東播磨 高齢者の肺炎予防勉強会に参加して

9月13日加古川で行われました『東播磨 高齢者の肺炎予防勉強会』に参加しました。

現在日本人の死因の第3位が肺炎である。ほとんどが65才以上の高齢者であり、高齢者が肺炎を起こすとADLが低下し、廃用症候群となる。肺炎は1週間で治癒するがADLの低下は改善せず、寝たきりとなり嚥下機能の低下につながり誤嚥性肺炎を繰り返す負のスパイラルに入る。一時は胃瘻などの経管栄養を積極的に行っていたが、経管栄養では誤嚥性肺炎は防げない。繰り返す肺炎を起こす状態はすなわち老衰であり、肺炎を治療しても肺炎を起こしやすい老衰状態を直すことはできない。ターミナルケア肺炎とよばれ予防する手立てがない状態である。ターミナルケア肺炎では、何をしても助けることはできないため、抗菌薬を繰り返し使用することによる耐性菌の出現も問題となっており、抗菌薬を使用しないという選択肢も考慮すべきである。高齢者が一旦肺炎を起こすと、負のスパイラルに入ってしまうため、肺炎を予防することが大切である。健康寿命を伸ばすためには、健康寿命を縮める病気を予防すること大切である。高齢者の肺炎の起因菌の第一は肺炎球菌であり、64歳未満と65歳以上ではその罹患率は5倍以上、75才以上では10倍以上に増加する。肺炎予防のため65才以上の方に肺炎球菌ワクチンを接種が定期接種として開始されている。日本で使用可能な肺炎球菌ワクチンは2種類あり、現在公費負担の対象となっているニューモバックスと対象となっていないプレベナーがある。ニューモバックスは多糖体ワクチンであり、免疫原性が低くB細胞を直接活性化して抗体産生を誘導するが、免疫記憶ができないため5年ごとの接種が必要である。ただ、血清型は23価あり、多くの血清型に効果が期待できる。プレベナーはキャリア蛋白をつけた結合型ワクチンであり、樹状細胞を活性化し、T細胞活性化を介してB細胞の活性化を誘導し、抗体産生を誘導さらにメモリーB細胞を誘導し免疫記憶が確立されるため、1回の接種で効果が持続する。プレベナーは小児の定期接種となり、その後肺炎球菌による髄膜炎が劇的に減少した。また、子供は保育園などの集団生活を始めると肺炎球菌、インフルエンザ菌の保菌が見られるようになるが、子供の肺炎球菌の保菌を減らす効果もある。高齢者の肺炎の起因菌の第一は肺炎球菌であり、64歳未満と65歳以上ではその罹患率は5倍以上、75才以上では10倍以上に増加する。なぜ高齢者で肺炎球菌肺炎が多くなるのか?原因菌の肺炎球菌はどこから運ばれてくるのか?菌を保菌している孫と接触することにより、孫の保菌している肺炎球菌が感染して肺炎をきたしている。子供の肺炎球菌ワクチンが定期接種となり、肺炎球菌による髄膜炎が減ったが、それに伴い高齢者の侵襲性肺炎球菌肺炎も間接的に減っている。これは、プレベナーにより、子供の肺炎球菌の保菌数が減ることにより、高齢者への感染を減らした間接効果である。

ニューモバックスとプレベナーはどのように使用すればいいか?どちらが効果がいいか?日本において、65才以上の健康な方にニューモバックスを接種して肺炎球菌肺炎が予防できるかを調査すると、効果がある人もいるが効果がない人の方が多いため全体としてみると効果がない。海外の研究ではあるが、プレベナーを65才以上の方に接種すると、市中肺炎が46%減少し、侵襲性肺炎球菌肺炎は75%減少した。アメリカでは、それまでニューモバックスが定期接種のワクチンとして推奨されていたが、このデータをもとに65才以上の方でワクチン接種歴のない方はプレベナーを接種し、1年以上あけてからニューモバックスを接種、ニューモバックスを接種したことがある方は、1年以上開けてからプレベナーを接種することを勧めている。どちらを先にうつ方が効果があるかを見ると、プレベナーを先に接種し、あとでニューモバックスを接種した方が、反対の順番で接種するよりも予防効果が高まる。プレベナーを接種して、強い抗体産生を誘導して、その後23価のニューモバックスを接種して多くの血清型に反応するようにすることが高い効果が期待できると考えられる。肺炎の入院費は約70万円かかる、医療経済的にもワクチン接種にて肺炎を予防することが大切であり、特にリスクの高い気管支喘息、糖尿病、慢性腎不全、COPD、心不全などの方は積極的に肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを接種することが必要である。患者さんが肺炎球菌ワクチンを摂取したきっかけは、医師の勧めが第一の理由であるため、我々臨床医が患者さんに積極的に肺炎予防のため、健康寿命を延ばすために肺炎球菌ワクチンをストップ肺炎をめざして勧めるようにすべきである。

