

新年は1月4日(水)より通常の診療を開始します。

インフルエンザが流行しています。手洗い、マスクをして感染予防に努めてください。

医療機関を受診されるときは『咳エチケット』を励行し、他の方への感染拡大防止にご協力お願いいたします。

本年もよろしくお願いいたします。

第1回加古川リウマチカンファレンスに参加して

11月24日第1回加古川リウマチカンファレンスに参加しました

関節リウマチの診断と治療〜抗CCP抗体の意義とMTXの効果を中心に〜

Larsen GradeIII以上の関節破壊が進行した荷重関節では治療が奏功していても関節破壊が進行するため、早期発見早期治療が大切である。

抗CCP抗体は、アルギニンがシトルリンに変換した自己蛋白に対する自己抗体であり健常なほ乳類にはシトルリン化蛋白はほとんど存在せずRAに特異的である。早期RAで出現し発症を予測できる。抗CCP抗体陽性例は関節破壊が進行しやすい。

抗CCP抗体の陽性群を低値と高値に分けて関節破壊の進行度をΔTSSで比較したところ、高値群と低値群で関節破壊の進行に差はなくtiterには相関しない。ACPA、RFの陽性陰性にて骨びらんの進行を比較すると、ACPA陽性ではRFの陽性陰性に関係なくACPA陰性よりも骨びらんが進み、ACPA陰性例では、RF陽性の方が陰性よりも骨びらんが進行した。

献血ドナーでRAを発症した患者の保存血で発症前の抗CCP抗体の有無を調べると、発症5年以上前に25%、1.5年前に52%が陽性であり、抗CCP抗体は発症前から陽性となり、titerも高くなり発症予測ができる。

ACPAをマウスの脛骨に作用させると破骨細胞が誘導され骨吸収が亢進して骨粗鬆症をきたす。ACPA抗体が高値であると、骨密度が低下する。

RAでは抗CCP抗体の他に抗カルバミル化抗体がみられ、RAの45%に陽性である。抗カルバミル化蛋白抗体は発症前から陽性となりRA発症を予測できるが、陽性例では関節破壊が進みにくい傾向がある。

MMP-3は滑膜細胞に豊富に発現し、関節炎での滑膜増殖と破壊された軟骨成分を測定し、関節破壊の予知マーカーとなる。MMP-3を正常化することを目標に治療を強化すると、構造的寛解を達成しやすい。血清MMP-3が103.7以下であると関節破壊が進行しにくい。MTX開始前に、MMP-3が103.7以上の例は、3〜6ヶ月後に前値より低下しなければ、CRRP以上の関節破壊をきたす可能性が高い。

RAの治療はMTXがアンカードラッグであり、第一選択薬として開始し、約40〜50%が構造的寛解を達成する。関節リウマチの患者の腸内細菌をみた報告では、RAにのみPrevotella属の細菌がみられ、健常者では全くみられず、Provotella copriが大半を占めていた。

平成28年度新型インフルエンザの診療と対策に関する研修に参加して

平成28年11月6日東京で開催されました上記研修会に参加しました

  1. 新型インフルエンザワクチンの現状と課題について

2009年パンデミックウイルスは、  1977年からのソ連型のH1N1と共通抗原。日本では、入院率、死亡率ともに世界的に低かった。高齢者65才以上では、患者が少なく残存免疫の可能性が考えられた。 国産ワクチン1回接種と2回接種であまり抗体価の上昇に変化なしパンデミックワクチンは13才以上では1回接種で抗体価上昇あり。過去の季節性A/H1N1ウイルスの感染により免疫記憶あり。

インフルエンザワクチンの効果発現

不活化ワクチンでは粘膜免疫はできない。プライミングされているとワクチンは1回でよい

新型インフルエンザ等対策ガイドライン

パンデミックワクチン備蓄。平成18年度から、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス株のプレパンデミックワクチンを、毎年約1000万人分製造し、平成24年度から54万人分を備蓄。現在、チンハイ株(約1000万人分)、ベトナム株・インドネシア株(約1000万人分)、アンフィ株(約1000万人分)。 全国民分のワクチン製造に鶏卵培養法では1年半から2年かかるため、細胞培養法により約半年で製造できるように生産体制の整備を実施