麻疹予防への注意喚起

麻疹(はしか)の患者さんが相次いで発生しているため、日本産婦人科学会は妊婦やその家族に対しての注意事項をホームページに掲載しています。妊娠中に罹患すると流産・死産がの発生があることや、発育障害があるため、罹患しないように発生地域への外出を控えるように注意喚起しています。

麻疹(はしか)が疑われる方は、直接医療機関を受診せず、まえもって連絡をした上でその後の対応を相談してください。待合室などの同じ空間にいた人に感染を広めてしまいます。入り口や待合を感染に分離して、空調管理の整った隔離室での対応が必要となります。兵庫県内では尼崎で麻疹の報告があります。麻疹の報告があった地域への外出があり、カタル症状、高熱、発疹などがあれば可能性は非常に高いです。

マスクをしているだけでは感染予防はできません。ワクチン接種しか予防効果を発揮しません。

妊娠を予定している方やその家族の方は積極的にワクチン接種を勧めています。

10月1日よりインフルエンザワクチン接種開始します

そろそろインフルエンザワクチン接種の時期になってきました。昨年度は、インフルエンザ脳症にてなくなられた方がかなりおられました。昨年度は10月15日からワクチンの接種を開始していましたが、そのときにすでにインフルエンザがぽつぽつと報告されていましたので、本年度は少し早めて10月1日から接種を開始します。インフルエンザの発症を予防することはできませんが、重症化、特に脳症などを予防してくれるのはワクチンだけです。受験生の方、妊娠をされている方、糖尿病や関節リウマチなどで抵抗力の低下しておられる方は積極的に接種されることをお勧めします。

予約制ではなく、当日受付にてワクチン接種希望を申し出ていただければ結構です。

ただし、高齢者の方で公費負担のある方は10月15日からしか接種できませんのでご注意ください。

神戸西・明石エリア関節リウマチセミナーに参加して

7月21日に開催されました上記セミナーに参加しました

生物学的製剤にて寛解に至った症例をアバタセプトに切り替えた場合の有用性を検討。

関節リウマチ患者さんの高齢化、高齢発症の関節リウマチが増加していることから、全体的な副作用の少ないアバタセプトに切り替えて継続することが有用ではないかと考えて検討されている。アバタセプト以外の生物学的製剤にてDAS28CRPで3ヶ月以上寛解を維持している症例を本人の希望を聞いてアバタセプトに切り替える群と継続する群とに分けてその後の経過を検討され、アバタセプトに切り替えた群の方が寛解維持率が高く、感染症の発症も増加せず有効である可能性があるとの発表であったが。アバタセプトがT細胞活性化の防止効果であること、関節リウマチと分類できない関節炎の状態の患者にアバタセプトを6ヶ月使用するとその後の関節リウマチへの進展が防止できるとの文献から、発症初期と寛解導入された状態に有効ではないかと推察されている。ただ今回の検討では、継続群においてMTX減量、PSL減量、バイオの減量などを行っておられ観察開始2ヶ月目で中疾患活動性になっている症例もありかなりのファクターが入り組んでいるため両群を比較することは無理があると思われる。