  1. 診断と治療:重症(肺炎合併)例を中心とした新型インフルエンザ診療

合併症のハイリスク群

65才以上、慢性呼吸器疾患、心血管疾患、慢性肝・腎・血液・代謝疾患、神経筋疾患、免疫抑制状態、長期療養施設入所者、著しい肥満、アスピリン長期服用、担癌患者、妊婦

タミフルは48時間以内の下気道合併症を44%減少。タミルフルは入院リスクを63%減少

インフルエンザ治療の原則

発症後48時間以内に開始すると治療効果が最大となる。ハイリスク群では可能な限り抗ウイルス治療を開始することが推奨。肺炎を合併した新型インフルエンザには、原発性インフルエンザウイルス肺炎(急速に進行し呼吸不全となることが多い)、ウイルス細菌混合性肺炎( 肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌感染が多い)。 治療は『成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン』に基づいて実施。ノイラミニダーゼ阻害薬の使用アルゴリズムにもとづき薬剤選択

  1. 新型インフルエンザ対策について

鳥インフルエンザ(H5N1)はエジプト、インドネシアで発生が多い、鳥インフルエンザ(H7N9)は持続的にヒト−ヒト感染は認められない。 新型インフルエンザ等対策特別措置法を策定し対策している。対策の基本的な考え方は、水際対策、早期封じ込め、感染拡大の抑制、流行規模の平坦化、ワクチンの早期開発生産、医療への負担を下げる。抗インフルエンザ薬の備蓄は国民の45%相当量を目標としている。備蓄目標:5650万人分  流通備蓄:1000万人分。人口25%が罹患し全員が受診 3200万人分、重篤の場合倍量・倍期間投与 +750万人分、予防投与 300万人分、季節性インフルエンザ同時流行 1270万人分

現在の被害想定

全人口の最大25%が流行期間にピークをつくり順次罹患。医療機関受診者 約1300万〜2500万人。入院患者 約53万人〜200万人。死亡者  約17万人〜64万人。備蓄 タミフル 約3000万人分、リレンザとイナビル 約530万人分、ラピアクタ  95万人分

  1. 抗インフルエンザウイルス薬の薬剤耐性化とその対策について

ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスは増殖スピードが遅くなり、感染伝播効率が悪くなり、ヒト−ヒト感染して流行が拡大する可能性は少ない。2008年ノルウェーからタミフル耐性ウイルスが世界中に流行。 ノイラミニダーゼ遺伝子275番がヒスチジンからチロシンに変異。増殖スピードが遅くなることを代償する遺伝子変異を獲得した。ウイルスの消失には薬剤と同時に体内の免疫応答が重要。免疫不全患者では、5ヶ月間ウイルスを持続排泄した症例あり。8才では治癒にあたる5-7日でも40〜60%がウイルスを排出している。ウイルス排泄が長引くと、体内でのウイルス増殖が持続し変異ウイルスが一定頻度で出現し、薬剤耐性変異を持ったウイルスが増殖しやすくなる。4才の幼児の治療前は、薬剤感受性100%、耐性0%であるが、治療後5日では8%耐性出現し、7日目では75%耐性が出現する。タミフルよりもリレンザの方が耐性ができにくい、局所での薬剤濃度の違いによる 吸入薬の方が局所濃度高い。耐性ウイルスであっても、推定される血中濃度から効果が期待できる。タミフルとラピアクタ、リレンザとイナビルはノイラミニダーゼの結合部位が近いため交差耐性ができやすい

第6回播磨肺高血圧症セミナーに参加して

10月27日に加古川で行われました、播磨肺高血圧症セミナーに参加しました。

肺高血圧症の1/4は膠原病関連の肺高血圧症である。IPAHは100万人に12人と非常にまれであり、すべての方をスクリーニングすることは無理であるが、CTD-PAHは100人に12人と高頻度であり、全例をスクリーニングすることが可能である。膠原病の早期診断が大切であり、全身性硬化症では皮膚硬化が起こってからではなく、手指腫脹の状態で診断がしないといけない。レイノー現象をきたす人がすべて強皮症や混合性結合組織病ではなく、ごく一部の人が膠原病である。レイノー現象があり、抗核抗体陽性もしくは爪郭上皮毛細血管異常があれば強皮症の可能性が非常に高い。強皮症では、1/3の症例で肺、心臓、消化管のどれかに変化があるため,診断されれば全例スクリーニングし、症状が出る前に治療を開始することが大切である。全身性硬化症の診断は、2013年の分類基準にもとづき診断すると早期診断が可能

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全身性硬化症は、線維化、循環障害、免疫異常の3つの項目について評価し診断する。爪郭毛細血管異常があると膠原病である可能性が非常に高く、肺高血圧症と関連がある。セントロメア抗体陽性、U1RNP抗体陽性でじゃ肺高血圧症をきたしやすく、後者では免疫抑制剤が効果があり、前者では発症後10〜20年で肺高血圧症が発症し、免疫抑制剤の効果は期待できない。肺高血圧症の診断は、PA圧25以上となっているが、全く根拠がない。肺動脈圧は25未満の19〜24でも死亡率は圧の上昇とともに上昇しており、19〜24でも正常として放置していいとはいえない。将来は19以上が診断基準となる可能性もある。強皮症患者さんは28°で血管血流が低下する。喘息と同じように血管は通常状態でも血管壁が肥厚して内腔が狭くなっているため、少しの温度変化で大きな影響を受ける。血流低下が起こると繊維化も進行するため予防が大切であり、レイノー減少がみられたら全身を温めることが大切である。禁煙、保温に留意し、レイノーが起きればできるだけ短時間で改善するように対応しないといけない。生活習慣の改善が大切である。肺高血圧症を疑い、右心カテを行うかどうかの判断として、心エコーでは80%ルールがあり、80%の偽陽性、感度80%であり、心エコーで肺動脈圧上昇と判断されても正常のことがあり、心エコーで正常と判断されても肺高血圧症のことがあり、できれば全例右心カテをすることが望ましい。DETECT studyにて各種データを入力すると肺高血圧症があるかないか判断できる。肺高血圧症の治療において、膠原病では間質性肺炎、CTEPH、左心不全が合併してることがあり、しっかりと除外診断をしてから治療開始しないと肺水腫をきたし悪化することがある。治療薬としては、NO系、PGI2系、エンドセリン系の3種があり、内服薬は膠原病の他の症状にどのように効果があるかを考えて選択する必要がある。エンドセリンにより線維化が促進されることから、トラクリアでは線維化が押さえられる。

加古川市でインフルエンザ発生

姫路市でインフルエンザによる学級閉鎖がでているようです。加古川市でもインフルエンザが確認されています。今年は、昨年よりもかなり早い流行になるかもしれません。現在の流行はA型です。沖縄ではAH3型(A香港型)が流行しています。同じであれば、重症化しやすいタイプです。重症化予防のためにできるだけ早くインフルエンザワクチンを接種しましょう。

今冬のインフル流行、立ち上がりが早い?

沖縄県のインフルエンザ流行が、例年にない早い立ち上がりを見せている。全県では7週連続で増加し、第40週(~10月9日)には定点当たり6.22人と高水準に達し、地域別には、那覇市で定点当たり11.17人と注意報レベルである10人を超えた。これは、新型インフルエンザが流行した2009/10年に次ぐ早い立ち上がりである。沖縄県の9月以降に検出されている株は7件で、その全てがAH3型(A香港型)。昨シーズンも、流行当初に検出されたタイプはAH3型が主流であり、AH3型は他のタイプに比べて重症化しやすいと言われている。このときは、12月〜1月にピークを迎えていることから、早めのワクチン接種勧められる。