特別講演では、テーラーメイド治療の可能性について、propensity score matchingを用いた新たな視点からの講演。現在関節リウマチに対して有効なバイオが多数がある、TNF、IL-6、T細胞活性化に関わるものしかない状態であるため、この3つ因子がRAに重要であるが、そのうちどれが最も重要であるか?直接比較をしてどれが最も臨床的に有用であるかを見ることにより判断できるが、head to headのRCTは3つしかない。この3つの試験では、トシリズマブvsアダリムマブ、アバタセプトvsアダリムマブにおいて効果に差はなかった。だだRCTは実臨床の患者間には差があるため、RCTのデーターをそのまま実臨床に持ち込むことはできない。産業医大の実際のバイオの効果も同じ結果であるかどうかを年齢、MTXの併用率、ベースの感染症リスクなどいろいろな差をなくすための手段として score matchingを用いて検討された。それによれば、アダリムマブ、トシリズマブ、アバタセプトの有効性にはどれも差がなかく、RCTと同じ結果であった。テーラーメイド治療をめざすため、それぞれの製剤における予後予測因子があるかどうかを検討。TNF、IL-6、T細胞活性化のどれかにしか効かない症例を見つけ出し検討している。マーケッティングで用いるdecision tree analysis(決定木分析)を用いて何でも効く症例を除外しバイオナイーブ症例で予後予測因子を検討。半分はどのバイオでも効果があり、RFとSDAIが予後予測因子として抽出された。アバタセプトは、RFが高いほど、SDAIが低いほど寛解率が高い、トシリズマブはRFが低いほど、SDAIが高いほど寛解率が高い。アダリムマブでは、RF、SDAIとも関係なし。RFでテーラーメイド治療が可能か?アバタセプトでは、RF50をカットオフとして、50以上ではSDAIが改善しやすい。

兵庫県整形外科医会リウマチフォーラムに参加して

平成28年7月9日、兵庫県整形外科医会リウマチフォーラムに参加しました。

予定より40分ほど開始が遅くなり、特別講演I終了後に予定になかった15分の休憩が組み込まれたため、特別講演IIは聴講することができませんでした。

関節エコー技術習得のため留学された、三崎先生より講演

関節エコーは、安価で、可動性があり、放射線被曝もない非常に便利な検査機器である。関節エコーで、グレースケールにより関節液貯留、骨不整、滑膜増殖を、パルスドプラにて活動性滑膜炎の検出ができる。また、関節リウマチの早期診断に役立つ腱鞘滑膜炎の診断も可能。

骨びらんと骨棘の違い、びらんは平面に穴、骨棘はとげ、上に凸不連続な像として描出。エコーを使うと関節リウマチの診断感度は診察のみよりもあがる。診察所見だけであれば、感度58.5%、エコーGS≧Gr1を基準とすると感度78%、GS≧Grade2かつPD≧Grade1とすると特異度93.7%になる。触診にて関節腫脹、圧痛なしと判断した関節にエコーを実施すると、25.6%で滑膜増殖像があり、13.7%で活動性滑膜炎の所見が見られた。臨床的寛解では真の寛解とはいえず、厳しいBoolean基準で寛解と診断されたうち20%で関節破壊が進行する。関節エコーによる画像的寛解を目標とすべきである。骨に近い血流像が関節破壊の原因であり、エコーでの画像的寛解のチェックし、画像滴寛解が得られるまで治療を強化することが必要である。

このあと症例呈示

① 痛風関節炎:軟骨の表面が尿酸ナトリウムにより白くなり、ダブルコンツールサインが見られる。

② 強直性脊椎炎:アキレス腱の付着部炎、MRIにて頸椎の四隅が白くなる

③ 巨細胞腫

HUMIRA RA Forumに参加して

7月2日行われましたHUMIRA RA Forumに参加しました

HOPEFUL試験において、MTX単独、MTX+ADAにて治療開始し、6ヶ月後に両群ともMTX+ADAにて治療を実施し、12ヶ月後の評価。6ヶ月ではMTX+ADA群の方が治療成績がよいが、12ヶ月後には、両群ともDAS28の寛解率は同じになり、MTX単独群でもADAを追加併用することにより、寛解率はキャッチアップできる。しかし、関節破壊においてはMTX単独群では、関節破壊が進行した症例が多く、関節破壊は6ヶ月間のバイオの遅れにより進行してしまう。HOUPEFUL−2試験にて、MTX+ADA治療1年後に、ADAを継続した群と、ADAを中止した群を比較すると、関節破壊には差はなかった。関節破壊が進行する症例では、早期にバイオを開始する必要があり、治療開始が遅れると関節破壊が進行し、バイオを追加しても関節破壊をしっかりと防止することはできない。

ADAの休薬はDAS28-CRP<2.6と寛解に入っていれば、86%が寛解維持できる。発症早期であれば1/3は休薬可能である。一般的に、発症2年以内であれば半数は休薬できる。2年以上経過すると、ステロイドが中止できないと休薬はできない。休薬できるのは、csDMARDを併用していることが必要。

以上より、発症半年は強力に治療して寛解導入し、以後は安全に寛解維持を図ること大切である。MTX単独でも6割の患者さんは、寛解導入でき関節破壊の進行もない、2割の患者さんでは、MTXだけでは寛解に導入できず、関節破壊の進行を防止できないため早期にバイオを開始する必要があるが、治療前にバイオが必要である患者さんを見極める手段がまだないのが現状である。

EULRAにおいて、JAK阻害薬がMTX効果不十分例においてbDMARDと同等に扱われる勧告がプレリミナリーではあるが発表された。JAKは30を超える免疫に関わるサイトカインやケモカインの発現制御に関わっており、非常に有効性が高い可能性がある。RAの滑膜では、JAK3の発現が亢進しており、トファチニブの投与によりIL-17、MMP-3の発現が減少、トファチニブの作用は、Th1、Th17、樹状細胞、B細胞もターゲットとなっている。現在、いくつかのJAK阻害薬が臨床治験に入っている。

アクテムラ学術講演会に参加して

6月25日に品川で行われましたアクテムラ学術講演会に参加しました。

妊娠とアクテムラ

妊娠中に関節リウマチの活動性が低下し改善すると言われているが、DAS寛解に入るのせいぜい25%程度である。妊娠中、授乳中は積極的に薬物療法を行い活動性をコントロールする必要がある。薬剤により胎盤通過性に違いがある。sDMARDは分子量が小さく濃度勾配的に胎盤を通過するため一定量は胎児移行する。bDMARDは分子量大きく妊娠中期から胎盤移行性が出てくる。MTXは催奇形性があるため妊娠前に中止すべき。アザルフィジン、プログラフは継続可能。TNF阻害薬は妊娠前期はOKである。エンブレル、シムジアは全期間通して使用可能、授乳中は使用可能。アクテムラの妊娠に関するデータは乏しいが、明らかな催奇形性や流産などを増加させるデータはない。アクテムラを使用しないとコントロールできない患者さんが挙児希望、妊娠した場合には、妊娠判明後中止し、PSLの内服、妊娠11週以降ではエンブレルやシムジアを使用。TNF阻害薬にてコントロール不良患者さんにアクテムラを使用して活動性を押さえ込み、妊娠にいたって症例で妊娠中にアクテムラを中止しても活動性が低下したままであった症例がある。

アクテムラ市販後調査

感染症は10%、重篤感染症は3.6%、消化管穿孔は0.1%。重症感染症は他の生物学的製剤とほぼ同等であり、危険因子としては、65歳以上、罹病期間が10年以上、呼吸器疾患の合併、PDL5mg以上使用。

SURPRISE STUDYから見たアクテムラ使用の最適化

エンブレルでは、単独使用では有効性はMTXとほぼ同等であるが、ASTORI STUDYでは、アクテムラはMTX単独よりも有効性が高い。SURPRISE STUDYでは、MTX併用がアクテムラ単独よりもDAS28-ESRでの有効性は高い。Switch群とAdd-on群では、Add-on群の方が有効性が4週目から高くなっている。しかし、52週になるとその差はなくなってくる。52週で差がなくなるのであれば、52週以降はMTXは不要であるか?関節破壊は、CRRPがSwitch群で高い。24週でDAS28で寛解になっていない症例ではCRRPが高い。早期に炎症が抑制できると関節破壊を抑制できる。

DREAM STUDYではIL-6低下、MMP-3低下していると中止可能である。ACT-RAY STUDYでは、DMARD併用していてもアクテムラの中止は難しい。中止した症例で、1年後中止できているのは10〜40%程度。KEIO-TCZ STUDYでは、有害事象はMTX併用群で多いため、1年経過して寛解状態であれば、MTXは中止した方がよい。

第16回日本実地医家消化器内視鏡研究会に参加して

6月19日京都で行われました日本実地医家消化器内視鏡研究会に参加しました。

胃癌ABC検診が全国的に行われているが、ピロリ菌陽性判定の血清ピロリ抗体キットがEプレートからラテックス法に変更となり、陰性高値の設定がなく不一致がみられる。本年3月に和光からラッテクス法による新しいキットが発売となり、陰性高値の設定は不要であり従来よりも短時間での測定が可能となり、感度特異度も極めて高いため今後のABC検診に有効となる可能性あり。

胃癌リスクを評価するための分類とスコア化および内視鏡的胃炎の記載方法について胃炎の京都分類が策定された。RAC、胃底腺ポリープ、稜線上発赤、ヘマチン付着、びまん性発赤、鳥肌、襞腫大、地図状発赤などの所見により、現感染(慢性活動性胃炎)、既感染(慢性非活動性胃炎)、未感染(正常胃)に分類記載する。

ピロリ菌が胃癌のリスクであり、除菌により胃癌が1/3に予防できる。最近のメタアナリシスではNNTは124であり、1人の胃癌を予防するためには124人の除菌が必要である。除菌だけでは完全に予防できず、定期的な胃内視鏡検査による胃癌検診が必要である。胃X線でも慢性胃炎の評価を行い、胃癌疑いのチェックだけでなく、胃癌のリスクとしての慢性胃炎を拾い上げることが必要である。

京都府では、胃癌撲滅のため高校1年生全例にピロリ菌除菌を無料で行うことに取り組んでいる。尿中抗体、便中抗原にて確認すると、約4〜6%でピロリ菌陽性。除菌は除菌率の高い二次除菌製剤にて実施している。

2015年胃がん検診ガイドラインが改定となり、対象年齢が40歳から50歳に引き上げられ、検診間隔は2年間が基本、X線検査に加えて胃内視鏡検査での検診も可能となった。2年に1回でも胃がんによる死亡率の上昇がないことから2年間隔となっている。検診マニュアルでは、胃内視鏡検査は日本内視鏡学会専門医の資格を持った医師が実施、鎮静剤の使用は不可、ダブルチェックが必要等の規定あり

Biologics User’s Forumに参加して

6月18日東京で行われたBiologics User’s Forumに参加しました。

シンポニー(ゴリムマブ)のメーカー主催の講演です。

3名の先生の講演がありましたが、全体的な内容としてはまとめると、

シンポニーは5年間の長期間有効性が低下せず、継続率が高いことが示された。トランスジェニックテクノロジーによる完全ヒト型抗体であるため、免疫原性が低くMTX非併用下でも抗製剤抗体がほとんどできないためと考えられる。4週間に1回の皮下注製剤で自己注射はできないため医療機関での確実な実施ができアドヒアランスが高い。50mg、100mgの2剤形があり用量選択が可能である。シンポニーの有効血中濃度はトラフで0.6μであるが、50mgでは一部の症例で有効血中濃度を下回るが、100mgではほとんどの症例が有効血中濃度を上回る。高疾患活動性であれば最初から100mgを選択することにより、効果不十分となる可能性が低くなる。50mgでスタートしてある程度の効果があるが不十分なパーシャルレスポンダーであれば、100mgに増量することにより深い寛解が得られるようになる。

GO-AFTER試験においてTNF製剤抵抗症例でシンポニーに変更し、効果不十分であれば100mgに増量すると寛解率が高く、他のTNF無効例にも有効である。

シンポニーはMTX非併用での使用が可能であり、寛解を得られた場合に、シンポニーの減量中止、MTXの減量中止の選択が可能である。

 

2016世界禁煙ウィーク兵庫県民フォーラムに参加して

6月4日

シンポジウム 県受動喫煙防止条例施行後3年を経過して

平成25年4月から全国都道府県では2番目に受動喫煙防止条例が施行された。

不特定又は多数のものが利用又は出入りする施設の、全面的な禁煙(第9条別表第1)

幼稚園、小・中・高校、保育園:敷地内・建物内全てを禁煙

病院・診療所、官公庁の庁舎、児童福祉施設など:建物内を全て禁煙

大学、専修学校、薬局:建物内の公共的空間を禁煙

宿泊施設、飲食店、金融機関、公共交通機関、物品販売店、運動施設、図書館・博物館・美術館、公園、社会福祉施設:建物内の公共的空間を禁煙又は厳格な禁煙

フロントロビー100m2以下の宿泊施設、客室面積100m2以下の飲食店は例外規定あり

 

今後の方向性としては、子供や妊産婦の受動喫煙防止、子供や妊産婦の喫煙防止、喫煙者の健康回復に向けた取り組み

健康日本21の目標値

平成22年喫煙率 19.5%を平成34年に12%に減らす

兵庫県喫煙率

H13:28.5% H16:26.5% H19:23.3%:H22 19.0% H25:19.2%

平成22年までは順調に減少していたが、全国的に再上昇傾向

県健康づくり推進実施計画 平成29年度 10%以下(男性19%以下 女性4%以下) 目標達成は困難

 

保健医療における禁煙治療

28年度診療報酬改定による変更

ニコチン依存症管理料の対象患者の拡大

いままではブリンクマン指数(一日の本数x年数)が200以上の条件があり若年者対象者から除外され保険で禁煙治療を受けることができなかった

35才以上のものはBI200以上、35歳未満ではブリンクマン指数の条件が廃止されたため若年者でも保険適応対象者となった

たばこは有害であり、たばこにより多数の死亡者が出ているのに販売が継続されていることが問題、他のものでは有害なものが売られていることはなく、食べ物などでは異物が少し混入しただけで自主回収となっているのに有害なたばこが平然と売られていることは大きな問題

日本では受動喫煙が原因で年間1万5千人が死亡していることが厚労省より発表された

 

5月31日はWHOが世界各国に『たばこのない社会を目指そう』と呼びかける『世界禁煙デー』、今年のテーマは『プレーンパッケージを推進しよう』。たばこの包装に健康被害の写真を全面的に表示し警告しようという呼びかけで、豪州などで実施され効果は実証済み。厚生労働省も『2020年、受動喫煙のない社会を目指して~たばこの煙から子供達をまもろう』をテーマにイベント開催予定

 

たばこ規制枠組み条約(FCTC)という国際条約が定めている受動喫煙防止の国際基準では、すべての公共施設、職場、公共交通機関は全面的に終日完全禁煙でなければならないとなっている。喫煙室設置の許容や例外事項、喫煙を特別に許可する人物の設定なども禁じられている。兵庫県の条例は、完全禁煙ではなく、JTが押し進めている分煙を認めているため世界基準から大きく遅れている。また、必ず罰則をつけて徹底する必要があるが、日本ではまだ喫煙を罰則付きで規制する法律はない。カナダ、オーストラリア、韓国など世界では、すでに法律により規制され罰則も定められているのに、日本は世界に大きく遅れている。

厳格に受動喫煙防止対策を実施した地域では、心筋梗塞が20%前後減少し、スコットランドでは飲食店従業員の血中ニコチンが減少、受動喫煙による疾患が30%減少した。その結果、医療費が下がり、生産性が上がり、メンテナンス費用がさがり、雇用者の責務も軽くなったといいことずくめである。日本では、盛んな分煙キャンペーンの悪影響で、分煙が解決策のように受けとめられている。禁煙推進側にも分煙は禁煙へのステップであるかのような認識を広める研究者がいたことも足かせとなっていた。分煙は禁煙へのステップどころか遅延策であるというのが世界の常識である。国際基準の分煙なし、例外なし、罰則ありの禁煙規制を国のレベルで実現すべきである。

 

PM2.5の発生源としてのたばこ

粒子状物質の中で粒径2.5μm以下のものをPM2.5

呼吸器系の深部まで到達しやすいことから健康影響が懸念されている

大気中に浮遊する粒子でPM2.5となるのは、液体燃料の燃焼時のばいじん、ディーゼル排気粒子、たばこの煙がある

1993年、PM2.5の大気中濃度と死亡比をみると、PM2.5濃度が高い都市ほど死亡比が高くなることが報告され、PM2.5が注目されるようになった

たばこを室内で1本吸うと室内のPM2.5濃度は約800μg/m3、たばこ3本で1600μg/m3を超える

PM2.5濃度が上昇すると、短期暴露でも当日または数日以内に死亡する人が増加するという報告が多数されている。PM2.5の日中平均濃度が12.8μg/m3以上で観察されている

大気汚染、粒子状物質に発がん性がある(Group1)であると国際がん研究機関が認定している。PM2.5はアスベストと同じ発がん性のある物質に分類されている。

日本におけるPM2.5環境基準は、1日平均35μg/m3、年平均15μg/m3

日本のPM2.5年平均値は高度成長期より徐々に低下し基準値程度になっている

一日平均70μg/m3を超えると不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らすことが推奨

喫煙者がいると屋内のPM2.5 濃度は上昇する

スコットランドの調査では、喫煙者がいない家庭では8μg/m3、喫煙者が一人でもいると71μg/m3

PM2.5は大気中だけでなく屋内でも発生し、タバコが大きな要因であり健康に影響をおよぼす

喫煙によって生活環境中のPM2.5 濃度は大気中よりも遙かに高い濃度となることから、禁煙はPM2.5対策としても最も有効な手段である

インフルエンザは減少、ロタウイルスによる感染性胃腸炎増加

今期のインフルエンザは流行り出すのが遅く、3月末にピークを迎え徐々に減少傾向となっていますが、まだまだ発生があります。

ロタウイルスによる感染性胃腸炎が例年よりも立ち上がりが早く、高いレベルで発生があります。

流行性耳下腺炎(おたふくは)昨年末から高いレベルで発生が続いています。

気を緩めずに手洗い、マスク、咳エチケットに努め感染予防対策を続けてください。

ゴールデンウィークの休診について

もうすぐゴールデンウィークになります。

最大10連休と長期のお休みがとれる方もおられるようです。

当院は、本年正月元旦が休日診療にあたりましたので、5月6日(金)7日(土)を休診とさせていたきますので、5月3日(火)〜8日(日)まで休診となります。

内服薬がなくならないように注意して、GW前4月中か5月2日に受診してただくようにお願いいたします。

インフルエンザ脳症で7例が死亡

国立感染症研究所によると、3月29日時点で今シーズンのインフルエンザ脳症が176例発症し、そのうち7例が死亡、インフルエンザ脳症は例年になく多く発症している。

第10週に死亡した3例は、1例が10歳代、2例が50歳代。

抗インフルエンザ薬には脳症や脳炎を予防する効果はなく、予防効果が報告されているのはインフルエンザワクチンである。

来シーズンには、脳症の予防のためインフルエンザワクチンを接種しましょう。

『加古川リウマチカンファレンス』に参加しました

『高齢者医療における関節リウマチの現状と展望』

高齢発症の関節リウマチは大関節に多いため、肩関節、股関節に関節痛をきたすリウマチ性多発筋痛症は鑑別が難しい。リウマチ性多発筋痛症は、2012ACR/EULARリウマチ性多発筋痛症暫定分類基準の基づいて診断する。

高齢者では、TNF阻害薬、トシリズマブは寛解率が低下するが、アバタセプトは高齢者でも、若年者でも寛解率に差はない。

AMPLE試験において、アバタセプトはACPA陽性高値である方が、寛解率は高くなる。治療によりACPA抗体は低下する。

アバタセプトの肺病変の有無での比較では、有効率に差はなく、継続率にも変化なし。

高齢者では、一般にeGFRが低下しており、CKD合併例が非常に多く、腎機能障害時にはsDMARDではアザルフィジンしか使用できないが、biologicDMARDは腎機能障害における使用制限はない。

以上より、高齢者でACPA陽性、肺病変、腎機能障害を有する活動性の高い関節リウマチではアバタセプトが推奨される。

インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンは、TNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプトのどれでもワクチン接種後の抗体価は問題なく上昇するため重症化予防のため積極的推奨される。

雇入れ時健康診断、一般健康診断、抗体検査、各種ワクチン実施しています

オージオメーターを使用した雇入れ時健康診断、一般健康診断、医療関係の施設や学校などに入られる場合に必要な抗体検査、各種ワクチンを実施しています。

雇い入れ時健康診断¥9,000、一般健康診断は内容により¥3,500より設定しています。詳細については、お問い合わせください。